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2024.04.23

日経平均株価の最高値更新&4万円突破と製造業の現況

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日経平均株価が34年振りに最高値更新&4万円台を突破

2024年2月22日、語呂が良い日付に日経平均株価が34年振りとなる史上最高値を更新した。1989年の大納会、バブル経済の頂点で記録した3万8915円を突破し、バブル崩壊から失い続けた30年に終りを告げた。日本が30年低迷している間、世界は成長を続けた。アメリカではビック・テックと呼ばれるGAFAM(ガーファム:Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)が大きな影響力を持ち、その時価総額は日本企業全体を上回る水準までに巨大化している。一方、日本はこの30年間で低迷を続け、1990年では平均年収が世界第4位であったのが、2022年には25位まで下がり、韓国に抜かれてアジアNo.1の座からも陥落した。

日経平均株価はその後も上昇を続け、2024年3月4日には初の4万円台に到達した。株価が急激な上昇を見せる中、実生活ではその恩恵を感じづらい状況となっている。厚生労働省が2024年4月8日に発表した2月の毎月勤労統計調査によると、現金給与総額(名目賃金)に物価変動を加味した1人あたりの実質賃金は前年同月から1.3%減少し、23カ月連続のマイナスとなった。現金給与総額は徐々に増えつつあるものの、物価の伸びに賃金が追いつかない状況が続いている。円相場は2024年4月におよそ34年ぶりの円安ドル高水準となる1ドル=154円台半ばまで値下がりし、原油や小麦といった生活に直結する資源を輸入に頼る日本では、今後更なる物価上昇が懸念されるだろう。

日経平均株価が上昇する中、製造業の現況は

日経平均株価をはじめ、世界の株価が上昇を見せる中、国内の製造業はどのような状況になっているのだろうか。2023年5月に経済産業省が公表した資料によると、日本の過去25年における製造業の売上高は400兆円程度で横ばいが続いている。業種の内訳としては、自動車(17%)、化学(11%)、食品(10%)、情報通信機械(8.5%)、電気機械(7.4%)、生産用機械(6.4%)で全体の2/3を占める。純利益はリーマンショック時に大きく減少したものの、その後は増加を続け2014年頃には最高益を更新し、現在も続いている。

視点を少し広げてみよう。日本における経常収支の推移をみると、2022年は15.7兆円の貿易赤字(比較可能な1996年以降で過去最大)となる一方、第1次所得収支は35.3兆円で過去最大(比較可能な1985年以降)となった。かつては、海外から安い原材料を輸入し、付加価値をつけた製品として輸出することで大きな利益を得ていた貿易立国・日本。現在はその面影はなく、経常収支の構造は海外現地生産をはじめ、海外保有資産から発生する第1次所得収支の収益が膨張し、逆に貿易収支はかつてない赤字に膨らむ形へと変貌した。それでも歴史的な円安などを背景に、海外投資からの収益増加でなんとか黒字を保っている状況だ。製造業においても同様に、経常利益全体に占める海外比率(海外輸出や海外現地法人からの利益)は2004年には35%程度だったのが、2008年には58%まで増加し、以降おおむね50%前後を海外から稼ぐ構造へと変化している。

実り多い未来へと製造業を成長させていくために

近年、製造業にも技術革新の波が押し寄せている。自動化、ロボット工学、人工知能などの先端技術が製造プロセスに導入され、効率化と品質向上が飛躍的に進み、生産コストの削減や競争力の強化につながっている。インターネット・オブ・シングス(IoT)やビッグデータなどのデジタル技術を活用し、生産ライン全体を統合した効率的な生産も実現している。例えば、ドイツ発のインダストリー4.0を実現する工場では、全体の75%を自動化し、24時間出荷にも対応。1日5000万の工程・製品データを分析し、高品質を保つなど、生産スペースや人員がほぼ変わらない中で生産性が約13.5倍に向上、不良品件数が1/60以下になった事例*もある。
(*2018年までの28年間/2023年・経済産業省発表「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」より)

一方、世界の製造拠点として注目を浴びるASEAN地域や再び活気づく米国をはじめとした先進国の製造業など、グローバル市場でのシェア獲得はますます難しくなっている。また、環境問題やサプライチェーンの脆弱性といった課題もある。日本の製造業はこれらの課題に対し、どのように対処していくかが重要となる。環境負荷の低減や社会的責任の果たし方など、持続可能性を重視した経営も今後はますます求められるだろう。日本が本来から持つ勤勉さはもちろん、高度な技術力や品質管理の徹底といった強みを磨き、真にグローバルな企業として更なる成長に期待したい。

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