コラム/海外レポート

2011.05.25

間接業務改革のポイント(5)

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  • 間接部門改革

執筆者:

平井 康之

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
5.意識改革のヒント

連載の最終号は、製造現場、間接部門を問わず、あらゆる企業の共通課題である“意識改革”について述べます。

(1) 意識改革とは?

意識改革とは、問題に気づく(知覚する)こと。問題の所在やその大きさを認識することです。自律的に行動する姿をイメージする方もおられますが、問題に気づくことと行動することは別です。例えば改善活動の初期に、従業員が積極的に取り組むのを見て、「意識が変わってきた」と思うのは時期尚早です。それは単にきっかけがあったからやっているだけで、既に気づいていた問題に取り組んでいるに過ぎません。しばらく続けると、身の周りの改善が進み、問題が簡単には見つからなくなります。実は、ここからが意識改革のスタートです。
問題を一生懸命探す中で改めて我が身を省み、上司の言葉に耳を傾け、他人や他職場の改善内容を気にし始めます。つまり、自分の固定観念から抜け出ようとしているのです。
一般的に、改善活動の最終目的は、やはり経営成果であり、改善をするために問題を探すわけですが、意識改革の場面ではその逆です。新たな問題に気づくために既知の問題を改善する(一掃する)、という流れになります。
結局のところ下図のように、問題と改善のサイクルを回し続けることによって、経営成果と意識改革の両方が獲得できるのです。しかし、従業員がなかなか行動を起こさないのでサイクルが回らない、回り始めたと思ってもすぐに止まってしまう。そこには、意識とは異なる別の要因があるようです。

(2) 行動を阻む3つの障壁

行動を阻む要因には、大きく3つあります。
まず1つ目は、“立場の障壁”です。目立ったことはやりたくない、先輩を差し置いて自分だけが、というわけにはいかない、日本人の奥ゆかしい性格なのか、これは意識とは別の次元の話です。この対処方法としては、【共有機会】を設けることです。製造現場の小集団活動ではごく当たり前のミーティングが、間接部門ではほとんど実施されていないのが実状です。
2つ目は、“時間の障壁”です。「改善は仕事の一部」、と管理者は決まり文句のように言われますが、改善を仕事の一部にしていないのは管理者の方なのです。
改善を日常業務と同等というのであれば、会社の方針や年度計画に加えるべきですし、胸を張って改善やミーティングの時間が取れるように配慮するなど、【行動機会】を与えるべきです。「空いた時間にやれば良い」と言っていること自体、改善を後回しにしていることではないでしょうか?
最後の3つ目は、“意欲の障壁”です。「そもそも何のために改善をやるのか? 何のメリットがあるのか?」、これらの従業員の声は正当とも言えます。ただし、金品を欲しているわけではなく、努力を正しく評価する“労いの言葉”を望んでいるのです。このような【報奨機会】が成功体験となり、次への意欲に繋がっていきます。

(3) 意識改革推進サイクル

以上を整理しますと、【知覚機会】⇒【共有機会】⇒【行動機会】⇒【報奨機会】というサイクルになります。これらの一つが欠けてもサイクルは回りません。
例えば、「改善に取り組んでいるのは一部の人だけ」という現象は、【共有機会】が不足していることが原因と考えられます。また、「改善活動開始当初は盛り上がったが、数ヶ月でぱったりと停滞した。うちの従業員は熱し易く冷め易い」というのは、【報奨機会】を怠った典型的な現象です。
このように、どの“機会”が不足しているかを、常に監視しアジャストしていくことが大切です。

(4) 最後に

「間接部門は業務内容が見え難い」と、内訳や負荷量の調査、分析を繰り返し行う改革手法を見かけます。しかしこれは逆効果であり、従業員はますます隠そうとします。そんな小手先の手法より、従業員が「やりたい、やらなければ」と心から思えるような改革にしなければなりません。5回に渡り間接部門改革のポイントを述べて参りましたが、一貫してお伝えしたかったことは、“人を活かす”ということです。意識面、意欲面に配慮しながら“人の成長”に基軸を置いた改革に取り組めば、従業員は必ず立ち上がります。残念ながら、近道はありません。だからこそ、一刻も早くスタートし、愚直に直向に継続することが大切なのです。本稿がそのヒントになれば幸いです。