コラム/海外レポート

2024.05.13

物流の「2024年問題」

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2024年問題とは

2018年に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、略して「働き方改革関連法」により、時間外労働の上限規制が定められた。大企業は2019年4月1日から、中小企業は2020年4月1日から施行される中、建設事業、自動車運転の業務、医師など一部の事業・業務については上限規制の適用が2024年3月31日までの5年間、猶予されていた。

この猶予期間の終了に伴って発生する問題の総称が物流の「2024年問題」と言われている。トラックドライバーといった自動車運転業務の時間外労働が960時間に制限されることで輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」という可能性が懸念されている。それだけではない。運送会社は従業員の労働時間を削減する必要があり、1日で運ぶ荷物の総量が減ることになり、何らかの対策を講じなければ売上や利益の減少につながってしまう恐れがある。また、荷主や一般消費者にとってはこれまでのように短期間で荷物が到着せず、運送費がこれまでより高くなるといった影響が考えられる。さらに、トラックドライバーは労働時間の短縮により、健康や安全への配慮という恩恵を受ける一方、残業代といった給料の減少につながってしまう。ただでさえ人材が不足している中、給料が下がれば離職するトラックドライバーも増え、ドライバー不足に拍車がかかる恐れもある。このように、一括りに2024年問題といっても、さまざまな問題が含まれている。

国内における物流の取扱量やドライバーの状況

国土交通省の資料によると、国内貨物輸送量の全体では近年ほぼ横ばい~緩やかな減少傾向ではある一方、ネットショッピングといったEC需要の拡大に伴って宅急便などの取り扱い個数は年々上昇し、10年前と比較すると、約40%取り扱い個数が増加している*1。また国内の貨物輸送に関し、その輸送手段としてトラックが91.4%*2を占めており、大半の貨物がトラックによって輸送されている。

このようにトラックを用いた貨物輸送は拡大傾向にある中、その労働環境や人材不足が大きな課題として年々深刻化している。例えば、年間労働時間では2021年の全産業が2,112時間であるのに対し、トラックドライバーは約2割長い2,512時間となっている*3。また、2024年2月における有効求人倍率では、パートを除く全産業で1.31倍に対し、自動車運転従事者は2.76倍と高く*4、それだけ人材不足が顕著化している。

*1 出典:国土交通省「令和4年度 宅配便・メール便取扱実績について」内、宅配便取扱個数の推移より
*2 出典:国土交通省「令和4年度 交通の動向」より
*3 出典:国都交通省「令和5年7月 貨物輸送の現況について(参考データ)」より
*4 出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年2月分)について」より

自動運転や遠隔操作が解決策の一助となるか

こうしたさまざまな課題を抱えた中、「時間外労働時間の上限規制」の猶予期間が終了を迎え、今後ますます事態の深刻化が進んでいくと思われる国内の物流問題。具体的な対策を講じなかった場合、2024年度で輸送能力が約14%、2030年度で約34%不足する可能性*3が指摘されている。こうした状況に対し、あらゆる方法で解決を模索しているのが現状だ。例えば、荷台をつなげたダブル連結トラックでは、純粋に一度の輸送量を倍に増やすことが可能で、実際に導入もされている。ただし、ダブル連結トラックはけん引などの特殊な免許やしっかりとした事前の研修が必要なほか、国土交通省により通行できる道路が決められており、自由に走行することはできない。

「自動運転」や「遠隔操作」といったテクノロジーの進化で解決を図ろうという試みも活発だ。例えばトラックの自動運転では、高速道路の一部区間に専用レーンを設置し、一定の条件のもと無人で走る自動運転「レベル4」の実験が行われている。また遠隔操作では、先頭車に運転手を配置し、後続のトラックを無人で連動させ、隊列を組んで走行する後続車無人隊列走行技術の開発が進められている。トラックだけではない。陸ではなく空、ドローンの運用も注目されている。ただ、このドローンの活用については、墜落に伴うリスクや離着陸のエリア確保、さらに人口が密集した大都市では騒音問題や正確な測位技術の確立など、まだまだ課題も多い。

2024年問題に向き合い、実りある将来の実現へ

さまざまな課題を抱える2024年問題。実際の生活や企業活動において、まだその影響は実感できていない状況だが、確実にその危機は迫ってきている。こうした問題に対し、これまで以上に継続的な努力や協力が不可欠となる。将来的には技術革新や政策の改善によって、輸送業界がより持続可能で効率的なものに変貌を遂げる可能性もある。特に、自動化や遠隔操作といったテクノロジーの進化は、労働者の負担軽減のみならず、こうした問題を一挙に解決し、新たなステージを切り拓く一手となり得るだろう。