ひじきやわかめ、青のりなどの海藻は、日本の食文化を支える身近な食材であり、家庭料理から外食、加工食品まで幅広く利用されている。近年では健康志向の高まりを背景に、その栄養価や機能性にも注目が集まる一方で、天然資源の減少や原料を調達する海の変化など、海藻業界を取り巻く環境は大きく変化している。
こうした海藻加工の分野で長年にわたり事業を展開してきたのが株式会社山忠だ。1947年の創業以来、青のりの加工販売から事業をスタートし、その後はひじきやわかめ、海藻サラダなどへと事業領域を拡大、時代ごとの市場ニーズに応じて成長を続けてきた。1990年代には独自の「ノンドリップ蒸煮製法」を開発し、従来は難しかったひじきの大量生産と品質の両立を実現。現在では、ひじき加工品で 国内トップクラスの実績を持つまでに成長し、売上の約7割をひじき事業が占めるなど、日本を代表するひじき加工メーカーとして確固たる地位を築いている。
国内産ひじきの漁獲量は減少を続け、大きな転換期を迎えている中、さらなる成長をめざすためには、技術や知識を受け継ぎ、新たな価値を生み出す人の育成が欠かせない。独自技術を強みに事業を発展させながら、いかにして次代を担う人材や変化に強い組織を築いていくのか。導入された『挑・超120』活動の取り組みについて、お話を伺った。
(※ASAP 2026年 No.2より)
海藻とともに歩み続けた80年の歴史
「共生」と「挑戦」を原点に未来を拓く
創業の経緯についてお聞かせください
山城氏:
当社の創業は1947年(昭和22年)で、私の祖父である山城忠が第二次世界大戦後、故郷がある大分県佐伯市へ戻り、新たな仕事として始めたのが海藻事業でした。当時は佐伯市を流れる番匠川や堅田川で青のりが豊富に採れていたことから、まずは青のりの加工販売を手掛けたことが、当社の原点となっています。
その後、1950年頃からはひじき事業にも着手しました。当時はまだ、佐伯市のひじきというのはブランドがなく、販売先に苦労していた生産者の方から相談を受けたことがきっかけでした。1970年代には、インスタント食品などへの用途拡大を背景に需要が高まったカットわかめの加工販売を開始し、1980年代には複数の海藻を組み合わせた海藻サラダを中心に事業領域を広げていきました。そして1990年代、海藻サラダ市場が縮小する中で、二代目の社長となる山城繁樹が再び国内産ひじきを中心に事業を展開していく決断を下し、工場へ自動ラインを導入しました。
こうした挑戦を続ける中、画期的な開発等もあり、業務用を中心にひじきの売上が伸びていき、現在では売上高約35億円のうち、約7割をひじき事業が占めています。ひじき加工品では国内トップの実績を有しており、日本を代表するひじき加工メーカーとして事業を展開しています。
代表取締役社長
山城 達郎 氏
事業環境についてお聞かせください
山城氏: 国内産はこの5年程で資源がかなり減少し、それに伴って価格も高騰したため、販売数量が落ちてしまったことが業界内では深刻な悩みの一つとなっています。当社では20年近く養殖技術の研究を進め、近年は人工種苗の開発にも取り組んでいます。しかし、天然種苗の減少に加え、養殖に適した漁場と生産者とのマッチングが難しいことから、本格的な普及には至っていません。代替として安価な韓国産や中国産のひじきがどんどん広がっているような状況ですね。また、人材の問題も大きく、採用面でより大きな課題を感じています。
事業成長の転機についてお聞かせください
山城氏:
大きな転機となったのは、二代目社長が開発した「ノンドリップ蒸煮製法」です。従来のひじき加工は、大きな釜で長時間炊き上げる方法が一般的でした。しかし、一度に大量のひじきを処理すると熱の伝わり方にムラが生じやすく品質が安定しないほか、ひじき自体が自重で潰れてしまい、膨らまなくなります。また、加熱後に乾燥工程へ移るまで温度が下がるのを待つ必要があり、その間に菌が増えて臭いが出てしまうなど、いろいろと問題がありました。
