コンサルタントボイス(鳥取 一博)

#1 1日工場診断について


テクノ経営総合研究所の「一日工場診断」では、コンサルタントがモノづくりの現場を拝見し、経営トップやキーマンの方からお話を伺う。そして、工場診断の結果を報告書にまとめて約2週間後に提出させていただく。
なぜ工場診断が必要なのだろうか。その理由を私は定期的に行う健康診断や車の点検のようなものと説明している。日常的な体調管理だけでなく、医師の診断を受けることで客観的な健康状態を把握することができる。それと同様に、工場診断ではモノづくり現場に潜むロスや課題、経営力強化のために対処すべき機会損失を指摘する。
機会損失とは「あるべき姿からの逸脱」により、本来なら得られるべき利益が失われた状態をいう。「儲け」を流出させるリスク対策として、機会損失の防止は極めて重要な経営課題なのである。
私が工場診断をお勧めする理由は2つある。診断後には簡単な所感をお話するが、工場診断を受けるまでは「そうは言ってもうちの工場はそれほど悪くはないだろう」と思われていた場合が多い。しかし、改めてプロの視点で所感をお伝えすると、「これだけ問題ありましたか」という驚きのコメントをいただく場合が多い。このように工場診断により自社の悪さ加減を客観的にご理解いただくことができる。
もう一つは工場診断後の報告会で現場改善による「のびしろ」をお伝えすることである。たとえば不良率の半減、歩留まり改善、生産性向上など、具体的なテーマ改善による業績向上の提案であり、ぜひ社内の改善・改革の参考にしていただきたい。

#2 コンサルティングの成果とは


最短距離で経営業績の向上に寄与すること。経営数値に現れる成果を提示できること。ご満足いただける定量的な目標値を契約の期限内に実現することがコンサルタントとしての使命であると考えている。
ただ、私自身のこだわりとしてはそれ以上に「人を活かす」ことの大切さを感じている。これは数字では表せない成果であり、メンバー自身が感じる変化や成長の実感なのである。材料費が減った、残業が減った、労務費が削減できたなど、こうした数値に表すことのできるものは確かに大事である。しかし、不良が半減し材料費が30%削減できたとしても、職場がギスギスした悪い雰囲気になってしまってはだめである。
私がいつも改善活動の始めにメンバーの方々に申し上げることがある。それはコンサルタントではなく、皆さんが進める活動が重要だということ。よくある話だが、コンサルティングを受けているときは成長したが、コンサルタントがいなくなったら低下していった、これではダメだからである。あくまでメインエンジンはメンバーでコンサルタントは補助エンジンであると申し上げるようにしている。
現場の活動メンバーに効果だけを一生懸命に説明しても全くピンとこない。反対に改善活動の負荷が心配だというマイナスの声も挙がってくる。だから「効果」と「成果」の使い分けをして、必ずしも数値化できない部分に着目することが大切だと考えている。現場を動かすにはまず目に見える成果を出すことが必要なのである。

#3 コンサルタントとしての信条

コンサルティングでは経営トップとの接点となるタイミングが重要になる。その意味で朝のオープンミーティングと夕方のクローズミーティングはコンサルティングにおいてとても大切な時間であると考えている。私はそれぞれ30分程度は取るようにしているが、可能な限り経営トップにもご参加いただき対話の機会をつくっていただいている。これは改善活動の成否を分ける重要な要素であり、コンサルティングには経営トップのご協力が欠かせない。また、その場で活動状況を報告し、またご指示もいただくようにしている。
コンサルタントが心がけるべき信条とは誠実さではないだろうか。誠意を持って取り組み、誠意を持って応えること。そこで手を抜くと必ず見抜かれる。たとえば2年、3年と指導を続けていると慣れが生じて、どうしても気が緩む瞬間がある。そういう時こそ注意しなければならない。お客様からお金をいただいているから、契約だからというのではなく、品位を保とうと思えば誠意をもってお応えすることが必要であり、これはコンサルタントとして当然のことだと考えている。当事者という立場からは、どうしても見えなくなる部分が出てくるものである。コンサルタントは第三者という立ち位置から見える問題を指摘することができる。コンサルタントという外部の視点を活かしながら、与えらえた課題をどこまでクリアできるかチャレンジしていきたい。

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