1962年(昭和37年)創業の三重重工業株式会社は、グレーチングをはじめとする鉄鋼製品の製造に加え、水門扉や橋梁床版、導水製品の施工まで一貫して対応し、さらに高速道路の安全を守る衝突緩衝装置や耐久性を高める溶融亜鉛めっき加工にも注力。鉄鋼加工技術を基盤に幅広く事業を展開しています。過去の試練を糧に再建を果たし、着実に成長してきた同社が、さらなる高みをめざす上で直面した課題が“工場現場の改革”でした。
【背景と課題】
ムダ・ロスといった問題が山積
任せっぱなしの生産現場
地域の鋳物産業から独立して誕生した鉄鋼部門に端を発し、三重重工業株式会社の歩みは始まりました。高度経済成長期の追い風もあり、グレーチングをはじめ、さまざまな事業に挑戦しました。最盛期には80億円を目指すほどまで成長しましたが、50億円という負債を抱えて倒産。そこからの再建は苦難の連続でした。約300名いた社員は130名まで減少する中、工場環境の改善や人事制度の見直しといった改革を敢行し、10年で負債を完済することができました。
再建の中で、単に負債を返済するだけでなく、過去の過ちを繰り返さないため、さまざまなムダやロスを“塞ぐ”こと、そして“防ぐ”ことに取り組みました。売上は上がっているのに、なぜ資金が残らないのか。その理由は、指標や業績資料といったものが整っていないことが分かり、まずは「数字を見える化」するところから始まりました。
経営状況を把握する土台ができあがると、その先に待ち受けていたのが、生産体制の課題でした。現場は長らく“任せきり”だったため、工程の流れが不明瞭で納期が読めず、また不良やロスがあっても問題視しないといった状況でした。経営でいくら数字を把握しても、肝心の製造現場が混沌としていては利益は生まれません。製造メーカーである以上、利益を生み出すのは生産現場でなければ意味がありません。
そんな時に届いた一通のダイレクトメールが転機となり、1日工場診断を一度受けてみることになりました。
【選定と導入】
わずか1日で突きつけられた現実
30%UPという数値で示された可能性
現場の診断はわずか1日だったのですが、その指摘は鋭く、核心をついていました。製造メーカーとして利益を生むのは営業ではなく、モノづくりそのものです。生産性、効率、品質、これらを高めて初めて、利益体質へと変わることができます。診断の場で「3割は生産効率が上がるはず」と確認すると、テクノ経営さんからも「3割は大丈夫」と応じていただけたこともあり、コンサルディング導入を即決しました。活動名は「生産効率30%UP」、「社員へ利益の3割を還元」、「三重重工業の三重」という3つの意味が重なった『PJ30』に決定しました。
導入当初、最大の課題は社員の意識を変えていくことでした。地域性なのか、慎重な社員が多く、「どうせやっても無駄」といった空気が漂っていて、活動への参加を諦める部門もありました。
こうした状況を打開したのが、水門プラント部の協力でした。工程表の管理に社内で最初に取り組み、納期対応力が劇的に改善しました。その結果、他部門へも良い影響を与えてくれて、徐々に活動が広がっていきました。
1200万円をかけた設備レイアウトの大幅な変更などの効果もあり、成果が出始めると、各部門も協力的になるなど、好循環が生まれました。活動リーダーたちには、あえて自部署以外の課題を担当させて、自部署の改善に役立てるほか、意識改革へとつなげることもできました。切断工程では、以前は切断機が5台必要だったところ、3台ですみ、さらに残業がほとんどなくなるなど、ざっと生産性は2倍に向上するような現場も出てきました。
コンサルティングを導入して10年、一番変わったと感じるのは間違いなく、納期対応力の向上と部門間の壁がなくなったことです。工程管理表はもちろん、分業から一個流し型の生産へと変えることで、途中出荷も可能になるなど、緊急時の対応もできるようになりました。さらに、例えば番線をシャックルに変更するなど、工程上で必要な資材、あるいは外注に依頼していたものを、別の部材や社内対応に変更することによって、これまで当たり前だと思い込んでいたものを排除し、コスト削減と生産性の向上を両立するなど、めまぐるしい成果を上げています。
今後は、自社の技術・技能・実績で独立独歩するメーカーであり続けたい。その結果、次世代では60億、100億を目指せる企業、そして100年、200年と続く企業へと成長させてほしいですね。
テクノ経営総合研究所では今後も経営革新セミナー、1日工場診断を通じて、企業変革のきっかけをつくるための活動を推進してまいります。
(公開日:2025年11月21日)
PDFダウンロード
【工場診断事例】三重重工業株式会社 様
ご質問・ご相談など、お気軽にお問い合わせください。
1日工場診断について相談する






