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ホクト株式会社様

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生産性向上活動の全国横展開を目指して
静岡きのこセンターにおけるモデルセンターの構築~

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 本ページでは、ホクト株式会社様に対するコンサルティング実績をご紹介しています。
 「きのこのこのこげんきのこ♪」スーパーマーケツトの野菜売り場で流れる「きのこの唄」。楽しげなメロディに惹かれて、エリンギ、まいたけ、ぶなしめじなどを買い求めた経験がある方は多いのではないだろうか。2002年の社名変更に伴い制作されたこのCMソングはホクト株式会社の企業認知拡大、さらには幅広い層における健康食材としてのきのこへの親近感醸成にも大きな貢献を果たしたと思われる。1964年の設立以降、きのこの研究・開発・生産・販売を一貫して手掛ける日本唯一の「きのこ総合企業」として、独自の基盤を確立してきた同社では、更なる発展を目指して、きのこを使用した加工食品事業への取組や、北米・アジア市場への販路拡大等グローバル展開も推進し、世界的な視野に立って挑戦する研究開発型企業を目指している。
今回の企業レポートでは全国のきのこセンターでの横展開を目指した、ホクト株式会社静岡きのこセンターにおける生産性向上の取組みについて、2018年11月に行われた「中間発表大会」の内容と共に紹介する。
(※ASAP 2019年 1号より抜粋)

改善活動導入の背景

 ホクト株式会社では、より新鮮なきのこを届けるため「消費地生産」にこだわり、全国20拠点、32センター(平成30年6月現在)を設立し、生産力強化と輸送距離、流通時間の短縮を図っている。その中にあって全国横展開のモデルセンターとなるべく、昨年よりコンサルテイングを導入し、生産性向上に向けた改善活動を実施しているのが、静岡きのこセンターである。
 この活動のキーマンで、全国横展開の伝道師的役割を務められている静岡きのこセンター生産本部第六生産部部長の山口氏によると、静岡きのこセンターで改善活動がスタートした経緯は、山口氏が弊社コンサルタント沢柳のセミナーに参加したことが起点となっているとのこと。セミナーで接した沢柳の現場や実際に即した考え方は、山口氏がこれまで受講された研修やセミナーにはなかった新たな視点であり、この改革の方法論をぜひ生産部門に導入したいとの思いから、静岡きのこセンターでテクノ経営の『1日工場診断』を受けることとなった。
 その結果コンサルタントから提示された内容は、生産部門共通の課題である設備老朽化によるトラブルについて、調整ではなく基準に合わせることでトラブルを削減でき、基準をしっかり決めることで技術伝承も図っていけるという提案であった。山口氏はこの改善策を導入し、将来的に全国横展開を図ることで、生産部門全体の成長につながると確信し、専務取締役生産本部長小松氏に静岡きのこセンターでのコンサルテイング導入を直訴され、その結果、まず静岡、赤沼のきのこセンターから活動を開始することが決定した。このようにしてコンサルタントへの大きな期待感と共に、2017年5月より静岡きのこセンターにおいて「GF1O」と名づけられた改善活動がスタートすることとなった。

地域限定社員と共に進める改善活動

 活動名称の「GF1O」には、原点復帰と10%生産性向上を目指し、全国横展開のモデルケースになるとの強い想いが込められている。原点復帰とは老朽化が進んだ設備をあるべき姿に戻すことを意味し、設備の基準を決めることで設備トラブルを削減するという活動の意図をセンター全員が「GF1O」の名称のもとで共有した。また活動スタートにあたって、全社員参加で行われたキックオフミーテイングでは、“ビジョンを描く3つの質問”について全員で考え、社員自身、職場、工場全体について、それぞれが理想とするビジョンを描くことで、活動を「自分ごと化」し、より積極的な参画を促すことにつなげた。静岡第一きのこセンター所長の白井氏によると、活動スタート時、指標づくりのために価値作業の洗い出しを進める中で、コンサルタントと一緒に現場を回って、社員の目で危険な箇所の洗い出し、地域限定社員も会議に参加して、ムダ作業、価値作業の洗い出しをすることが出来たのは非常に良い取組みだったとのこと。この取組みにより地域限定社員も含めた全社員の中で、価値作業をもっと増やしていこうという気持ち、考え方が定着するきっかけになったという。
 白井氏と同様、山口氏も地域限定社員と共に活動を進めることが重要と認識されており、そのため昨年からミーテイングには必ず地域限定社員も参加してもらい、職場環境を良くするための取組みを行っている。その中で特に大事にされているのは、地域限定社員から出た意見に対するレスポンスの早さであり、出来る限り早く答えを出して、改善できるものはすぐに改善し、できないものは何故今できないのかという理由をきちんと説明することで、以前より地域限定社員が意見を出しやすい環境を整えられている。
また当初は社員だけで作成していた作業標準書も、地域限定社員を入れて作成する大事さに気づき、現在では地域限定社員も一緒に作成を行なっており、実際に作業をする地域限定社員の視点が重要だと実感する機会が多いという。
 またこれら地域限定社員と、社員のコミユニケーションを、さらに活性化させる取組みとして行っているのが「すぐ行くさん制度」と「ありがとう評価表」。「すぐ行くさん制度」とは、地域限定社員の困りごとの連絡に対し、社員の中から持ち回りですぐにトラブル対応を行う人を決めて、”すぐ行くさん”と命名。すぐ行くさんが呼ばれたらすぐに行けるように、他の社員が仕事を持ち合う制度。また「ありがとう評価表」はエラー解除や設備メンテなど社員が行ったことに対して、地域限定社員の感謝の気持ちを正の字で記入して「見える化」するための表である。山口氏はこれらの活動を通じて『地域限定社員の言える化、地域限定社員の声に対する、社員の聞ける化』が進み、以前の社内の雰囲気とは大きく変わってきたと感じているとのことであった。

