国内コンサルティング事例

美建工業株式会社様

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「3K(改革・改善・変える)プロジェクト活動」を通じた
『工場経営ができる人財』の育成

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 多くの製造業で工場を統括するマネジメント層の人材育成が課題となっている。工場のマネジメント人材には経営視点で「いかに考え、どう行動するのか」ということが常に求められ、部門単位ではなく全体最適での判断を行うための体系立った知識が必要となるが、これまでの日本の製造業では歴代前任者の経験則にもとづいた「カン」や「コツ」の伝承といった形で、工場経営のノウハウが引き継がれることが大半であったように思う。ただ昨年からのコロナ禍以降、より不確実性が高まった予測困難な世界では、これまでの考え方にもとづいた行動だけでは、変化に対応しきれない局面が出てくることが想定され、新たな時代のものづくりで経営に貢献する生産部門を導くマネジメント人材を育成するためには、既存の育成方法を見直して、より戦略的な人材育成システムを導入することが求められる。この製造業全体の課題ともいえるマネジメント層の人材育成に取組むのが、広島県福山市を本社とする美建工業株式会社である。同社では創業以来、生コンクリート及び各種コンクリート二次製品を主力として経営を推進し、広島県内の多くのビッグプロジェクトにも関わるなど、時代と顧客の要請に応じた、高品質な製品の提供により、着実な成長を果たしてきた。今後先行きが不透明な状況で、次世代においても同社が成長の道を歩み続けるために不可欠な「工場経営が出来る人財」の育成はいかにして進められるのか?関係者へのインタビュー、中間報告会のレポートを基に、同社の取組みを「工場マネジメント層育成」のケーススタディとして紹介する。

大和工場開設により広島県のビッグプロジェクトへ製品を供給。成長の礎を築く

 美建工業株式会社の創業は昭和42年(1967年)。当初は現在の本社所在地である広島県福山市の駅家で、コンクリートのブロックや水路を作っていたが、創業から5年ほどが経過した頃、現会長の高田忠義氏は近隣で幹線道路と大きなスーパーマーケットの誘致計画があることを知り、同社敷地内に生コンクリートを製造する工場を建設し、その誘致プロジェクトへの製品供給を行うことになった。これが同社の本格的な事業展開スタートにつながったのだが、生コンクリート工場を建設したことで、二次製品をつくるスペースが無くなってしまったため一時、二次製品の製造は中断していたという。しかし生コンクリートは製品の性質上、供給地域に工場があることが必要で地理的な制約が大きいため、今後の企業の成長に向けては、やはり二次製品の製造が必須との考えから、創業地とは別の場所に二次製品を作るための土地を探すことになり、その結果本格的な生産拠点として1980年に服部工場が開設されることになった。
 その後同社の経営にとって大きなターニングポイントとなったのは、1980年代に計画されていた広島大学の移転や広島空港の建設、山陽自動車道の延伸など数多くのビッグプロジェクトへの参加だが、これらのプロジェクトへの製品供給工場としては、既存の服部工場ではあまりにも規模が小さく対応出来なかったため、広島県の「へそ」と言われる大和での工場建設を決定した。周辺にはほとんど産業らしきものがない状況だったが、山林を切り開いて開発し、当時の同社にとっては相当な投資を行い、1982年に大和工場を開設した。以降大和工場を拠点に前述のビッグプロジェクトへ次々と製品を供給して、そこで得た利益をその後の尾道や広島などの工場建設に活用し、企業規模の拡大につなげていった。現在代表取締役を務める高田浩平氏によると「運にも多少恵まれたと思いますが、チャンスを確実に捉えた先代の経営手腕は見事だったと思います。また大和工場開設が生産に関するターニングポイントだったとすると、会社経営方針の転換点は私が責任者として1995年に東広島支店を開設したことだと考えています。先代である父は創業以来、製品をできるだけ安く作って、お客様に喜んでいただくことに主眼をおいたものづくり経営を行っていましたが、時代の変化で、お客様から選ばれる企業の基準が変わってきていました。より新しい製品を作ることと、そのPRや営業支援ということも必要となっていて、そのために東広島支店を当社の新しい経営を推進する拠点として、様々な取組みを進めて行くことになりました。現在の営業の仕組みなどもこの時に作ったもので、私自身が大学で専門的に学んだことを活かすと共に、学部の後輩など数人をリクルートし、彼らと共に現在の経営基盤を確立していきました。新製品の開発などもこの場所で行っています」とのことであった。そして大和工場の開設を経て、企業としての大きな成長を果たした同社が、更なる成長を目指し開設したのが、今回紹介する「3K(改革・改善・変える)プロジェクト」の舞台となった三次工場である。