これらを解決するために考案したのが「ノンドリップ蒸煮製法」で、ベルトコンベヤ上にひじきを薄く広げ、蒸気を均一に当てながら連続的に加工することで、問題を解決しながら大量生産も可能にしました。当時は特許を取得し、現在も当社独自の製法として活用しています。日本のほか、中国と韓国にもひじきの生産地があり、各メーカーさんがいますけれど、このような連続ライン方式を採用している企業は当社だけだと思います。
ひじきの食文化を持っているのは日本だけなので、消費はほぼ100%日本ですが、その原料は6割が中国産、3割が韓国産で、国内産の原料は全体の約1割程度まで減少しています。原料の調達を取り巻く環境は年々厳しさを増していますが、こうした変化に対応しながら、これまで培ってきた加工技術と品質管理を強みに、安定した製品供給を続けていきたいと考えています。
本社工場 ひじき目視選別工程
リバーパーク犬飼工場
大切にされている考え方や理念をお聞かせください
山城氏:
当社の企業理念には「日本独自の海藻食文化の可能性追求とその未来を創造する」という一文があります。また、ひじき加工のトップメーカーという自負もありますので、新たな商品開発に挑戦することはもちろん、これまで食用として十分に活用されてこなかった海藻についても、加工技術や用途の検討などを通じて新たな市場を切り拓いていきたいですね。
また、この事業は、海藻の生産者がいて初めて成り立つものです。生産者の方々が将来に希望を持ち、前向きに生産が続けられる、そういった関係づくりを大切にしています。そして、海藻食文化を次世代へ受け継ぎ、その価値をさらに広げていくことが、当社の使命であると考えています。
海外や国内生産者と築いた長年の信頼
独自製法で高品質のひじきを提供
貴社ならではの強みについてお聞かせください
山城氏:
当社の強みは、長年をかけて調達から製造、販売まで、一貫して対応できる仕組みを築いてきたことです。国内では愛媛と大分が二大産地ですが、その産地や生産者と50年以上かけて関係を構築してきました。韓国に関しても、直接生産者のもとへ赴いて買い付けをし、そこから直接仕入れる体制を40年以上継続しており、安定した原料調達を実現しています。
製造面では、独自の「ノンドリップ蒸煮製法」が大きな強みですね。この製法が優れているのは大量生産に適しているだけでなく、ひじきへのダメージが非常に少ないため、乾物にした後の水戻し率が一般的な7~8倍に対し、当社製品は10倍以上にもなります。少ない使用量でも十分なボリュームが得られ、味もよく染み込むことから、業務用原料として高い評価をいただいています。また、ひじきは天然原料であるため、糸くずや植物片などの異物が混入しやすい食材です。当社では長年にわたり設備投資を重ね、高度な異物除去の技術を確立してきました。こうした品質への取り組みも、お客様から信頼をいただいている理由の一つです。
販売面では、地方メーカーでありながら全国の大手コンビニエンスストアやスーパーマーケットのプライベートブランド商品を数多く手掛けており、それに対応できる品質基準と生産体制を備えています。
改善の文化を知らない現役世代
次代を担う若手育成が急務に
弊社のコンサルティングを導入する前に、どのような課題をお持ちだったのでしょうか
安藤氏: 以前、テクノ経営さんの指導を受けたのが約20年前で、その時はリーダー層を中心に「改善」への考え方や習慣が社内に根付いていきました。しかしその後、世代交代が進んで各部門の責任者たちも若返り、「改善」という考え方に触れる機会のない世代が中心となりました。私としては現状維持ではなく、常により良い姿をめざしてどんどん変えていきたい、またそういった意識をもう一度浸透させたいという思いがあり、経営陣とも相談を重ねた結果、若手の育成と自社で継続的に改善活動ができる体制づくりを目的に、再びテクノ経営さんへ声をかけました。
