国内コンサルティング事例

ニッタ・ハース株式会社様(現会社:ニッタ・デュポン株式会社)

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ボトムアップ活動で標準化

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 本ページでは、ニッタ・ハース株式会社様に対するコンサルティング実績をご紹介しています。
 超精密表面加工技術でハイテク産業に貢献――ニッタ・ハース株式会社は、工業用ベルトのリーディングカンパニーとして名高いニッタ株式会社と、 半導体デバイスの研磨用パッドのトップメーカー、(米)Rodel Inc.(現 The Dow Chemical Company)との共同出資によって設立された。
 今回、インタビューにお伺いした京都工場は、次世代の技術開発を志向した最新鋭の研究開発と製造拠点。テクノ経営では、4年間のコンサルティングを 通じて、同社の改善活動を側面から支援させていただいている。
 シリコンウェーハ超精密研磨システムをアジア全域に提供、半導体デバイス研磨システムでは世界シェア90%を誇る同社。LCDガラス基板や ハードディスクなど研磨分野の拡大、技術の更なる高精度化に向けたチャレンジは続く。
(※ASAP 2011年 No.6より抜粋)

(左)生産本部 京都製造部 製造二課 係長 久保 みゆき氏
(中央)取締役 シニアバイスプレジデント 生産本部 本部長 中林 伸一氏
(右)生産本部 京都製造部 製造二課 課長 伊東 貴延氏

コンサルティング導入について

本日はよろしくお願い申し上げます。初めにコンサルティング導入の経緯についてお話ください。

中林: 当社は、昭和58年にニッタ株式会社とアメリカのロデール社(当時)との共同出資で作られた会社です。 事業内容としては半導体用の研磨資材を生産・販売しています。現在の工場はここ京都工場と三重工場の二か所です。
  この京都工場は2006年操業の新しい工場です。親会社の奈良工場から移転したわけですが、その翌年の2007年が当社の売上げが ピークを迎えた年でした。多くの注文を抱えて忙しく働いていたのですが、今後の生産体制を考えると、製品の品質や生産性向上の必要性が 出てきました。この問題に対し、私は現場の人たちが自分たちで改善を行い、モチベーションや品質を上げることができないものかと考えて いました。そんな折、ある経緯でテクノ経営の工場診断を受ける機会が出てきました。それがちょうど2007年12月のことです。
  一日かけて現場をつぶさに見てもらったのですが、そのときの話で印象に残っているのは、価値作業とムダ作業との違いという説明です。 そして、年が変わった2008年1月、診断結果のプレゼンテーションを聴いて、改善の余地や課題が多いことがわかりました。自分たちで 自主改善をするかどうかという問いかけに対して、現場からは「やります」という声が返ってきました。そこでVPM活動を開始することになったのです。

活動内容について

導入後の展開についてはいかがですか。

中林: 準備段階を経て、2008年5月にキックオフを迎えました。最初は、作業内容の分類から始め、いかに 価値作業の割合を増やすかを考えました。活動後感じたことは、自主的な会合が見られるようになったことです。正直いって最初の 1年目はやらされ感を持っている人もいたと思うのですが、それも徐々になくなって、現在では活動範囲も全工場に拡大しました。

活動名、活動目標などはどう決められたのでしょうか。

伊東: プロジェクトマネージャーを担当している伊東です。改善活動の名称は キックオフの時に募集して決めましたが、活動名はあまりノーマライズされず、VPMの方が短くて収まりがよかった関係で、社内では VPM活動で通用しています。

中林: 当初、活動目標は生産性20%アップを目標としました。進捗成果としては、1年後に生産性15~20%に上昇、 現在では30%を超えています。

対象部門は製造部門が中心でしょうか。

中林: 初年度は、加工・仕上げ、梱包の2チームでスタートしました。二・三期は、もう1チーム加えた3チーム、 四期(今期)からは京都工場全体の5チームとなりました。導入時より全員参加の活動を目標にしてきましたので、どうにか全員参加 という形になってきたかなというところです。
  とはいえ、まだまだ標準化に向けての想いは各人それぞれ違うところもあり、全員が全員同じようなモチベーションでというところでは 難しい問題もあります。このあたりの動機づけを含めた課題を抱えています。
  動機づけの点では、毎期2回の報告会が効果的であったと思います。例えば、現在進行中の四期活動でいえば、この9月に中間報告会を 開催、来年の1月にも成果報告会を開催する予定です。先月の中間報告会には出席できませんでしたが、報告会には必ず社長が参加して コメントを述べるのが恒例になっています。