主力工場として永続的に利益を創出するための三次工場の課題

 現在同社の主力工場として製造部門の中心を成す三次工場は2001年に開設。大和工場を上回る大規模工場であり、場所的には中国縦貫道で中国地方各地への販売も可能ということで選ばれたとのこと。今回の3Kプロジェクト活動は2018年12月からスタートしたが、高田氏によると当時の三次工場には様々な課題があったという。「まず整理整頓が出来ていないため、どこに物があるのかわからないような状況でした。また生産効率が良いのか悪いのかを判断できる明確な指標もありませんでした。これまで専門的な指導者がいたわけでもなく、創業者が示したやり方を歴代受継いでいくスタイル、いわゆる我流だけでここまでやってきたのですが、自分としてはどこかで当社のものづくりのスタンダードをつくる必要があると考えていて、この課題を何とか解消しないと、これからの工場運営は成り立たないという危機感を持っていました。三次工場では以前から生産性が問題視されていたのですが、当社には生産性向上のためのエキスパートがいないため、生産性向上のためには何をどうすれば良いのか全くわからない状況でした。これらを踏まえて外部のコンサルタントに入ってもらって、ものづくりのスタンダードを一から勉強することが必要なのではと考えていました」高田氏の危機感と同じものを、同社取締役製造管理部長である高野眞行氏も感じていたという。「2018年の夏に広島県で大きな災害があって、今後災害特需への対応が予測される中、三次工場の状況に手詰まりを感じていました。一人ひとりは一生懸命やっているのですが、その努力が報われるほどの業績にはなっていませんでした。また時代を反映したものですが、以前は少品種大量生産だったものが、お客様からの要望を受けて、小ロットで多品種の新製品をどんどん導入していくことが必要となり、色んな製品を一つのラインで作るような複雑な状況となっていました。ちょうどその頃は主力工場としての役割を大和工場から三次工場へと移行している途中で、私の印象では当時の三次工場は一人ひとりの動きが空回りしていて、全体としてのまとまりがない状況でした。そのような時にタイミング良くテクノ経営さんから1日工場診断というシステムの案内があったため、当時の三次工場長とも相談の上で診断を受けることにしたのです」同社の今後の成長を担う三次工場に対して経営層である高田氏と高野氏の危機感は、1日工場診断という形で三次工場の現状分析と改善提案へとつながったのである。

1日工場診断を経て提案された「工場経営ができる人財」の育成

 1日工場診断の印象として高野氏は「当日はずっと付いていたわけではないのですが、コンサルタント2名とコーディネーター1名の方に工場内の各所を見ていただきました。やはり自分達が普段見ている中では気がつかないような指摘が沢山あって、例えば現場の従業員が自分の気付きを箱の裏にメモ書きをしていたのですが、これではせっかく個人で得た情報が全員で共有できていないとの指摘がありました。またそれまでは私自身も5S活動が生産効率の改善につながるとはあまり思っていなかったのですが、5S活動をしていくことでおのずと生産効率化につながるし、従業員への意識付けにも非常に重要という指摘もあり、そのあたりが当社には一番抜けている部分だと感じました。また生産効率の改善は結果であって、まずは従業員の教育が必要であり、各自の意識レベルが上がれば、生産効率も上がっていくということが提案内容に書いてあり、色々お話をする中でテクノ経営さんのコンサルティングに魅力を感じたため、ぜひこれを導入して取組みたいと思いました」1日工場診断の結果と今後の改善提案を受けて、高野氏は当時の三次工場長と相談してコンサルティングを導入するための社内調整に動かれ、費用面とコンサルティングに対する従業員の受け入れという2つの側面の検討を踏まえた上で、最終的に代表取締役の高田氏の了承を得てコンサルティングの導入が決定した。