全国横展開に向けた取組み

 地域限定社員を巻き込んだ活動にすることで、企業風土の変革にも成果が見られるなど、より質の高い活動を目指した取組みを推進している静岡きのこセンターであるが、活動当初はコンサルテイング導入について反対意見も少なくなかったという。山口氏は常日頃から静岡きのこセンターは生産部のモデルになっていくということを社内で明言されており、静岡の活動がモデルとなり、生産部全体に広がっていくようにと、他センターでのミーテイングにも参加され、静岡きのこセンターの実例にもとづいて改善活動の趣旨を説明し、共感を得られるような進め方をされている。また活動はステップを経ていく必要があることから、まずーつでもいいからやっていこうというように、活動の敷居を低くするような進め方もされており、様々な働きかけで全国横展開の促進を図っておられる。
 さらに他センターの進み具合を社内システムのデータで把握できることから、あまり活動が進んでいないセンターには、状況を確認してアドバイスをしたりして活動の推進をサポートすることもあるとのこと。これらの取組みの結果、当初は全国のセンター所長から、活動への肯定的な意見は3割程度だったが、現在は改善活動をして良くなって来たという意見が6割ほどになってきており、活動2年目に入り、だいぶ横展開としてつながってきたと感じているという。静岡きのこセンターでの取組みは、月2回の管理者会議の中でもプレゼンしており、自分たちも静岡と同じようにやってみようと積極的に動いてくれる管理職のいるセンターは活動が前に進んで行っているとのことである。
 当初生産部内でも導入への疑問・反対意見が多い中、自らがモデルとなり、成果を創出することで、賛同者を拡大してきた静岡きのこセンターは今後も全国横展開をリードしていく役割を期待されている。

活動の現状

 現在までの活動を振り返って、活動推進に苦労した点について白井氏によると、センター内各部署の人員規模や担当業務内容の違いにより活動の進捗に差が出てくるため、全ての部署の足並みを揃えることは困難な作業であるという。また全国横展開がテーマではあるが、静岡でも第一、第二それぞれのセンターで部署によって共有できるところと、できないところがあり、その調整も必要となる。さらに日々の生産業務、経費削減の状況において、やはり残業が増えることもあり、活動目標である残業時間の短縮との調整も難しい作業という。ただこれまで、こういう取組みが無かった中で、活動スタート時のなりたい姿を描く事から始まり、ポイントポイントで的確なコンサルタントの指導を受けることができる静岡センターは、他センターと比べて恵まれた環境であり、コンサルタントのサポートを力強く感じているとのことであった。
 また人材育成の面における活動の効果について山口氏は、水野社長のボトムアップ型の組織に変えて行きたいという意向から、地域限定社員の『言える化』、社員の地域限定社員の声の『聞ける化』をここ5、6年の間で進めており、地域限定社員、社員共に底上げが進んでいるとのこと。また改善活動で中心的な役割を担う各センターの所長は将来のリーダー候補として全社の中でも重要な人材で、この活動を通じた個々の更なる成長にも期待が寄せられているとのことであり、改善活動が生産性向上を通じて人材育成の実現にも寄与していることがわかる。

今後のビジョン

 静岡第二きのこセンター所長の橋本氏によると、活動1年目の上半期は手探りの状態ではあったものの、コンサルタントにアドバイスをもらいながら順調に活動は推進していたが、下半期に本来の生産活動が原因で少し活動が停滞してしまったという。そこで2年目に入って1年目下半期の失われた時間を取り戻そうと、活人化の意義を再燃させたところ、「GF1O」活動に真剣に取組もうという社員が増え、実際の成果が出たことによって、やらされ感ではなく自分が主役という取組みになってきて、活動の質的向上が成されてきたという。また活動2年目に入って作業時間の短縮が去年と比べて45分短縮を実現出来ており、早く帰ることが当たり前になってきて、余分な作業がなくなり、工程に余裕が出たことで、生産の品質向上にもつながるなど良い効果が生まれているとのことであった。
 今後は2年目の活動の流れを維持し、現状からのより良い変化をさらに促進していく計画であり、2年目の上半期に成果が出たことで、活動の重要性を全員が理解し始めており、「手を変え品を変え」社員に対し常に活動の意識づけを行ない、「GF1O」の実現を目指して、静岡きのこセンターの改善活動は、全国横展開のモデルケースとなるべく更なる変革と発展を続けていく。