活動の成果

本当に大きな動機づけだと思います。活動を開始されて、それ以前と比べて変化されたところはどこでしょうか。

中林: 一番の変化は、社内の作業が標準化されてきたことです。これはビデオなどで動作研究を愚直に繰り返してきた 結果だと思います。いろいろな人の作業を分析して、一番やりやすく速い方法をビデオ分析により、標準作業書に落としていったのです。 そうした活動を通じて、社内コミュニケーションも良くなったと思います。

久保: 元専任リーダーの久保です。今期からはメンバー育成のためにサポート側に まわっています。自主的な活動には目的と納期があります。今までは、積極的な人と傍観する人に二分するのが当たり前でしたが、VPM ではやらざるを得ない雰囲気に変わってきました。1年とか短期間なら、その場で対応していればすみます。しかし、ずっと継続するとなると、 いい意味でも悪い意味でも追い込まれるようになります。そういう環境が自分自身を変えざるを得なくします。個人差はありますが、 そういう感覚になってきていると思います。

やはり意識の変化が大きいところですね。

中林: 活動を通じて一番変化したところは自主性が出たことです。やはり考えて改善する力が付いたと感じています。 例えば、久保さんのチームが、ニッタグループのQC大会でニッタ・ハースの代表として3回選ばれています。その結果としては、第1回目は ニッタの全社大会で2位。そして、第2回目は優勝に選ばれたのです。そして、3回目はこの11月にあります。そういったところで活動の 成果が出てきています。

すばらしい成果です。次回QC大会が楽しみですね。ぜひ連続優勝を果たしてください。

中林: 現在、三重工場でも同じような活動を始めています。活動発表会を聴きにきて、京都工場の活動に習って少しずつ 進めているようです。自主的な活動を目標に、あるべき姿を考えて、いつまでに何をやるかという姿勢で取り組んでいます。

波及効果が出ておられますね。

中林: 波及効果は大きいと思います。工場見学に来られたお客様から、挨拶が徹底していると評価いただいています。 工場が新しいというのもありますが、「よく整理・整頓された環境でやっていますね」といって頂いています。

コンサルティングに対する反応

コンサルタントが定期的にやってくるプレッシャーというものはあるのでしょうか。

中林: 正直いうと、私はコンサルティングというのはあまり好きではない。しかし、 VPM活動では、コンサルタントから教えていただいた知識や考え方が実を結んでいると思います。教育という言葉は、読んで字のごとく 「教え育てる」ことを表しています。学んだ知識を実践の中で継続して身につけることで、成長・進化を遂げていく。これが教育の本当の意味ではないかと思います。

久保: たいへん情熱を持って指導いただいています。コンサルタントからは、相手の話を聴き切るという姿勢に学ぶものがあります。相手からどう話を聴けば効果的なのか、私は相手の話を聴きだすのが苦手なので、そのあたりはとても参考になりますね。

よく見られるコンサルティングに対する反発は少なかったのでしょうか。

久保: そういった意識はあまりなかったと思います。標準化を進めるとか、生産性を上げるといったことは、それまでは係長以上の指示にもとづいて改善するのが普通でした。それがボトムアップで進める必要が出てきた。 これからは自分たちで考えて、リーダーシップを取って、成果を出しなさいということです。それで最初は、初めての経験だけに「どうやったらいいの」 「何をしたらいいの」という戸惑いがあったのですね。また、自分たちの悪いところをどんどん出していくという活動が、何か自分たちの評価を下げるように感じられたようです。そこを「そうじゃない」と納得してもらうのに苦労しました。

活動の苦労話

土壌として、御社の良い企業風土があると思います。そういったところに活動が加わって活動の大きな成果につながっているのだと感じています。 改善活動の苦労話などはありましたでしょうか。

中林: 私自身の苦労話としては、コンサルティング導入について親会社の役員会で説明をしたときの話です。 その場では賛同を得ましたが、たまたま夜の飲み会でコンサル導入について否定的な意見が出ました。しかし、私は、「今、京都工場の マインドを変えなければどうにもならない」と主張し導入に踏み切りました。
  そして、活動を開始して以降、京都工場の改善活動は評判になり、親会社からも見学に来るようになったのです。
  もう一つは、ボトムアップで行う初めての生産性アップ活動であったことです。慣れていないとはいえ問題解決を進めなくてはいけません。 改善の効果を体感できるということが、みんな一体となってやるという軌道にのせるまでは苦労しました。

伊東: 活動目標については、毎年120%という風に宣言します。それに向かって いいかげんな活動はできないなと思えばプレッシャーが出て、それがいい刺激にはなっています。ただ、活動報告会が年2回の節目で やってきますので、その資料作成は結構大変です。
  現場のメンバーたちには、発表に値する見栄えよい資料というものは上手く作れないものです。久保さんのところでも、外部に 見せるところの部分で手心を加えて資料づくりをサポートされているようです。このように納期があってやらざるを得ない環境というものは いい意味でのプレッシャーがありますね。

