雪かきや草刈りは、だれにとっても楽な作業ではない。厳しい寒さや暑さの中で行い、時間も体力も奪われてしまう。そんな負担の大きい作業を無くすために開発されたのが除雪機や草刈機だ。これまで人の手で行ってきた作業を効率よく進め、時間を短くするとともに、体への負担も大きく軽減してきた。日々の暮らしや仕事を支え、多くの場面で欠かせない存在となっている。
1941年(昭和16年)に創業した和同産業株式会社は、長年にわたって除雪機や草刈機の分野で製品を作り続けてきた企業だ。特に除雪機においては、国内生産台数で日本一※を誇り、多くのユーザーから信頼を得ている。また、同社の製品は、企画・開発から設計、製造、販売までを一貫して自社で対応しており、「商品を通じて社会の役に立ち、縁のある人々の幸せを実現する」という考えのもと、地域や現場に根ざしたモノづくりを続けてきた。2018年には、日本初となる雑草を自動で刈るロボット「ロボモアKRONOS(クロノス)」を開発。人手不足や作業の省力化が求められる現場での活用が広がっている。
市場環境が大きく変わる中で、自社が抱えてきた課題に向き合い、「自分たちが変わっていかなければ!」という強い想いから導入された同社の活動をケーススタディとして紹介する。
※同社調べ。ハンドガイド式歩行型除雪機において、シェア上位メーカーからの委託生産台数を含む。
(※ASAP2026年No.1より)
創業85 年、時代とともに姿を変えながら歩み続ける和同産業のモノづくり
1941年(昭和16年)、岩手県盛岡市で金属材料販売業および金属機械加工業として創業した和同産業株式会社。1946年(昭和21年)に現在の社名へ改称し、鉱山機械部品や家庭用金物、家具の製造を開始したのが事業の出発点である。
「鉄くずを集めて、ストーブや椅子を作ったのが最初の生業でした。当時、二代目が創業者に『なぜ和同鉄工所ではなく産業なのか』と聞いたところ、産業と名前が入っていれば仕事がどのように変わろうとも何とでもなると、だから産業の方がいいと答えたそうです」
そう話すのは、代表取締役社長の三國 卓郎氏。その言葉の通り、事業内容は時代とともに変わり、草刈機や農業機械、そして現在の主力である除雪機の開発・製造へと広がっていった。北海道向けの特殊な機械や豆刈機の製造、さらには海外への製品供給や、自動ロボット草刈機といった独自性の高い製品も開発。また、自社でプログラムしたAI検査機を導入するなど、生産方法の改善にも取り組む。
設計・開発から製造、販売までを一貫して手がける体制は創業以来の強みであり、地域に根差したモノづくりを大切にしながら、歩みを進めている。
代表取締役社長
三國 卓郎 氏
自動ロボット草刈機や海外展開など、厳しい環境を切り拓く
海外製品との価格競争では勝ち目がない……、そうした現実を何度も突きつけられる中で、同社は「独自の製品を作る」という選択を重ねてきた。その象徴の一つが、ロボット草刈機である。「同じものを作っても、海外と安さで勝負したら、勝ち目がないと実感します。だから、本当に違うものを、自分たちで作り上げようという気概で取り組んでいます」と三國氏。ロボット草刈機は、こうした試行錯誤の末に完成し、現在では沖縄から北海道まで、全国のさまざまな分野で活用される製品へと成長した。
一方、主力製品の一つである除雪機事業では、自社ブランド製品に加え、大手メーカー向けのOEM供給も手がけている。約15年前からは一般家庭向けの小型除雪機の開発にも本格的に着手した。取締役 山崎 俊博氏は「これまでは豪雪地帯の農家さんがメインの顧客でしたが、マーケット的には一般家庭の方が圧倒的に大きい。そこで小型の除雪機を開発し、販売ルートを広げていきました」と話す。
取締役
山崎 俊博 氏
人口減少による国内の市場縮小が避けられない中、近年は海外市場の開拓にも力を入れている。山崎氏は「ここ5、6年でヨーロッパへの輸出を開始しています。担当者が直接現地へ赴き、ディストリビューター(販売店)を開拓しています。昨年からは、さらに北米やアメリカにも輸出を始め、年間の売上も大きく増えています」と、手応えを感じているようだ。