3Kプロジェクト活動の取組みに対する従業員の意識と行動の変化

 高野氏によると、三次工場でのコンサルティング導入当時、従業員は自分が一生懸命やっていること自体が指標になっていて、それが全体として見た時に利益につながらないことでも、自分のやり方を押し通してしまうというような風潮があったという。そのため一定数の従業員にとってはコンサルティングの導入は受け容れがたい部分があり、3Kプロジェクト活動の開始当初はかなりの抵抗感があったとのこと。ただ活動を進める中、まず工場内の見た目がきれいになり、整理整頓されたことで物が取りやすくなり、在庫の見える化により発注がしやすくなる。そういう変化を目の当たりにすることで納得感が出て来て、当初受け入れなかった従業員にも3Kプロジェクト活動の取組みを進めていこうという雰囲気が生まれてきた。それが活動1年を経過した頃のことで、その頃には誰が見ても三次工場は変わったという状態になってきていた。「社長が一番びっくりされていて、最近ではコンクリートの製造工場じゃないみたいだと言われています。それぐらい工場内が5S活動で整理整頓されて来ていて、私自身もこれまで勉強会や講習会などを通じて、頭では理解していたつもりだったのですが、それを実際の現場にどう落とすのかという方法がわかりませんでした。ただ当社はコンサルタントが1回説明すればすぐにやってくれるような現場ではないので、担当の工藤さんは相当苦労されたかと思います。そのような根気強い指導のもとで、取組みが一番遅かった班もようやく2年目で、自分の班だけが取り残されている状況に気が付いて、これまでより積極的に取組みを進めるようになりました。そのあたりも工藤さんがうまく雰囲気づくりをしてくれた結果だと考えています。当初は対象の7セクション全部がいやいや活動に取組んでいた面があったのですが、今は自分達でやっていこうという気持ちが多少出てきたかなと思います」3Kプロジェクト活動を通じた三次工場の変化について高田氏は「製品のストックの仕方が劇的に変わりました。おそらく今まではものを探すのにすごく時間がかかっていて、それで生産が止まったりする状況があったと思います。それが今はきれいに陳列されていて、見た目が全く違います。生産性が上がったのもやはりそういうところが要因だと思います。また今は製造計画というものがあり、それに対して足りているのか、足りていないのかということをシビアに見ています。計画に基づいて各人がやらなければならないことを把握しているので、その発言内容も変わってきました。そういう三次工場の良い流れを早く水平展開して、他工場のレベルも上げていかなければならないと考えています。三次工場での報告会や発表会で従業員が発表している姿を見ていて、こういうことが出来る人間だったのかとか、こういうことが出来る会社になって来ているんだという印象を持っています。以前はそんなことが出来る工場ではありませんでしたので、この変化は会社にとって本当に大きいものだと考えています」

活動による社内連携の進化と2年間の総括

 三次工場ではこれまで従業員に対する評価基準や生産目標が数値化されていなかったが、コンサルティング導入以降は数値的な指標が出来たため、客観的な評価ができるようになり、それが従業員の気持ちの変化につながっているという。仕事を進める上で具体的で色々な指標があって、自分の班が他の班と比較して低いとか高いということが客観的に分るため、競争意識による良い効果が生まれているという。
 一方工場内での連携という視点では、これまでは自分の班のことだけやってしまえば、隣の班がどれだけ忙しくしていても、他所は他所というスタンスだったものが、3Kプロジェクト活動を通じて全体としての共通目標が出来て、その達成が自分の班の活動だけでは無理なため、連携を図りながら、他の班がやっていることを見て、自分達の活動にも取り入れたり、他の班の仕事がどんな内容なのかということにも目が行くようになってきているという。高野氏は「競争環境が阻害要因になることもありますが、今は各班が競争しながらも、コンサルタントといういわば共通の敵に対して横で繋がって対抗するという団結力となっているように思います。当然まとまっても工藤さんにはなかなか勝てませんが、共通の課題に対しては5人が束になって向かわないと難しいということが分ってきて「競争」と「協調」がバランスよく実現できているのではないかと思います」と現在の活動により係長同士の新たな連携が生まれていることが大きな成果の一つだと評価されている。また2年目までの3Kプロジェクト活動の総括としては「5Sや現場改善などで数値的にも成果が残せています。ただ今の結果はあくまで工藤さんの支援で実現出来ていることであって、社内でも説明したのですが、最初の2年は導入期で、次の2年が定着期となり、この2年で定着させないと導入期の2年が全部無駄になってしまいます。やはりまだ従業員の中にも、楽をしたいという気持ちに流れる部分がありますし、本当の意味で自ら率先して取組みを進めるというふうにはなっていません。当初の2年間で色んな手法を学んで、結果も出せましたが、それはコンサルタントの支えで出来たことであり、現在はまだその段階だと思います。そのため3、4年目の活動では、ある程度独り立ちが出来るようにしたいと考えています」