山城氏: 確かに当時、そういう話があったと思い出しました。社内でも40代前後の世代が管理職としてマネジメントに携わっていく中で、改善活動はもちろん、リーダーとして組織をまとめる役割や考え方を自社だけで教育していくには限界があると感じていました。専門的な知見を持つ外部のコンサルタントから体系的な指導を受けることが必要だと判断しました。
製造部
部長 安藤 政彦 氏
1日工場診断で気づいた改善余地
「納得して動く」現場づくりが決め手に
弊社の1日工場診断を受けた印象はいかがでしたか
阿部氏: 現場では当たり前と思っていた作業に対し、「こうした方がスピードが上がるのではないか」と具体的な改善を提案いただいたことが印象に残っています。特にワカメの選別工程での指摘は、翌日実際に試してみるとすぐに効果を実感でき、「本当にその通りだ」と強く感じました。普段の仕事では気づけない視点が得られたことをよく覚えています。
製造部
リバーパーク犬飼工場
係長 阿部 美代子 氏
安藤氏: 今まで日常の作業を「価値作業」「付帯作業」「ムダ作業」という視点で分けて考えたことはありませんでした。言われてみればその通りだなと。改善とはムダな作業を減らし、価値を生み出す作業の割合を高めることだと教えていただき、非常に分かりやすかったですね。
コンサルティング導入の決め手はありましたか
安藤氏: 以前の指導で成果が出ていたので、お願いするならテクノ経営さんしかないと決めていました。さまざまなコンサルティングがありますけど、テクノ経営さんは現場責任者を十分に納得させたうえで、一緒に改善を進めていただけるので、そこも大きな魅力でした。一方的に進めるのではなく、現場と同じ目線で取り組んでいただけるからこそ、現場の責任者も前向きになり、改善活動が着実に進んでいくのだと思います。
山城氏: 前回の指導では現場が大きく変わり、現在も当時改善した仕組みが数多く残っています。その後、社内の環境が変化したこともあり、今の状況に合わせてもう一度見てもらったらいいのではないかと考え、再びお願いすることにしました。
初めての取り組みに戸惑いや抵抗も
リーダーの声掛けと対話が現場を動かす
コンサルティングを導入した当初はいかがでしたか
安藤氏: 一番考えたことは、社員一人ひとりのモチベーションをどう高めるかという点でした。改善活動では1人1件以上の気づきを出そうと取り組みましたが、どうしても個人差がありました。そのため、気づきを出すことでどういった効果があるのか、どのように現場が変わっていくのか、そういった点を丁寧に説明しながら進めていきました。
阿部氏: 活動が始まると「これはなかなか大変だ」と感じました。ただ、犬飼工場では以前から改善を出して発表するという活動を実践していましたので、そこまで抵抗なくスタートできたのではないかと思います。柴田先生から助言いただき、リーダーが現場で積極的に声をかけ、他のメンバーに改善のヒントを与えてもらいました。「こういう風にしたらどうか」「こういった方法もあるよ」など、一緒に考えながら進めることで、なかなか意見を出せないメンバーも気づきが増え、少しずつ改善案が出せるようになりました。
汐月氏: 私自身は以前の経験があったので、大変ですけどすごく楽しいと感じていました。ただ、本社工場では改善活動の経験がない社員も多く、当初は「何をすればよいのか分からない」という声もあってとても悩みました。その時に柴田先生が一つずつ説明してくれて、何でも気づいたことを書き出し、それを次のステップへつなげていけたので、皆も徐々に慣れていった感じでした。とにかく何度も伝えながら一緒に進めていき、意識してコミュニケーションを取って、会話を増やすことで対応していきました。
製造部 製造二課
係長 汐月 由香 氏
対話と改善の積み重ねが生んだ急成長
歩留まり向上など、経営面でも成果を実感
コンサルティング導入の成果はいかがですか
