コラム/海外レポート

2011.05.01

間接業務改革のポイント(1)

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執筆者:

平井 康之

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
1.今、何が問題なのか?

「受注量は減っているのに、間接部門は以前にも増して忙しそうにしている」、様々な企業でこのような声が聞こえてきますが、一体何が起こっているのでしょうか?

(1) 増加する非定常業務

世界の消費の中心が先進国から新興国に移るにつれ、海外への工場移管・移転が増加しています。これにより、国内に残ったものは特殊仕様や短納期品などの、 いわゆる面倒で手間のかかる製品ばかり。つまり、バブル時代の売り手市場から、“買い手市場”へ移行したというわけです。
今や、最小ロットや標準ラインナップといった自社に都合の良い考え方は通用しなくなりつつあります。また、トラブル対応、急な立会い検査、納期変更、度重なる 法改正など、間接部門は、これらの“変化”に伴う非定常業務に日々追われているのです。
「今は特別な状態なのだ、これをしのげば...」、そんな気持ちとは裏腹にこの傾向は強くなる 一方であり、そのことに早く気づかなければなりません。

(2) 標準化思想の落とし穴

もう一つ、間接部門の繁忙感を高めている要因があります。
それは、内外環境変化への対応力の低下。作れば売れるといった時代に、多くの企業は徹底した分業化を 行いました。分業化を行うことで一つひとつの機能の合理化を図ったわけですが、それは部分最適に過ぎず、これらを連動させ一つのものとして機能させるために、 あらゆる業務の標準化を進めてきました。しかし、そのことで組織に境界を作り、大局観を失わせ、変化への対応力を低下させてしまったのです。では、分業化・標準化は 悪いことなのか?
決してそうではありません。経済的人員配置や知識の専門化、あるいはミス防止や能率向上といった多くのメリットがあります。しかし前項で述べたように、非定常業務が増加する環境下では、標準化という枠組みだけで業務を処理することに限界がきているということなのです。

(3) 従来の改革手法の失敗

間接部門の改革が叫ばれる中で、その手法といえば“組織・機能の再構築”や“業務プロセスの再設計”といったリエンジニアリングがあげられます。過剰や重複を排除し 合理化を行うことで、間接部門の人員を削減しようという考え方です。しかしこれは、紛れも無く標準化の延長上にあります。あらゆる業務をパターン化しITを駆使することで、 “誰でも”正確に迅速に業務を処理できるようなシステム構築を試みたのです。結果はどうなったか?
品質・サービスという点では大いに成果があったと言われていますが、 残念ながら、省人化などのコスト面では、あまり効果が見られませんでした。それどころか“あるべき姿”を追求したことで新たな業務が発生し、更には度重なる例外対応の ためのシステムメンテナンスに、膨大なコストと労力を費やすことになったのです。ERPやシェアードサービスといったシステムを導入された企業は、少なからずご理解 頂けるのではないでしょうか?
標準化に拘り過ぎたことで、裁量を持たない機械化された“考えぬ人”を量産し、内外環境変化への柔軟性を失ってしまったのです。

(4) これからの間接部門改革のあり方

「間接部門はお金を生まない」と一般的に言われますが、決してそうではありません。新興国をはじめとする競合他社がやりたがらないような非効率なこと、難易度が高いことなどの顧客要求に徹底対応することで、間接部門としての付加価値を高め、差別化を図ることができます。
「決められたことを決められた通り行う」という “守り”は大切ですが、「内外環境変化に柔軟対応すべく、変えてゆく」という“攻め”も必要です。そして、“人の成長”がそれを可能にします。そのためには、 従業員が常に考え、自ら学ぶような改革を進めなければなりません。「守りをしっかりと固めなければならない、しかし、攻めなければ点は入らない」。 攻守のバランスが大切なのはスポーツだけではなく、企業活動でも同様のようです。