コラム/海外レポート

2024.02.26

宇宙ゴミの脅威と解決へのステップ

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宇宙ゴミとは何か

宇宙ゴミとは、地球の周囲や太陽系を漂う人工的な廃棄物のこと。その種類は多岐にわたり、小さなペイントのかけらやツールの破片から、大型の使われなくなった衛星、ロケットのステージなどがある。これらのゴミのサイズは、数ミリメートルから数メートルに及ぶ。現在、地球低軌道では数十万個、地球同期軌道では数万個以上の宇宙ゴミが確認されている。宇宙ゴミは、主として2つの原因で発生する。第一に、宇宙ミッションの過程で、ロケットのステージが分離する際に断片が散布される、使用済みの衛星がそのまま宇宙空間に遺棄されるといったことが挙げられる。第二に、既存の宇宙ゴミが衝突してさらなるゴミを生成する連鎖反応、いわゆる「ケスラーシンドローム」の危険性がある。これらの活動が増えるほど、宇宙ゴミは増加傾向にあり、問題が深刻化している。

宇宙ゴミの影響や問題点

宇宙ゴミにおける最大の問題点は、その衝突リスクにある。速度は秒速数キロメートルに達し、ごく小さなゴミであっても衛星や宇宙船に重大な損傷を与える可能性がある。また、新たな宇宙ミッションの計画に影響を与え、宇宙空間の安全性を脅かしている。これにより、宇宙開発の経済的負担が増加し、技術的な障害が生じる場合も考えられる。
また、宇宙ゴミの問題は私たちの日常生活にも深い関わりを持つ。例えば、気象予報やBS放送、カーナビゲーションやスマートフォンのGPS機能など、これらはすべて人口衛星から送られる情報をもとに運用されている。宇宙ゴミがこれらの人工衛星へ衝突すれば、突然情報の遮断や機能が利用できなくなるといった事態も考えられる。さらには地球への落下という脅威もある。中国が打ち上げたロケットの残骸が大気圏で燃え尽きず、地球に落下したというニュースも記憶に新しい。こうした宇宙ゴミの増加は、今後の宇宙活動や私たちの日常生活に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。

宇宙ゴミ除去技術の最前線

こうした宇宙ゴミの除去に対して、さまざまな技術が開発されている。ネットを使用した方法では、宇宙ゴミを大きなネットで捕捉し、制御された軌道に移動させることでゴミとしての危害を回避しようとするもの。一方、ハープーン技術は、宇宙ゴミに向けてハープーン(銛・もり)を射出し、直接的に捕獲するというものとなっている。このほかにも、レーザーを用いた革新的なアプローチも開発されている。これは、特定の波長となるレーザーを宇宙ゴミに照射し、その推進力を利用して軌道を変えることで衝突の危険性を減少させる手法や、レーザーの照射によってゴミの一部を蒸発させ、その反動でオブジェクトの軌道を変更するといった方法となる。この技術は精密な制御によって比較的小型の宇宙ゴミもターゲットにでき、宇宙ゴミの除去を非接触かつ遠隔操作によって実現できることが期待されている。

宇宙ゴミへの対策と解決を進めていくために

各主要国では、宇宙ゴミ対策として独自の政策を推進している。アメリカでは、宇宙ゴミ追跡システムの構築に力を入れており、宇宙船同士の衝突を未然に防ぐ技術の開発を進めている。一方、欧州宇宙機関(ESA)は、打ち上げられた専用の人工衛星「ClearSpace-1」が搭載するロボットアームを用いて、2013年にロケット「Vega VV02」を打ち上げた際に軌道上へ残された直径約2mのペイロードアダプタ「VESPA」を捕獲、大気圏に再突入させて焼却処分するというミッションを行う予定だ。日本もまた、JAXAを中心に宇宙ゴミ監視システムの強化と、衛星衝突回避技術の向上、そして将来的なゴミ除去の検討を行っている。こうした国々の取り組みと協力が、地球外環境の保護につながっていくことになるだろう。

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