新たな取組みとしての次世代工場長育成

 導入期の2年目の活動を終えて、三次工場では定着に向けた3年目の活動がスタートする中、同時に新たな取組みとして「次世代工場長育成」のための研修活動が始まっていて、三次工場も含めた5工場から選抜されたメンバーが今後2年間、工場経営に関する知識やノウハウを学ぶことになるという。この取組みがスタートした背景としては、同社は従業員の年齢構成に課題があって、ベテラン社員と若手の間のミドル層がほとんどいない状況になっているという。本来あるべき年齢構成で工場が組織されていれば、次の世代へとバトンを繋ぎながら、工場を運営していくことが出来るが、現状ではそうなっていないため、若い世代を引き上げて次世代工場長に育成していく必要があり、現在研修に参加している20代から40代前半までの工場長候補者を早急に育てなければならないという。今後の取組みについて高野氏は「自分達は時間をかけて現場で経験を積むことが出来ましたが、今選抜された人間というのは若いため、当然まだ充分な経験は積めていません。そういうことから研修では色々なことを疑似体験させて欲しいとお願いしています。自分達が10年かけて経験したことを1、2年で疑似体験でもよいので経験させたい。それによって管理職としての自信をつけて欲しいと考えています。予定として1年目は知識や技術を学んで、2年目は実践ということを考えています。現在の活動は月に1回、半日ということになっていますが、本当はもう少し時間をかけたかった。本で読んで習得できるものは本を読めばいいし、憶えて何とかなるものは憶えればいいのですが、人を使う立場になっていく時、人はただ言えば動くわけではないし、怒ったら動くわけでもありません。また役職で動かせるわけでもない。最終的には信頼関係が築けなければ人は動いてくれません。ましてやこういう業界なので、年齢が上の人に対しても自分の言うことを聞いてもらう必要もあります。私は常々若い人に「あいつが言うのだからやってやろう」と思ってもらえるような人間にならないと管理職としては難しいということを言っているのですが、そういう学びもこの研修で経験を積みながら、当面2年間の活動を行う予定です。ただ実際は2年で終われるとは全く思っていません。こういう取組みを脈々と続けていくことで人材が育っていき、会社も磐石になっていくのではないかと考えています。また研修には三次工場も含めた5工場から選ばれた人間が参加していますが、やはり2年間先行してコンサルティングを受けている三次工場の人間は現状の知識として他工場からの参加者を上回っています。しかしこれまでの2年間はあくまで一つのセクションの人間としてコンサルティングを受けてきたのであって、今回は工場の経営という視点で学ぶ必要があるため、この研修では新たな気構えで臨む必要があると思います。現在は5Sや安全管理などを課題として学んでいるところで、来年はそれを各自の案としてそれぞれの工場に提示して、実際に動かしていく予定ですが、現場ではかなりの反発があると思います。それで壁にぶち当たって工場運営の難しさを実感するはずで、2年目の取組みは大変になると思いますが、体験を通して成長して欲しいと思います」高田氏もこの取組みには大きな期待を寄せられているという。「三次工場についてはコンサルティングに入っていただいて3Kプロジェクト活動が進んでいますが、これを各工場に水平展開して行くことを考えた時、果たして今それが出来る人材が各工場にいるのかという議論になりました。検討の結果、現状のままでは難しいということから、まずは各工場の経営を任せることのできる人間を育てることが急務だということになり、各工場から選抜した人材で研修を行うことにしたのです。現在当社の工場経営を行うマネジメント層が薄いことについては、人材戦略上の問題です。これまで新卒で募集してきたのは、主に営業と間接の人材であり、製造に関しては中途採用のみとなっていて、将来の管理職というような視点での採用を行っていませんでした。これについては途中から私も危機感を持っていて、7、8年前からは製造の人間も新卒で募集するようになり、その人間が今最も若い世代として次世代工場長育成プロジェクトのメンバーに入っています。私が社長になって13年になりますが、管理職としての製造の人材の手当てが少し遅れたことは迂闊だったと考えています」

今後のビジョン

 三次工場での2年間の3Kプロジェクト活動により、従業員の意識と行動には今後の成長に向けたポジティブな変化が現れ始めている。次世代工場長育成の取組みも含めて、この流れを更に加速させ、企業全体の力に変えていくために、高野氏は自ら考え、行動する製造部門となることが必要だという。「自分達で課題を見つけてそれを解決できる『自立できる工場』にならないと発展して行かないと思います。また今後はより厳しい経営環境が想定される中で、会社として生き残っていくためには、時代の変化に柔軟な『多様性に対応できる工場』になって行かなければならないと考えています」コロナ禍を経てなお不確実な時代が今後も続く中、高田氏は製造部門には会社をリードしていくような発信力を求めたいという。「コロナ禍がまだ収束しない状況で、今後公共工事は少しずつ減っていく予測をしていますが、災害など人命に関るプロジェクトはそれほど予算が減ることはないと思います。また民間需要に関しても他社との差別化を図るために、より良い製品作りが必要となります。そういう今後の経営環境の予測にもとづき、工場もそのような流れに対応できるような工場になって行かなければならないと考えています。基本的なこととしては、より効率的で不良品を出さない工場になっていく必要がありますが、もっと工場自らが発信する形になって行くことが必要だと思います。営業部門が求めているものを効率よく作っていくこと、それとは逆にこういう製品であれば効率よく作れるので、こういう製品を売った方が良いのではというような工場からの発信。その両方ができる工場になっていって欲しいし、それが私の考えている工場の理想像です」