汐月氏: 活動を通じて大きく変わったと感じるのは、これまであまり発言する機会がなかったメンバーが、自分の考えや気づきを積極的に発信するようになったことです。「こんなことを考えていたのか」と驚く場面も多く、普段の会話も増えました。活動をきっかけに、自分の意見を伝えられる社員が着実に増えていると実感しています。
阿部氏: 普段は何も言わなかったのに気づきや改善の希望を伝えてきて、実際に改善してみたらものすごい効果につながった事例もありました。私が知らないような視点や技術的な提案が出てくるなど、1件の気づきが大きな成果へ発展していくことにとても驚いています。この活動がなければ、今までと同じように生産性や会社の利益などを考えず、作業を続けていたと思います。しかし、現在では歩留まりを気にして、目標に届かなかった時はその原因を考え、新たな改善につなげていくなど、以前と比べて大きな変化、成長を感じています。
安藤氏: 一つの改善が完結しても、担当者たちは完結したと思っていない。パート2、パート3と「改善のその先」を考え、どんどん発展していく。こうした点は本当に良かったと感じます。また、他部署の優れた改善を自分たちの部署にも積極的に取り入れ、水平展開する動きも定着しました。以前では絶対なかったことです。改善活動が組織全体へ広がっていき、皆の成長を実感しています。
山城氏: 現場から多くの改善が上がるようになり、歩留まりの向上など経営面でも確かな成果につながっています。目に見える形で効果が表れ、評価もしやすくなりました。今後はこの活動を軸に、評価体制の見直しやリーダーを担う人材育成の仕組みなども充実させていきたいですね。
ミーティング風景
食育ひじき収穫体験
次世代へ受け継ぐ改善の力
全社でめざす持続的な成長と更なる発展
今後の目標やめざす姿をお聞かせください
汐月氏: 次世代の育成に力を入れ、この改善活動を長く続けていきたいと考えています。そのためには固定観念にとらわれず、柔軟な発想を持ち、何よりも楽しみながら取り組んで改善活動が受け継がれていく職場をつくっていきたいと思います。
阿部氏: 犬飼工場では月1回の改善発表を止めていないので、気づきの活動は継続していきたいですね。3部署が一体となって取り組み、次世代も育ちつつあります。そこへの引き継ぎを進めるとともに、本社工場と互いに行き来しながら交流を深め、部署の枠をこえた連携がさらに強化できればと考えています。会社全体が一つになって改善活動を盛り上げ、売上向上にもつながるような組織になれば、「この会社はすごい」と評価される企業になれるはず。私自身も、山忠に入って本当に良かったと感じていますので、これからもより良い会社へと成長していってほしいと願っています。
安藤氏: この活動を始めようと提案した立場として、現場で頑張っている皆と経営者をつなぐ役割を果たしていきたい。現場の努力や成果をしっかりと経営層へ伝え、「この活動に取り組んで良かった」と誰もが実感できる仕組みづくりに力を尽くしていきたいと思います。
山城氏: 現場では数多くの改善活動が行われ、ものすごい情熱を持って取り組んでくれています。実際、歩留まり向上をはじめ、さまざまな面で会社に貢献してくれています。一方で、その成果が現場だけで終わるのではなく、会社全体の成長として社員一人ひとりが実感できる環境づくりが必要だと考えています。社員だけでなく社内外を含めて「良い会社になった」と評価されることをめざし、この活動をさらに広げていきたいですね。
取材にご協力いただいた方
株式会社山忠
代表取締役社長 山城 達郎 氏
製造部 部長 安藤 政彦 氏
製造部 リバーパーク犬飼工場 係長 阿部 美代子 氏
製造部 製造二課 係長 汐月 由香 氏
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【コンサルティング事例】 株式会社山忠 様






