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アルメタックス株式会社様

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「業界随一のものづくり」を目指して
未来創造のための滋賀工場改革

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 本ページでは、アルメタックス株式会社様に対するコンサルティング実績をご紹介しています。
 複雑・多様化する顧客・市場のニーズ、グローバル化の進展などによって、常に変化する需要にいかに対応していくか。これは現代のものづくり企業に共通の課題であり、近年では、多品種少量生産でも大量生産並みの生産性を実現するマスカスタマイゼーションへの対応が求められるようになっている。
 こうした状況のなか、大量生産によるコスト競争に巻き込まれず、独自の強みを生かしたものづくりの実現を目指した活動を展開するのが、住宅用建材メーカー・アルメタックス株式会社(以下アルメタックス社)だ。
 同社では創業以来、多様な顧客ニーズにきめ細かく対応するため、多品種少量生産体制を推進し、住宅建材分野だけでも15 万種を超える製品を完全受注生産している。
 今回の企業レポートではアルメタックス社の「業界随一のものづくり」実現に向けた取組みを、今後の製造業を取り巻く環境変化に対応するための「変革」のケーススタディとして、関係者へのインタビュー等をもとに紹介する。
(※ASAP2019年 2号より抜粋)

改善活動導入の背景
「窓」を中心に住宅建材メーカーとして独自のポジ ショニングを確立

 アルメタックス社の設立は1969年。今年2019年には創業50周年という記念すべき節目の年を迎える。創業以来、高級住宅用意匠窓・機能窓のパイオニアとして、より快適で美しい住環境の創造に貢献し、同社の製品は窓を中心に、住宅開口部にかかわる建築部材のあらゆる分野に広がっている。またアルミニウムの高い再生利用能力を活かしたリサイクルにも積極的に取り組んでいる。
 その中で、今回改善活動の舞台となった滋賀工場は1978年に開設され、全国に4工場あるアルメタックス社の生産拠点のマザー工場とも言える存在であり、現在は約200名の従業員が勤務している。

15年前と同じ診断結果に受けた衝撃

 今回の改善活動で中心的役割を果たされた取締役副社長執行役員の矢田 肇氏(以降、矢田氏)は積水ハウスの資材部門出身。4年前より滋賀工場で改革の取組みを推進される中、テクノ経営のセミナーに参加した部下から無料の1日工場診断制度のことを聞き、診断を受けてみることにした。矢田氏によるとテクノ経営のコンサルティング導入決定には意外な経緯があったという。

矢田 コンサルティング導入を検討中、実は15 年前にもテクノ経営の工場診断を受けていたことがわかりました。今回の診断要旨は、弊社の生産部門で付加価値を生んでいる作業は約2 割に過ぎず、約8 割はむだ作業であるという厳しいものでしたが、驚いたのは15 年前の報告書でも全く同じことが指摘されていたことです。

 この事実に大きな危機感を持たれた矢田氏は、コンサルティング導入の必要性をトップに直談判され、その結果2016年4月から生産性向上と人材育成を目的とした改善活動がスタートすることになった。

滋賀工場改善活動「Action200」の具体的な内容
目指す姿「業界随一のものづくり」の実現に向けて

 社内公募により名称を「Action200」とし、目指す姿「大手には出来ないレスポンスの良さとオリジナリティを追求する“業界随一のものづくり”」、定量目標「2018年の生産リードタイムを現行の4日から1日に短縮、労働生産性を現行から200%UP」の実現を目指した改善活動は、2016年4月から3年間のスケジュールで展開することになった。
 またビジョン実現、定量目標達成に向けた成果創出へのステップとしては、
 ①生産性向上の基盤づくり ②労働生産性向上 ③工程内不良削減
 ④生産リードタイム短縮 ⑤ありたい姿の横展開 ⑥間接部門の効率化
の6つのミッションが設定された。

本格的な活動のスタート

 2016年4月から6月の準備期間では、まず全員参加の「2S3定活動」「C改善活動」への取組みから着手した。そして7月の「キックオフ大会」を経て、第1期の活動が本格的スタートすることに伴い「リードタイム短縮」「生産性向上」「工程内不良削減」に関する3つのプロジェクトが新たに立ち上げられた。このようにして成果創出へのステップとして設定された6つのミッションを、3年間で推進していくための活動基盤が作られた。
 全員参加で活動に取組むアルメタックス社だが、矢田氏によるとスタート時、現場社員はあまり積極的ではなかったという。そこで活動活性化のための取組みとして、他社工場の見学会を実施することにした。大半の社員にとって初めての経験であったが、先進企業の生産ラインや様々な改善活動の取組みを目の当たりにして、参加者それぞれが「気づき」や新たな発見を得られたことは大きな収穫だったという。また職場環境改善のため行った照明のLED化、休憩スペースの整備も、社員のモチベーション向上に良い影響があり、改善活動はスタート1年を経過し、徐々に前向きな雰囲気に変わっていった。

自走する活動への転換

 コンサルタントの綿密な計画と熱意ある指導のもとに推進された1年目の活動では、社員の意識、行動に前向きな変化が見られ、生産性向上に向けた基盤づくりを確立することが出来た。
 そこで2年目以降は、コンサルタント主導の活動から、より参加性を高めるために、自主的な活動運営に変更を行った。自走型の活動への転換に向けては、現場のリーダーである班長が管理業務や改善業務に専念できるように、係長をサポートとして配置する組織変更を行った。これにより班長のモチベーションが向上し、職場のコミュニケーションなどにより良い影響を与えることにつながった。そしてこのポジティブな変化が自走する改善活動の後押しとなっているという。

