コラム/海外レポート

2020.12.07

厳しい要求が突きつけられる開発設計部門の業務改革(2)

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~肝心の場面で実力を発揮できないジレンマをどう解消するか~ (vol.2)
内発的動機づけの重要性

古典的な話ですが、動機づけには「外発的」と「内発的」があります。「外発的動機づけ」とは、たとえば昇給のため仕事を頑張るとか、義務、賞罰、強制などに関連しています。特に自己の価値観や人生目標と一致している場合は、自律性の高い動機づけとして働きます。
これに対して「内発的動機づけ」は他者からの評価に左右されないモチベーションです。それは好奇心や関心により自分で満足する性質を持っています。たとえば日本の工芸品などに見られる作品の裏まで手を抜かない匠の技などが該当します。
動機づけには、周囲の期待感や価値観も大きく影響しますが、「知的クラフトマン」にとって、自らの課題に挑戦する動機づけが重要なことは言うまでもありません。

「脳科学理論」で部下のやる気を引き出す

やる気と関連した脳内物質の代表がノルアドレナリンとドーパミンです。ノルアドレナリンがストレスや緊張をもたらし、ドーパミンはリラックスと関連しています。両者の働きはアクセルとブレーキのように異なっています。
たとえば会議での叱責、賃金が下がる恐怖、緊急に解決を要する事態などでは、ノルアドレナリンが大量に放出されます。これに対して、ドーパミンは充実した仕事をしているとき、ほめられたとき、スポーツでナイスプレーを決めたとき、顧客に喜ばれたとき、好物を食べているときなどに出ます。ノルアドレナリンは、ここぞというときに火事場の馬鹿力的な効果を発揮しますが、短期的で長続きしないのが欠点です。一方、ドーパミンは快楽物質とも呼ばれるように、持続・強化されるという特徴を持っています。
これらモチベーションに関与する脳内物質をマネジメントにどう活かすか。楽しい気持ちで仕事をしてもらうか、へとへとに忙しいなかでやる気を引き出すか。状況に応じて使い分けることが必要です。

マネジメントを変える力

昔は働くことでいかにして食べるかが重視されました。しかし成熟社会を迎えて、若い人の価値観も大きく変わっています。彼らにモチベーションを持ってやってもらうには、部下の言葉に耳を傾け、考え方の論理を理解することが大切です。そのうえで動機づけをはからなければ彼らの自立性を引き出すことはできません。
ある輪投げを使った実験によれば、「目標の魅力×達成の可能性」がモチベーションと深く関係していることがわかります。目標との距離が近すぎると簡単すぎてやる気がでないのですが、遠すぎると困難すぎるとあきらめる。学生を対象に行った実験では、中程度の難易度が挑戦へのモチベーションを生む結果が出ました。つまり能力より少し高い目標設定が効果的だということです。

ドラッカーの名言に「何かを行うことは強みによってである」という言葉があります。開発・設計組織のパフォーマンスを高める鍵はモチベーションアップによる意識の高揚です。そのためには「知的クラフトマン」としての部下の特質を理解し、適切なアドバイスを行うことが必要です。
他部門との連携や全体最適の考え方から、プロジェクトの成果に責任を持つ意志や技術の本質を見抜く力が生まれてきます。三現主義の視点からモノづくりを捉えたとき、設計業務の細心さと大胆さが重要だとわかります。経営とのつながりを理解する視点もそこから生まれてくると思います。

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