もっとも、その道のりは平坦ではなかった。コロナ禍以降、半導体不足が深刻化し、ECU(電子制御ユニット)の調達が大きな課題となった。第2製造部 部長 兼 原価管理課 課長 佐藤 文隆氏は「2021年頃から入手が困難になり始めました。海外に問い合わせても、納期は未定、あるいは納期が出ても2年先という異常事態の中、除雪機だけは生産を止めずに稼働させるため、だいぶコストはかかりましたが調達を続けました」と、これまでの苦労をお話いただいた。半導体不足が落ち着き始めると、今度は鉄板などの原材料をはじめ、エネルギーや労務費の高騰が重くのしかかった。さらに人材確保も容易ではない中、困難な局面を乗りこえるべく、日々奮闘を続けている。
第2製造部 部長 兼 原価管理課 課長
佐藤 文隆 氏
強み自社で開発から製造までを対応する、オリジナルなモノづくり
同社の製造部門は、モノづくりに必要な工程がほぼ全てそろっている。第1製造部 部長齊藤 伝男氏は「プレスや板金、溶接、塗装、組み立てなど、全ての工程があるので、別工程へ挑戦することもイメージできる。そこに魅力を感じるし、一番の強みだと思います」と話す。
第1製造部 部長
齊藤 伝男 氏
こうした体制は、製品を作るスピードや柔軟さにもつながっている。顧問 小田島 猛氏によると「製作に必要な設備や工程はほとんど備えているため、設計が書いた図面をそのまま自社の工場で加工ができます」とのことで、何かあった時には素早い対応が可能となっている。
顧問
小田島 猛 氏
塗装工程を担当する第1製造部 表面処理課 課長 上野 定之氏も、現場力の高さを実感しているという。「品質の不具合だけでなく、設備の不具合もありますが、いろんな能力を持つメンバーがいて、それぞれ対応しながら、生産を止めることなく前に進められています」と話し、どんな事態にも皆が全力で取り組む体制が整っている。
第1製造部 表面処理課 課長
上野 定之 氏
さらに、開発~製造まで一貫して対応できる点も強みだ。三國氏は「自社で開発も行っているため、作り方も自分たちで決められます。ロボット草刈機の時も、一から作るのはすごいと感心しました。本当にクリエイティブだなと思いますね」と、その姿勢を評価する。小田島氏も「溶接に使う治具や金型も、全部自分たちで作っています」と明かす。図面が変われば、それに合わせて自分たちで変えていく。そのスピード感が強みだという。
また、自社ブランドを持ち、ユーザーの声が直接届く点も見逃せない。山崎氏は「お客さんの声を設計にフィードバックしやすく、改良をどんどん加えられる」と、市場の近さが開発力の源になっている。
定着しない改善活動や長いリードタイムが課題に
なぜ今回のコンサルティング導入に踏み切ったのか。その背景には、経営層と現場の双方が抱えていた問題意識と、これまでの改善活動への反省があった。
小田島氏は「過去にも数社実施しています。その時は良い感じに進んでも、コンサルティングが終わると、元に戻ってしまう」と、継続性に課題があったという。また、上野氏は「作業者は一生懸命、仕事をしてますが、その作業がムダだという部分に気づけない」と、現場での状況を指摘する。齊藤氏は「製造に関する工程が全てある、それが強みだと話しましたが、同時に弱みにもなっていて、生産リードタイムがすごく長いと感じていました」と、的確にその課題を捉えていた。
三國氏は「社長に就任して2年が過ぎ、『とにかく変わろうぜ』と。もう、とにかく変わろうというメッセージを掲げ、現場から『こういうことがやりたい』と声が出たので、導入を決めました」と振り返る。
ロボモア KRONOS(クロノス)/天候・場所・時間を問わず、草刈り・帰還・充電のすべてを自動で行います。
「当たり前」という落とし穴、現実を突きつけられた1日工場診断