中間発表大会レポート

 2018年11月14日、改善活動2年目の中間発表大会が開催され、全国各センターの代表より、活動取組内容、他センターの取組にヒントを得て実施した取組(ビフオーアフターを数字でまとめ)、活人化の具体事例、問題点など多岐に渡る改善活動の取組状況が発表された。
 発表大会冒頭、専務取締役生産本部長小松茂樹氏から「昨年より静岡、赤沼、今年度より更埴、香川センターで改善活動を導入し、全国横展開を目指して活動を進めてきたが、実際には全てのセンターが同じように進捗しているわけではなく、今日の中間発表大会で他のセンターの良いところはしっかり自分のセンターに持ち帰って活動に活かして欲しい。」と今回の中間発表大会開催の趣旨についての説明があった。また改善活動導入の経緯については「当社を取り巻く経営環境は非常に厳しい状況にあり、その主な要因は少子高齢化による食品消費人口の減少、きのこの販売価格の大衆化にある。そういう中で原価を少しでも下げていくことは生産部門の大きな課題であることから、今回テクノ経営にコンサルテイングを依頼し、まず静岡、赤沼で取組みを始めた。当社の生産設備は古く、20年を超えるセンターがこれから毎年出てくるが、工場を回っていて感じるのは、そういう状況で機械が古いから仕方ないという雰囲気。しかしテクノ経営からの提案はいくら機械が古くても改善によってしっかりと成果を創出することが出来るというもの。またこの活動の良いところは現場、地域限定社員を巻き込んで、現場の声を拾って、社員一人ひとりの問題を解決していくことで、生産性向上、コスト削減にもつなげる仕組みとなっていること。今日ここに参加している人は活動の統括責任者として、全員にしっかりと役割を分担させて、センター全員でこの活動に取組んで欲しい。今日の中間発表大会をきっかけにして、各センターのいろいろ良いところを吸収して、自センターに持ち帰ってそれぞれの活動に活かして欲しい」との説明があった。
 続いて行われた全国16センター活動代表者からの発表は、動画などを活用したレベルの高いもので、具体的な取組み内容が理解しやすいものとなっていた。また発表後の質疑応答も活発に意見が交わされ、他センターの活動の良いところを吸収し、自センターの活動に活かしたいという参加者の強い意欲を感じることができた。
 活動のモデルケースであり、全国横展開をリードしていく存在である静岡第ーセンターの白井所長からは、標準なくして改善なし、標準を変えて効率化していくことの重要性や、原菌管理課での横展開、色々な機械のサイクルタイム測定による改善などの具体的な事例が発表された。また他センターの良い取組みを積極的に取り入れることが出来ていなかったこと、時間の削減は前期と比較してあまり進まなかったことなど今後の課題についても言及があった。そして今後は頻度の少ないイレギュラートラブルの標準書作成をもっと進めて、トラブルに強いセンターを目指し、ムダな残業をしないようにしようというビジョンも提示された。さらに、作業に関する標準書の整備、他センターの取組みの積極的な導入、安心安全、事故の無い環境づくり、全国横展開を常に念頭においた展開など、静岡第ーセンターにおける今後更なる活動の進展、活性化が期待される発表内容となっていた。

取材後記

 まず冒頭に本取材にご協力いただいた、ホクト株式会社専務取締役生産本部長小松茂樹氏を始めとした関係者の皆様に心からお礼を申し上げたい。今回の取材では活動2期目の中間発表大会に参加させていただき、活動推進に向けた各センターの意気込みやビジョンを直接お聞きすることが出来、より臨場感のあるレポートをお届けすることが出来たのではないかと思う。また改善活動の全国横展開を目指した活動推進のリーダーである静岡きのこセンターでの取材では、生産本部山口部長のお言葉から、この活動がホクト株式会社の今後の成長に大きく寄与するものであり、そのためには、全国各センターの足並みを揃えて、レベルアップが必要との強い信念を感じることができた。今後も活動の更なる拡大と深化を目指したホクト株式会社生産本部の変革への挑戦に注目し続けていきたいと思う。

取材にご協力いただいた方

ホクト株式会社
生産本部 第六生産部 部長    山口訓之氏
静岡第一きのこセンター 所長  白井敏晴氏
静岡第ニきのこセンター 所長  橋本徹氏



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