海外コンサルティング事例

KOBELCO&MATERIALS COPPER TUBE(THAILAND)CO.,LTD.

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東南アジア・ナンバーワン工場を目指して!

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(ASAP 2009年 No.5より抜粋)
 

 コベルコ マテリアル・カッパーチューブ・タイランド(KMCTT)は空調用鋼管の生産を行う、株式会社・コベルコマテリアル銅管の海外子会社である。 コンサルティングを導入して3年目、当初は戸惑いもあった現地社員からも自主的に活動に取り組む姿勢が見られるようになった。
 トップマネジメントとして、改善プロジェクトの陣頭に立ち活躍されている青木社長にお話を伺った。

はじめに貴社の会社状況についてお聞かせください。

 私共の会社は、もともと1998年11月に三菱マテリアル社が設立した海外子会社として操業スタートしましたが、2004年4月に㈱神戸製鋼所の 銅管事業ユニットと三菱マテリアル(株)の銅管部門とが合併した会社となりました。その後、2005年4月に神戸・三菱から完全分社化し、現在の国内1拠点 (秦野)・海外2拠点(タイ及びマレーシア)になっています。ここKMCTTでは、神戸と三菱からの出向者が協力して工場の運営をしています。
 創業以来、2005年の冷夏を除いて、業績を伸ばしており、2007年で25,000t強の銅管を生産してきましたが、この2008年下期の世界景気悪化 (タイでは、ハンバーガークライシスと言います)の影響で、需要が前年比4割ダウンという状況になり、非常に苦しい状況が続いています。今年度はフルキャパの 6割程度の1,400-1,500t/月という生産状況です。ただ経済が少しずつ回復基調にあり、それに伴い業績も回復していくと思っています。

確かに世界景気の後退は製造業にも深刻な打撃となりました。その対策としてもムダ排除やコストの見直しが重要視されておりますが、御社が コンサルティングを導入された経緯はどのようなものだったのでしょうか。

 2005年の赴任時より、この工場で改善のスピードを上げ、現場の改善を効果的に進めるにはどうすればよいかを常々考えておりました。 2006年5月にテクノ経営のセミナーに、機会があり参加しましたが、そこで、私達の抱えているムダ削減に対する考え方とテクノ経営のVPM活動の 方向性が一致することを知りました。海外工場においては、日本人の社員が改善活動を引っ張っていかなければなりませんが、日本人を社員として赴任 させるとかなりのお金もかかるし、それよりも具体的なコンサルティングという形で、テクノ経営のサポートを利用させて頂くということで、活動を 強制的に進めるきっかけになるのではないかと考えて、導入を決意しました。ですから、私が考えていたところとテクノ経営が取り込んでいこうと 考えている改善のポイントが上手くかみ合って、お互いに意思疎通の取れた点が良かったと思います。

従業員へのVPMコンサルティングに対する反応はいかがですか。

 スタートして今年で三年になりますが、一年目は私が強制的に導入を決定しましたので、逆にオペレータの末端まで活動の主旨が十分に伝わっておらず、 やらされているという感じがずいぶん見受けられました。しかし、一年目はエンジニア中心に、二年目の活動は班長・職長まで下ろそう、ということでやって きましたので、「自分たちで考えながら進めていこう」という活動の芽というものが少しずつ出てきたような気がします。三年目になりましたら、二年目の やり方とは少し違って、「もう少しスピードを上げて問題を解決していく」という機運も出て来て、逆にローカル担当者が自分で問題を考えて解決策まで検討 ・提案・実施出来る状態になりつつあります。
 また、コンサルタントからも現場の人がこれだけの問題点を考え、把握し、分析して改善の計画をマスタープランとしてまとめていくという力がここまで 出てきたというのは、大変良い事だと評価いただいていますし、そう言った意味では、計画書の作り方だとかポイントだとか、どういったところを中心に 改善して行く、といったところも指導を受けていますので、非常に助かっています。
 三年目の取組みとしては、(かなり消極的な)やらされているという感じから、自分たちでやっていこうという感じに少しずつ変わってきていると思いますね。 月に2回のチャンスで、1回のチャンスが2日間で合計4日間/月の指導を受けておりますけれども、確実に予定を組んでコンサルタントに来て頂いておりますので、 何とかPlan-Do-check-Actionのサイクルが回るようになりつつあります。それは自分達だけでやるよりも、外部の人に来て見てもらうというところが、 私達も少しは積極的になるところです。強制的にやらざるを得ないという面もあるかもしれませんが。そういうところが少し変わってきたところですね。

いい状態になってきたところですね。改善活動は後戻りしないようにすることが重要です。

 そうですね。そういう意味で今年、私が思っていますのは、やはり物事を基本からやりかえるということです。去年の反省としては、設備と品質の突発発生が クローズアップされました。設備では重大突発故障による生産への影響というのがかなり出ましたし、品質ではクレームが多く出ました。
 従って、今年3年目は、この活動を“プリベンティブ・メンテナンス(PreventiveMaintenance)元年”と名付けて活動を開始しました。予防保全をやっていく 土台をつくろうという形での取組みです。それは、一つには設備の日常点検をきっちりやっていこう、それに加えて品質のポイントを各工程・設備毎にどういう ところに眼をつける必要があるかを検討し、日常においてチェックするポイントをどう絞っていくか、コンサルタントにもご指導を仰ぎながら、日常点検の チェックシートを全面的に見直して作り直すところから、きちんと問題点を掴んで行こうという活動をしています。これを定着させて問題が起こる前に手を 打つことができれば、よしんばトラブル発生があっても、重大故障、重大品質トラブルになる前に手を打てる体制が出来上がると思います。そういったところで、 後戻りしないための歯止めをここでかけていければいいと考えています。