多くの製造業系コンサルティング会社があり、資料などを取り寄せている中で、山崎氏は「無料で工場を診断いただけるということで、受けてみようとなりました」と振り返る。実際の診断では、ありのままを見せて、どういう評価をしてもらえるのかといった部分を重視し、現場への同行や過度な説明は控えたという。その結果、「とても、成績の悪い通信簿をもらいました。ここまでなのかという結果を突きつけられました……」と話す。たが、それがかえって現実を直視する材料となった。写真やレポートで示された部分についても、「これは我々から見ると当たり前の作業。だが、実際はそうではないという具体的な指摘をしっかりとまとめていただいた」と評価する。想像以上に踏み込んだ内容に、「ここまでのレポートを出してくるとは思っていませんでした」と、率直な驚きを語った。
診断を通じて、強みを評価されるというよりも、弱い部分を指摘された点が印象に残ったという。その指摘は経営層が感じていた課題と重なっており、少しでも改善していかなければいけないと考える契機になった。小田島氏も「昔から、作業の中身はほぼ変えないで取り組んでいる。それが当たり前になり、違う目線で見ることはほとんどない」と話す。だからこそ、外部からの指摘に価値があり、工場診断が次の一歩を踏み出す後押しになった。
コンサルティング指導風景
最大の壁は現場の意識、小さな成功体験が突破口に
導入当初、前向きな空気ばかりではなかった。最大の壁となったのは、現場の意識にあったという。齊藤氏は「一番大変だったのは、やはり取り組みへの意識ですね。最初は『えー、やるの?』みたいな感じからのスタートでした」と率直に語る。活動を進める中で、少しずつ理解や協力は得られてきたものの、まだ完全ではないという。上野氏も「改善も仕事だという認識を、言葉で伝えてはいるけれど、実際は目の前のやらなければいけない作業に没頭してしまい、なかなかそこまで手が回っていない状況でした」と話し、日常業務と改善活動の両立の難しさを指摘する。
一方で、取り組みを前進させるための支えも確実に存在していた。山崎氏は定期的に現場へ足を運ぶ重要性を強調する。「月1回は各職場を回り、現場で悩んでいる部分をうまく聞き出してくれています。時間を過ぎても残って対応いただくなど、我々が見えないところでフォローいただいている部分があるのだと思います」と話す。こうした中、全員参加型の活動が徐々に根付き始めている。齊藤氏は「本当に小さなことでもいいから、とにかく改善案を出して欲しいと。すると、今まで反応を示さなかった人がちょっとしたことでも書き出してくれる。そして、それを自分たちで改善していけば、小さな成功体験につながる」と、その効果を語る。小田島氏も「以前は課長や係長など、担当者だけがやる活動だった。テクノ経営さんの場合は全員参加で進める。まわりの人が実施していれば、『自分もやらなければ』と意識が変わっていく」と話す。齊藤氏は「言われてからやるのではなく、自分たちで気づいて動くようになりつつある」と、現場の意識が確実に変わり始めている手応えを語った。
後工程を考えた改善、そして間接部門を含めた全社の活動へ
これまでの活動で意識や行動の変化が着実に広がっていて、工程全体、さらには間接部門を含めた全社的な動きへと変わりつつあるようだ。上野氏は「以前は部門ごとで取り組んでいる感じが強かったのですが、現在は部門間をはじめ、前工程や後工程とのやり取りも含めた活動になっています。これがもっと活発になっていけば、全社的にも効果が発揮されていくのでは」と話す。齊藤氏は「以前と比べて、自分からやろうという姿勢は見えてきています。忙しい時も、頭の片隅には『改善しなければ』という意識がある。気持ちの面では、前向きになっているはず」と、意識の変化を感じているそうだ。
間接部門の取り組みを進める佐藤氏は「最初はどうかなと思いつつも、『現場だけの力では改善できないところもある』という話が出て、調達や原価管理、生産管理といった間接部門も一緒に取り組みました。お互いの役に立てるというか、つながっていくのを実感しています」と話す。また、原価管理の面でも動きがある。「社内システムを利用した工数入力に関し、この機会に全てルール化しました。何が大変なのか、どうすれば楽に入力できるのかなど、現場と密にコミュニケーションを取りながら、いい方向に進んでいます」と、今後の活用にも期待を寄せる。