3Kプロジェクト活動 中間報告会レポート

 2021年3月18日(木)美建工業株式会社の三次工場内会議室で「3Kプロジェクト活動 報告会」が開催された。三次工場 工場長の稲岡克敏氏からは、三次工場の生産量は2018年度より2020年度まで対前年比で拡大して推移していること、人員的には変わらないが増産が出来ており、各人の生産性も各工場で目標をクリアしていることなどの説明が行われ、今年の3月からの新しい取組みなども紹介された。続いて、1、2、3、5、6工場、品質保証、製造管理の7セクションのリーダーから、データに基づいた現状分析と、課題解消に向けた具体的な取組みと目標設定、今後の取組みなどについて簡潔かつ、わかりやすい説明が行われ、各セクションが自発的に活動に取組み、より進化していくための意欲を感じることができた。また報告資料についても見やすく、理解の進むレイアウトで作成されており、報告会のレベル向上に大きく寄与するものとなっていた。各セクションの報告終了後、弊社コンサルタント工藤仁からは「5Sの維持管理が思った以上によく出来ている。これは皆さんの意識向上の賜物。また報告に皆さん自身のアイデアが沢山盛り込まれるようになってきており、活動当初から考えると大きな進化だと思う。新しい取組みとして20項目のテーマから各班で選定していただいた目標については、ぜひ8月までに達成して、さらなるレベルアップに繋げて欲しい」とのコメントがあった。代表取締役 高田浩平氏からは「人員を増やさない中、生産量が増えているのは、一人ひとりの生産性が上がっているからであり、各人の努力の積み重ねだと思う。三次工場は現在の当社工場でまちがいなくトップの工場。さらに磨きをかけて、それを各工場に水平展開して欲しい」とのコメントがあった。報告会全体の印象としては、各発表者の持ち時間が短い中、出来るだけ多くの情報を共有しようという意識が見られ、事前にリハーサルをしっかり行うことで、時間配分も考慮したレベルの高い発表になっていると感じた。

中間報告会を終えた感想 (製造部 三次工場 工場長 稲岡克敏 氏)

 コンサルタントの工藤さんが言われたように5Sの維持管理が本当に良く出来ています。3年前この工場では「出来ない」ということが当たり前になっていて、新しい製品の注文が来ても、出来ないことへの言い訳が先に出てくるような状況でしたが、今は出来ないではなくて、どうやったら出来るかという考え方に変わってきました。また本日の発表資料はスタッフの女性社員が作成したものですが、各チームのリーダーの要望を取り入れた素晴らしい資料となっていました。

本日発表を行った7セクションにも品質保証や生産管理というスタッフ部門が入っていたのですが、製造の現場だけでなく三次工場全体でレベルを上げて行こう、良い取組みにして行こうというモチベーションが感じられます。当社トップの工場であるというプライドが、三次工場全体に感じられるようになって来たことは頼もしい変化です。3年間での大きな進化としては数値化、データでの情報共有も欠かせない視点で、各人の印象や体験に基づいた言葉しかなかった3年前から、現在はデータに基づいて次の施策を検討するという行動になってきました。     
 新たな取組みとして進めている次世代工場長の育成は、2年間である程度の成果を出す必要がありますが、私は責任感とやる気があれば出来ると思っています。何か起きた時の管理者としての判断力を養う教育が特に重要で、今は5人の選抜者でスタートしていますが、これが礎となって正しい考え方に基づいた製造のやり方が引き継がれていくことで、全社のレベルアップに繋がって行くと思います。
 また現在三次工場内の5Sが維持出来ているのは、各班が協調しながら競争していることによるもので、他の班に負けたくないという気持ちを各リーダーが持っています。現在は三次工場内の競争環境が良い流れをつくっていますが、将来的には全ての工場同士が競い合うことで、本当に楽しい競争になるはずで、今はそのためのベースづくりの時期だと捉えています。

取材にご協力いただいた方

美建工業株式会社
代表取締役                高田浩平 氏
取締役製造管理部長 兼務 出雲工場 工場長  高野眞行 氏
製造部 三次工場 工場長          稲岡克敏 氏



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