いろいろ改善のお話を含めて対応されていることをお伺いしてまいりましたが、青木社長の視点から日常業務においてご苦労されておられる点はございますか。

 やはり苦労という点では、現地の管理職含めたスタッフや職長・班長さんに対する人材育成というテーマです。彼らを仕事で成果を出す人材に育てていくには、 どういう観点・道具・内容が必要なのかということ。そういった面では、コンサルティングという経営サポートを通じて、どういう観点で問題をとらえ、どういう切り口から、 どういう形で問題点を追求していけば改善が見えてくるといったところが判ってきました。自分が苦労していつもやりたいと思っているところを、コンサルタントによる 指導・実際の活動を通じて実現できていると思います。また、社員の考え方も少しずつ変化しており、いい方向に行っているとも思います。次の世代に受け渡す人材を どうやって育てていくかというのが、どこの企業にとっても大きな課題ですが、この活動をそういった方面にも生かし、役立てて行きたいと思っています。

コンサルティングでお客様から喜んでいただけるのは人が育つというところが一番多いようです。もちろん結果も大事ですが、結果を出すことを通じて人が成長する というのが一番いいことだと思います。

 やはりこういう活動をすると、成功体験というのですかね、そういう言葉で表される、自分がやった事に対する成果が出てきますので、それぞれの担当者が自信を持って次の物事にチャレンジしていくということがあります。だから、私はいつも言うのです。「失敗してもいい。責任は私がとるから貴方達は自分がやりたいと思うことにチャレンジして欲しい」と。何も手を付けずに黙って見ているよりも、失敗してもいいから手をつけて自分はどうだったかと考えることが大事ということです。 そういう意味でも成功体験をさせてあげて自信をつけるということが非常に大事じゃないかな。

青木社長から見られて現地の人がここまでやったのかというエピソードはございますか。

 エピソードといえるかどうか判りませんが、改善活動名を検討するときに、社員の皆さんに募集してどういう名前にしようかということで、管理職にも相談して考えさせたが、あまりいいものが出てこなかったんですね。それで管理職の酒飲み会で「皆さん、私が頼んだけれど全然出てなかったね。どうするんですか」と言ったら、 ここのローカルの管理職に女性が二人いまして、購買課長と経理課長なんですが、その人たちがタイ語で何かを話し合っているのです。彼女たちも一所懸命どういう案が いいか考えてくれて、“Ruan Duy Chuy Gun”というタイ語が出て来ました。
 どういう意味かと聞いたら、「みんなで協力して仕事を成功させましょう」という意味でした。これでみんなが一致したので、すぐに決めました。この改善活動を “Ruan Duy Chuy Gun”と呼んでいます。それに今年は「中期計画で3万ton体制をつくりあげる」ということをかけて「New “Ruan Duy Chuy Gun 30,000 ton / 2011」という言葉にしました。最終的にはこの工場を年間3万ton生産できる工場に能力アップしながら、それに見合う技術・人・モノ(所謂、P,Q,C,D,S,M)の 東南アジアで一番の工場にしたい、というのが我々の目標であり、活動の最終課題なのですが、名前をタイ語にしたからというのではないのですが、現場の人も よく考えていろいろな活動にも協力してくれているなと思います。いろいろ英語の名前とか日本語の名前とか考えたのですが、結局タイ語の方がいいということになりました。
 また、ベースになる活動として、もうひとつは「5S改善活動」の名前をつけようということになり、“Ping-ping”という言葉が選ばれました。その言葉の意味は、 ブライト(明るい)と言う意味だそうですが、日本語の“ピカピカ”と言うロゴにも掛けています。工場を明るく働き易い安全な職場にして行こうという意味で、 5S活動は“Ping-ping”もしくは“Ping-ping アクティビティ”と呼んでいます。皆さんに親しみを持ちながらやってもらいたいと思います。

なるほどタイ語を入れるというのはいいアイデアですね。現地の人にも親しみが持てます。

 そうですね。皆理解してやっています。また“プロパイ ワイ コーン”(日本語で“ご安全に”と言う意味)のタイ語を会議が終ったら皆で唱和することも やっています。

やはり現地に溶け込むということが必要ですね。いろいろ広いテーマでお話いただきありがとうございました。最後に先ほども、少しお伺いしましたが、さらに御社の今後のビジョンをお聞かせください。

 いつもテクノ経営の指導に基づいて、社員の皆さんにお話しをしているのですが、この工場は1998年に操業開始した東南アジアでは最新鋭の工場です。 したがって銅管を製造するというハードについては、どこにも負けない世界一の最も新しい機械が入っています。あと何が足らないかというと、人の心というか魂、 品質を作りこむ、そういうノウハウ・ソフト、これを全員で作り上げれば絶対世界一になれると。そういうことを折りに触れて話しています。世界一というのは大げさでも、 少なくとも東南アジアでは一番になろうということで“サウスイースト・ナンバーワン”という言葉で皆さんにお話をしています。したがって将来のビジョンということで あれば東南アジア一番の銅管製造販売会社。一番の意味は品質であり、生産性であり、コストでありと、絶対ここで生き残れる最も優れた銅管製造阪販売会社だと。 是非それを実現するのが私の夢でもあるし、かたや、日本の親工場は『世界最強の銅管製造工場』と言うように大城社長方針でやっています。お互いに切磋琢磨して 我々の将来を創造して行くと言うことですね。

最新の設備を活かすのは人の心。コンサルティングを通じて、御社のビジョン実現を支援させていただけることを誇りに思います。本日は有難うございました。

取材にご協力いただいた方

代表取締役社長 青木 正延氏



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