山崎氏は「工場に生産性のグラフなどが貼り出されるようになり、今後は大きなモニターを導入予定です。意識するきっかけになっており、あとはどう活用していくかというのが次のステップですね」と、現場の変化はもちろん、次の段階への課題も指摘する。小田島氏は「想定外だったのは、自分たちの改善を後工程のためにやる、という動きです。これが全工程に浸透すれば、リードタイムも短縮できるのでは」と期待する。三國氏は「成功体験と手応えは確実にある。ただ、和同はこんなもんじゃねえぞと。もっと生産性を上げて、もっともっと良くなれる。まだまだだぞ、という気持ちで頑張ってもらいたい」と話す。変化は始まったばかりで、その先にある可能性は大きい。
現場から変える生産性の未来、すべてはお客様に喜ばれるモノづくりのために
数多くの改善に着手し始めた今、同社はこれからどのような姿をめざしていくのか。現場の最前線に立つ上野氏は「まだまだムダが多いというのが正直なところです。そうした一つひとつを改善していき、最終的には省力化や効率アップを実現していきたい」と、地道な改善の積み重ねに強い意欲を示す。
また全体最適の視点について、小田島氏は「後工程を考えた、そうい う計画に基づく生産はできていないのが現状です。計画がなければ、生産負荷が適正なのかも分からない。数値化とあわせて、計画に従って運営できる工場体制にしていきたい」と語り、工場運営の在り方そのものを変えていくべきだと指摘する。
齊藤氏は、活動の象徴である目標数値に触れ、「今回の活動名である『WPI30』は、和同・プロダクト・イノベーション、そして現状より30%生産性を上げるという覚悟の数字です。やるべきことは山積みですが、一番大事なのは継続すること。現場任せにせず、一緒になって続けていくことで、必ず良くなると信じています」と、継続こそが鍵であると強調した。
間接部門からの視点として、佐藤氏は「原材料の調達では、現場が同じ作業を繰り返すといったムダがないよう、効率の良い仕分けで供給する体制をさらに進めたい」とした上で、「原価管理課では、工数の実績データを活かし、標準と実績の差がなぜ生まれたのかまで見える化していきたい」と、データ活用による改善への期待が語られた。
山崎氏は「以前は派遣の作業者をたくさん動員し、どちらかといえばメタボのような体質の中でずっと生産を続けていました。これからは、自社製品の販売に力を入れていきながら、筋肉質な体質にしていかなければいけない。会社が続く限り、生産性向上は永遠のテーマで、改善をどう根付かせ、途切れさせないかが重要です。コンサルティングが完了したら終わり、とならないよう定着させていきたいですね」と、活動を一過性に終わらせない決意をお話いただいた。
三國氏はプロジェクト全体を振り返り、「現場から本音が出てくるのは良いこと。この活動によって、工程間のつながりができたように、最終的にはお客様にまでつながり、喜んでもらい、その対価で自分たちの働き方を良くする。そういったつながりをもっと大きくしていきたい。そして、最後には伊藤先生と美味しいお酒を一緒に飲みたいですね」と、さらなる発展を期待した。
現場と経営が同じ方向を向き、改善を積み重ねていくことで、さらに飛躍していくだろう。同社の持続的な成長への歩みはこれからも続いていく。
取材にご協力いただいた方
和同産業株式会社
代表取締役社長 三國 卓郎 氏
取締役 山崎 俊博 氏
顧問 小田島 猛 氏
第1製造部 部長 齊藤 伝男 氏
第2製造部 部長兼原価管理課課長 佐藤 文隆 氏
第1製造部 表面処理課課長 上野 定之 氏
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【コンサルティング事例】 和同産業株式会社様






