コラム/海外レポート

2018.10.20

間接部門改革の 基本的な考え方と進め方

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執筆者:

南野 嘉也

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
間接部門改革が必要な理由

日本生産性本部が公表した『労働生産性の国際比較2017年版』によれば、日本製造業の生産性はOECD加盟国のなかで14位にランキングされています。2000年までは主要国のなかで日本の生産性は第1位でしたが、その後、順位を大きく下げる状況が続いています。
海外生産増加との関連性も言われますが、業務改革の立ち遅れが目立つ間接部門の影響も大きいと思われます。働き方改革による間接部門の生産性向上や残業時間の削減が課題となっています。

働き方改革の真意とは

働き方改革は生産性を上げることから始まります。テクノ経営総合研究所では、省力化(仕事のムダを省く)→少人化(少ない人数で仕事)→活人化(余力活用)というステップを提唱してきましたが、最終的な目標である「活人化」には2つの視点があります。まず社員一人ひとりを活性化し、個人の仕事と生活の調和を考える余裕を生み出すこと。さらに、社員の力を新たな事業や収益確保に活かすことです。そのためには間接部門の業務を見直し、ムダやムラをなくす努力が必要です。

なぜ早く帰れないのか

いまだに日本の職場では残業を美徳とする空気がありますが、国際生産性で上位を占める欧米の常識はまったく違います。たとえばドイツ人はワークライフバランスを重視する民族ですが、仕事はヒトではなく会社に帰属するという考え方があり、日本社会の常識である「お客様は神様」という発想はありません。1日10時間を越える労働は法律で禁止されており、残業が多い部署の管理職は評価されず、社員は無能とみなされる。反対に残業なしで成果を挙げることが評価につながるという、公私共に効率を重視し、ムダを嫌うメンタリティが基盤にあります。
残業が減らない原因は大きく5つに集約されます。その症状となぜ起こるのかを紹介しながら、その処方箋を考えてみましょう。

その1 無計画残業症

いつもどおりの時間感覚で日々の仕事を繰り返す。日中は雑務に追われながら時間をすごし、夕刻から本来の仕事にかかる人もいます。惰性に流されて時間の重要性が認識されていません。なかには生産性向上の改善活動は直接部門だけが行うものだと考えている人もいます。個人ワークが主体のため、自分の時間感覚を優先して仕事をする習慣が抜けません。この症状に対しては、仕事の計画性について検討することをお勧めします。

その2 こだわり残業症

仕事の質にこだわりすぎて時間を消費するという症状。アウトプットの質は人によって違いますが、自分なりに満足できないと前に進めないという症状です。
処方箋としては、少しだけ手を抜いてみる。あるいは組織的なアウトプットの基準を決めることです。また標準的な書類をテンプレート化することで作業時間が5分の1になったという事例もあります。

その3 抱え込み残業症

この仕事は自分にしかできないという発想に囚われるケース。人に任せることが不安でしょうがないという症状です。「本当に自分がやるべき仕事なのか」を考えてみることが必要です。例えば、管理職が伝票整理まで行うのはどうでしょうか。権限の委譲とマネジメントに集中する仕組みづくりが必要です。

その4 ノウハウ不足残業症

仕事のスキルが低く、時間がかかりすぎるという症状。新人や異動により、仕事に慣れていない場合等が該当します。真のスキルアップ計画と実行を組織で考える必要があります。

その5 付き合い残業症上司が残っていると帰り辛いというケース

残業が多い社員は会社に忠誠心があると捉える傾向が日本企業にはいまだに残っています。ジョブ・アサインメントの検討が必要です。

間接部門を改革する秘訣

間接部門の改革はボトムアップではできません。組織と個人が一体化して取り組む必要があり、明確なビジョンを持ったトップのリーダーシップが必要です。
私はその秘訣を次のように考えています。
①トップ(部門長)がリーダーシップを持ってやり遂げること
②期間を限定し、「業務分析~整理・整頓」までを短期間で一気にやり遂げること
③改革後の組織の姿(ゴールイメージ)が描けていること
④仕事を攻めて、人を責めないこと
⑤「業務の棚卸」が成否のポイントである
⑥上司と部下の信頼関係が土台
明確なビジョンと活人化のプランがないとモチベーションは上がりません。しっかりした社内の信頼関係を築き、組織と個人の一体化による業務改革が理想です。すべてのアウトプットは組織が生み出す結果です。個人を責めるのではなく、これらを前提条件にして間接部門の改革に取り組んでください。

間接部門の生産性を見える化

間接部門改革の進め方としては、生産性向上の基本フレームを設定する必要があり、その手法として「業務機能設計」と「業務の棚卸(業務分析)」があります。
「業務機能設計」とは、組織の目標達成に必要な業務を体系化することであり、「業務の棚卸」とは、各個人が実際に行っている現状業務をすべて一覧化することです。
これら2つを照合して、組織機能上で不要と判断される仕事は捨てることが必要です。ところが「なくす、へらす、かえる」ということが多くの職場ではなかなかできません。
「業務の棚卸」は何度もやっているが、その先に行かないという声をよくお聞きします。棚卸しといっても、それが単なる職務分掌表作りのような血の通っていない棚卸しでは絶対に現状把握はできません。突発的なものや非定常なものを含めて実際にやっている仕事をすべて挙げる。そして、仕事の囲い込みを見える化し、ムダ業務の徹底排除をはかることが大切です。

仕事の2S(整理・整頓)

さらに 仕事の2S(整理・整頓)を進めます。「仕事の整理」とは必要性のない「ムダ業務」 と判断される仕事は捨てることが必要です。そして徹底的にゼロ化(なくす)を図ることです。「仕事の整頓」とは価値業務ではないが捨てられない「付随業務」のムダを省いて簡素化し極小化することです。具体的な考え方とその進め方を以下に示します。

間接部門の生産性向上をはかる鍵はタイムマネジメントにあります。なぜタイムマネジメントが必要かといえば、それは単に作業時間を短縮するだけの改善活動では間接部門の生産性は向上しないからです。
「遅れは伝播するが、進みは減衰する」というのが人間行動学上の原則です。単位作業は改善されたが、余裕をマネジメントしないと遊んでしまう。ヒトは余裕があると4時間の仕事を8時間でする動物です。そこでどうマネジメントするかがポイント。すなわちタイムマネジメントによる仕事の見える化と予実管理が必要なのです。

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