 現場で班長をサポートする係長の声としては、

「班長を中心として現場がこれまでにないスピードで変化しており、数値、効果を意識した行動になってきています。この変化は2年目ぐらいから徐々に現れてきて、3年目にようやく形になってきました。自走する展開の中で班長の目線も変わって来ており、どんどん活動に引き込んでいきたいと思います」
(製造課 係長 沖 伸親氏)
「係長として班長、現場とのコミュニケーションのとり方など勉強することは多いですが、コンサルタントから色々なことを教えていただく中で、やるしかない、変わるしかないという気持ちが常にあります」
(製造課 係長 服部 健司氏)
「現場の環境、風景、やりかたが変わる中で成功も失敗もありますが、ただ変化していることが重要で、その中で能率、品質も上がっています。この変化は班長を中心に現場が変わっているからこそであって、それにつきると思います。係長の自分はそれをサポートする役目。現場からの発信で変化していることが、以前より増えているのは、C改善などが根付いてきたことが要因だと思います」
(製造課 係長 竹中 健氏)
「活動2 年目に係長がミーティングに入るようになってから意識が変わってきたように思います。改善活動の中で係長の自覚と責任が徐々に高まってきて、係長制度がうまく機能してきたように感じています」
(製造課 係長 西尾賢次氏)

などがあり、2年目の活動成果を、係長の声から伺い知ることができる。自主的な活動への転換が社員の意識、行動の変化を促進し、全員参加の土壌が出来上がってきたと言える。

第2期の活動

 2017年9月15日に行われた第1期活動の最終報告会を経て、2017年10月から第2期の活動がスタートした。第2期の開始にあたっては活動指標を「見える化」し、新たに昇格した係長に対して、日々指標の確認を行うことを義務付け、活動のスピードアップを図った。また部下である班長の管理する指標との繋がりを考えることの意識付けも行われた。
 さらに推進組織の見直しで、間接部門もより積極的に参加することになり、間接部門の効率化へ向けた取組みもスタートすることになった。これらの取組みにより最終目標である「業界随一のものづくり」の実現に向け、さらなる活動強化への基盤づくりが図られた。

他工場への横展開

 滋賀工場を中心に展開されるアルメタックス社の改善活動だが、トップからは他工場でも同時進行で展開するように指示が出ており、実際にコンサルタントによる関東や山口の工場の訪問なども行われてきたが、これまでは継続した活動が展開出来ていない状況である。今後は滋賀工場以外でのコンサルティングを強化すると共に、滋賀工場を自動車会社のマザー工場のように位置付け、滋賀工場で生産方式を確立した上で、他工場への展開を計画している。

活動の成果と今後のビジョン

 第2期は2019年3月で終了し、今後は他工場への横展開を中心とした活動への移行が予定されている。
 「Action200」の成果としては、2016年のスタート時点から、生産性、リードタイムに大きな進捗があった。そしてこれらを実現したのは、コンサルタントによる生産性向上、リードタイム短縮に向けた具体策の伝授、社員の「考える力」の定着に向けた丁寧な指導がベースとなった。

 人材育成の面からも、3年間の取組みで現場社員、班長、係長という今後のアルメタックスを支えていく人材のボトムアップによる成長が果たされたことは大きな成果と言える。
 また生産部門全体の今後のビジョンとしては、住宅産業のシュリンク化が進む中、アルメタックス社では新規事業、業態転換なども視野に入れながら、10年先を指標にした独自のものづくりを進める計画であり、強みを活かして、利益を出す工場の実現を目指している。

矢田 住宅建材のものづくりは、装置化できないところがあり、今後人員確保がさらに困難になる中、仕事の平準化を進め、誰にでも出来るようにする工夫が求められます。
 また強みを活かす工場、より利益を重視する工場を目指し、その利益をきっちりした成果配分の仕組みにより社員に還元していきたいと考えています。
 さらに将来の工場経営を託せる人材の育成や、定着率向上など、企業としての持続可能性の追求は人材面での取組みがポイントとなると考えています。メーカーとして良いものづくりには社員に長く働いていただく必要があり、そのためには賃金はもちろんですが、職場環境の改善を通じた、社員のコミュニケーション能力向上、会社へのロイヤリティ醸成なども大事になると思います。
 今回のAction200 の活動は企業の成長における、現場のコミュニケーション、一体感の創出の重要性を提示しており、今後他工場への横展開を図っていく上でも不可欠な視点であると考えています。

 企業が変革する際、強いリーダーシップの存在が必要であることは言うまでもないが、必ず変わるんだという信念が浸透した組織、そして社員一人ひとりの成長を大事にする企業風土がより良い未来を生み出す原動力となる。
 「業界随一のものづくり」の実現を目指して、アルメタックス社の改善活動はさらなる成長を続けていく。

取材後記

 まず冒頭に本取材にご協力いただいた、アルメタックス株式会社 取締役 副社長 矢田 肇氏を始めとした関係者の皆様に心からお礼を申し上げたい。今回は、活動がスタートした2016年4月からほぼ3年が経過した時点の取材ということもあり、本活動によりいかに企業変革が進んだかということを具体的に各関係者の方からお聞きすることができた。インタビューではアルメタックス社のみなさんの変革することへの強い意志、活動を通じたポジティブな未来への期待感がみなぎっておられ、その充実した内容が誌面からも伝わるのではないかと思う。今後も他工場への横展開など活動の更なる拡大と、レベルアップを目指したアルメタックス株式会社の変革への挑戦に注目し続けていきたいと思う。

取材にご協力いただいた方

アルメタックス株式会社
 取締役 副社長執行役員   矢田  肇 氏
 滋賀工場 製造課 係長    沖  伸親 氏
               服部 健司 氏
               竹中  健 氏
               西尾 賢次 氏



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