コラム/海外レポート

2018.10.23

職場改革にシニアの 経験値を活かす!

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
シニア世代も教育の時代

終身雇用制度の崩壊から十数年、年金支給年齢の引き上げに伴い、定年年齢が引き上げられました。と同時に、後進に道を譲るため役職定年制が始まりました。そして、多くの場合、55歳を過ぎると役職を解かれ、給料も一般社員並みに下げられてしまうという現実が当たり前の事となって、はや20余年が過ぎようとしています。
若手社員は、企業の未来を支える立て役者ですが、シニア社員も、その若手のモデルとなり、希望とやる気を与え、企業精神を伝承し、時には若手を精神的に支え叱咤激励する役目を担うはずでした。ところが、若手の教育に力を入れても、シニア世代、特に役職定年者の教育に力を入れる企業は、いまだ希少です。
ここで、「ちょっと待てよ、シニア世代の教育?今さらシニア世代に教育が必要なの?」と思った方が多いのではないでしょうか?
“人間は、生きている限り成長し続ける”のが常識となった昨今、シニア世代に対しても、新しい環境に適応するために成長し続ける事が要求されます。
そのために、企業が準備すべきシニア世代の成長の場づくりは、やはり会社人生の残り10余年、若手の鑑となり、もって会社に貢献してもらうための考え方、言動、スキルなどが修得できる教育の機会を設けることではないでしょうか。

経験値は隠された資源

それを「単なる理想論」と思われますか?少子高齢化による人口減少の波は、企業を含む社会全体の生産能力を低下させ、自治体によるソーシャルサービスも満足に受けられない時代が到来する気配を感じさせます。そうした変化に対応するために、個人はもちろん、企業も、社会も変わらねばならないところに来ています。そこでは、「単なる理想論」の方がより現実味を増してくるでしょう。そして、その環境に適応するための変化は、性的マイノリティの社会的認知のように、異質なもの同士が、互いの差異を受け入れ合うという小さな流れを発端として既に始まっているようです。ダイバーシティに取り組み始めている企業が増えているのもその良い例です。
さて、そのような変化の中で、隠された資源としてシニア世代の活用が注目されています。
十分な経験値を持つシニア世代は、人口ピラミッドでも最も厚い層になります(図1参照)。

私はストレスチェック後の組織分析をさせていただく事が多いのですが、どの業種にあっても、世代別に分析してみると、最も打たれ強いのもこの世代です。
20代30代は、上司や同僚からの支援が受けられにくい環境ではメンタルダウンを引き起こしやすい姿が見えてくるのですが、50代以上では、ぐっと足踏ん張って耐えている姿が垣間見えてきます。これもシニア世代の経験値のなせる業でしょう。

いきいきシニアが会社を変える

残念なのは、どの企業でも、この姿をモデルとしてほとんど利用できていないという事です。シニア世代の方々の中にも、自分たちの役目はもう終わったと考えてしまう方が多いのも事実です。企業の人事制度が、シニア世代にそのように思わせてしまっているというのも事実としてあります。
また、シニア世代の側にも、企業の側にも、今の変化の諸相が見えていない、変化への対処スキルが備わっていない、具体的な方法論がわからないという事があるのも事実です。
そして、多くの場合、役職定年から60歳再雇用までは一般社員として当たらず触らずに過ごし、60歳再雇用後は、それが終了する65歳まで、自分の持てる力を発揮する事も成長させる事もなく、若手から煙たがられないようにと遠慮しながら時を過ごすようです。そういう環境の中で、シニア世代の力を活用と言っても無理な話です。
シニア世代の方々は、新しい環境への適応能力も身につけず、学ぶ場もなく、長年住み慣れた会社を去るのですが、その後、運よく新たな活躍が期待される場に立った時、その方の行動の基本は、自分が慣れ親しんだ企業社会での姿です。その時点で、自分に求められているのは新しい環境に適応した後のスキルの発揮であると気が付けた方は良いのですが、そうでない方は、昔取った杵柄だけを振り上げ、周囲の環境と不協和音を奏で、結果、自分の問題点に気づけないままに、そこを引っ掻き回しただけの状態で去っていきます。
新しい環境への意識づけができておらず、適応する能力が身についていないからです。そのノウハウを身につけられるのは、まさに55歳役職定年後からの企業人生においてなのです。

知恵を語り継ぐことの大切さ

我々人類は、進化の過程で、何度も絶滅の危機に瀕してきましたが、そのたびに、個人ではなく集団の力で生き延びてきました。文明が発展した現代社会にあっても、生物種である以上は、互いの資源を頼りに利用し合うのが鉄則です。つまり、互いに成長し合える事を信じ、互いに成長する場を確保するという事です。
2002年のダニエル・カーネマン博士の受賞、2017年のリチャード・セイラー博士の受賞と、二度にわたってノーベル経済学賞が行動経済学に対して与えられているのは、世界の潮流としても、それが意識されている事の証です。
さて、現代社会において時代をリードし、新たな世界を作り上げる立役者は、一体誰でしょうか。それは、学者でも一部の富豪や政治家でも官僚でもなく、自らもまた生活者であり、人々の生活に変化をもたらす事で利潤を上げる志を持った企業とそこで働く人々です。その企業と企業人が、最も有効に使えるシニア世代と言う資源にほとんどアクセスできていないのは勿体ない限りではありませんか。
ある企業で、シニア世代の方にカウンセリングスキルを伝授する中で、驚くような変化を目にしています。まずは、シニア世代に成長のため、変化のための教育を行い、企業の中で、最後まで活き活きと仕事をしていただく素地を形成すべきではないでしょうか。
そのために何をすべきか、一緒に考えさせていただけたら幸いです。私なりに見聞きし、経験させていただいた事をお伝えできるかもしれません。そういう場で皆さんとお会いできる事を楽しみにしています。
現場で働く従業員の側をより良く変化させて企業を活性する事を目的として、打たれ強さや個人の「強み」発見を基本に、新人、マネージャー、シニア各層の強化研修、個別コーチング、カウンセリング、ストレスチェック後の統計分析など幅広く対応。ご希望の方には、2017 年度のストレスチェック総合分析報告資料を差し上げます。

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