コラム/海外レポート

2024.03.05

上流部門の改善が進まない、本当の原因とは

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執筆者:

伊藤 勝寿

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最近、支援させていただく企業様に多いのは、上流に問題がある製造ラインの改善、解決を諦めてしまっているケースです。「組み立てづらい」「嵌合にコツがいる」「原料の状態が悪い」など、もう何年も悩まされているのに「自責」のつもりで受け止め、改善活動を行っても解決せず疲弊してしまっている。疲弊感というか、諦めてしまっている現場が多いです。どうして、上流部門に「問題提起をしないのですか?」と投げかけても、「どうせ言ってもやってくれない」「“忙しい”の一点張りで対応してくれない」「上司が取り合ってくれない」など、具体的に接点を持とうとすらしません。ご支援先によっては「上流部門に難癖付けるのは御法度」のような業界もありますが、それは一握りの特殊なケース。以前は橋渡しを行う役割の方がいたはずなのに、グループ企業であれば工場長や役員、上役がコロコロ変わり、調整役が担えず、顔の広いモノを言える現場のベテランは定年で退き、技能継承の遅れもあり更に部門間の溝は深まるばかり。第三者から見ても深刻な状況です。だからといって上流部門は遊んでいるわけではありません。自分たちはしっかりと仕事をしている、後工程に迷惑なんて掛けているつもりはない。……はい、まさにその通りだと思います。

話は変わりますが、コンサルタントの私自身も沢山の問題を抱え、首が回らない状況に陥ることがあります。そんな時、アドラー心理学に立ち返るようにしています。アドラーの5つの理論の1つである、「課題の分離」。課題の分離はとても苦手なのですが、あえて考えるようにしています。これは「誰の課題か?」の問いです。そして「対人関係論」にも目を向けます。「すべての行動には必ず相手がいる」、つまり 悩みごとのほとんどは人間関係だということ。それに「目的論」。行動には全て目的があって、今の状況を作り出しているのです。

話を戻すと、「どうせ言ってもやってくれない」を考えた時に、何か相手と接点を持ちたくない、現状を変えたくないという目的が潜んでいないでしょうか。「大変だけど今のままがいい」「何か変わると面倒だし、上からごちゃごちゃ言われたくない」など、直接は思っていなくても心の奥底でそういう思いがあるのだとすれば、前述した「自責」で仕事が出来ていることにはなりません。 ムダ、ムラ、ムリの排除を懸命に取り組み、いろいろな改善手法を学んでも、最後に足枷となるのが「対人関係」だとすれば、何より先に勇気を持って一歩踏み出し、上流部門と関わり合いを作り、勝手な思い込みを捨てることから始める必要があります。 まだまだ生産性が上がる余地はあるのに、本当にもったいない。その根本が対人関係だとすれば、それこそが直ぐにでも取り組める「大ムダ」の排除ではないでしょうか。

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