中林: これは伊東さんや久保さんも苦労されたと思うのですが、2008年5月から始まったキックオフ。 その後の活動で成果が出ました。しかし、2008年のちょうど今頃、例のリーマンショックが発生。当社もその余波で受注が減少しました。 そして、改善活動の生産性について本社からも問合せがありました。実際には生産性は上がっているのですが、2009年1月の報告会では それを証明できなかったことが残念でした。

伊東: そうですね、生産性指標の数字としては上がっているのですが、ボリュームが 来ていないために、それを試せない状況だったのです。本当に生産性が上がっているのか半信半疑になるのも無理はありません。

中林: その後、2009年4月以降の結果を見て、上がっていることが証明されました。伊東さんは役職としては マネージャーの立場です。マネジメントとは進捗管理の方法。しかし、改善活動はリーダーシップが中心です。メンバーに目標値を与え、 ビジョンに向かって導くこと、そして、問題に対処する方法を示唆する、これがリーダーの役割です。伊東さんや久保さんが、その役割を よく果たされたことが高い成果につながっていると感じています。また、現場の人というのは、あまり人前でしゃべる機会がありません。 しかし、発表会という場で発言することにより、かなり成長してきたと感じます。

伊東: 上手くメンバーを乗せる、やる気にさせるというのは本当に難しいと思います。 「やりたくないな」「しんどいな」というメンバーはどうしてもいますから。

久保: チーム活動では、「誰もなにもしない」ということはありえないです。 何かしなければならないというのがあって自然に自主的な活動が始まるわけです。いきなりドンと伸びるというのは難しいのですが、 じわじわと成長してくるメンバーたちがいます。そこで自分の限界を感じてセーブする人もいれば、自分自身で伸びていく人もいるのが 現状です。ただ、今は「とてもあそこまではできない」と感じている人も、これからの活動を通じて成長することを期待しています。 チーム活動という点では、役割分担をすることが重要だと感じます。

活動の動機づけについて

モチベーションアップのための報奨金制度のような取組みもされているのでしょうか。

中林: 現在、京都工場にはそうした制度はありませんが、親会社には社長賞があり改善提案を募集しています。 社長賞は毎年3~4件が表彰されますが、活動チームからも多くの改善提案を提出しています。

久保: ボトムアップ活動は、確かに労力が必要ですが、一つのチャンスを もらったという感覚があります。その意味で、社長や中林さんが報告会に参加されるというのは、自分たちのアピールができるという点で 大きな動機づけになっていると思います。活動にかける一生懸命な気持ちと自分たちが望む改善・改革を伝えたい。それが結果につながって、 ニッタのQC大会で評価されたりすると嬉しいわけです。

活動の負荷はかかっていますか。

久保: QCサークルの場合は1年半周期でしたから、一度発表すると次回までの 期間に余裕がありました。ところが、VPM活動では半年というスパンで発表の機会が巡ってきます。もっと良くしたいという欲が出てくると、 負担もかかる面はあります。ニッタ・ハースに入社したいと思った動機は、自分の意見が仕事に取り入れられる風土であったことです。 徐々に会社の規模が大きくなりましたが、自由にやれる環境は心地よいものです。VPMのようなボトムアップ型活動が根付いたのも、 そうした風土にマッチしたからかもしれません。

これからの活動に向けて

今後の活動でお考えになっていることはなんですか。

伊東: これからは普段着の活動で行きたいと思います。今までは「やらなければ」 という感じで、どちらかというと、よそいきのことばでメンバーに拍車をかけてきました。しかし、VPM活動を続けていくにあたって、 いつまでも緊張していては気持ちも身体も疲弊してしまいます。そのためにどうしていけばよいか、というのが現在の課題です。
  従来のQCサークルでもそうですが、本当は普段の活動として取り組むべきなのですが、発表直前の一週間位になってあわてて やるという感じになっていました。標準化というキーワードで進めてきたなかで、VPM活動そのものも標準化したいなと思います。

中林: そのためには少しマインドを変えた方がよいでしょう。もともと当社では役職ではなく、さんづけで 名前を呼びます。そういう意味でも少しリラックスしてください。

将来のビジョンについて

中林: 他にも、以前は、お客様のところでヒューマンエラーがらみのクレームが出たのですが、この2年はまったくないというわけではありませんが相当少なくなっています。これも製品やサービスに対する意識が向上した結果であると考えています。
  当社のビジョンとしては、当社ではCMP事業と呼んでいる半導体デバイス部門に加えて、SDO事業のシェアと売上拡大に傾注したと 考えています。そして、その事業は京都工場がメインになりますので、今回のコンサルティングを通じて学んできたVPM手法等を活用 しながら他社との差別化を進めていきたいと考えています。

ニッタ・ハース株式会社 京都工場様

本日はありがとうございました。


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