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2023.04.10

再生可能エネルギーの動向と未来

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世界における再生可能エネルギーの動向

再生可能エネルギーとは、風力、太陽光、水力、バイオマス、地熱など、自然界に存在するエネルギー源から取り出したエネルギーのことで、化石燃料を使ったエネルギーに比べて、環境負荷が少なく、将来にわたって安定的に供給されることが期待されている。こうした再生可能エネルギーをはじめ、クリーンエネルギーを中心とした経済社会・産業構造への転換(GX:グリーントランスフォーメーション)がより重要性を増している中、ウクライナへの侵略をきっかけに世界のエネルギー情勢が一変し、各国が再生可能エネルギーの導入を加速させている。経済産業省・資源エネルギー庁の資料によると、世界における再生可能エネルギー発電設備の容量(ストック)は2015年に約2,000GW程度まで増加して最も容量の大きい電源となり、その後も年々導入ペースは増加傾向にあるという。

 また、発電量の割合を見ると、2020年時点における水力発電を含めた再生可能エネルギーの比率は欧州の主要各国(EU、ドイツ、イギリス、スペイン、イタリア)でおおむね40%前後となっており、石炭や天然ガスといった化石燃料と同等、もしくはそれを上回る発電量で、自給率の向上はもちろん、化石燃料からの脱却や2050年のカーボンニュートラルへ向けた施策が進んでいる状況がうかがえる。

 一方、アメリカでは、2020年時点での再生可能エネルギーの発電比率は約20%、全体としては天然ガスが約40%と高い割合となっている。しかし、2023年に大規模な太陽光発電設備が導入される予定で、今後2035年までに電力を100%カーボンフリーで供給するという目標に向けて、自然エネルギーと蓄電池を最優先に拡大する方針を進めている。

 依然として世界的には石炭による発電量が最も多く、欧米各国と比較すると中国、インド、日本といったアジア諸国やオーストラリアにおける比率が高くなっている。しかし、再生可能エネルギーを含む自然エネルギーの割合は急速に伸びており、石炭の発電量に迫る勢いとなっている。

日本国内での再生可能エネルギーに対する取り組み

日本国内においては、2012年のFIT制度(固定価格買取制度)が開始されてから再生可能エネルギーの導入は増加しており、電源構成比でみると2011年度では10.4%だったのが2020年度には19.8%とほぼ2倍にまで拡大している。主要な再生可能エネルギーとして欧州では偏西風が安定的な発電量をもたらす風力発電が多くなっているが、日本では風力発電に適した土地や環境が少なく、従来の陸上風力に加え、洋上風力発電の導入・拡大などが進められている。代わりに日本では設置しやすい太陽光発電の割合が多くなっており、太陽光の導入容量では世界3位(2020年)の実績を誇る。

 日本国内の再生可能エネルギー導入は増加傾向にあるものの、依然としてエネルギー自給率は低く、クリーンエネルギーを中心とした経済社会・産業構造への転換(GX:グリーントランスフォーメーション)に向けた様々な施策を通して、再生可能エネルギーの主力電力化をめざしていくことが必要となってくる。

再生可能エネルギーが製造業に与える影響

 製造業におけるエネルギー消費は、省エネの進展などにより減少傾向にあるものの、依然として国内で最もエネルギー消費が大きい部門となっている。このような中、再生可能エネルギーが普及することによって製造業は様々なメリットが享受できると考えられる。具体的には「エネルギーコストの削減」「企業イメージの向上」「省エネ効果の向上」などが挙げられる。さらに、輸入に頼らざるを得ない化石燃料からの脱却、つまり社会情勢や為替相場の影響を受けずに安定したエネルギーの供給が可能となり、サプライチェーンの維持・強化にもつながる。

 このように、製造業における再生可能エネルギーの利用は、エネルギー効率や環境保護などの観点から、大きなメリットが見込まれる。しかし、再生可能エネルギーの導入には設備投資やメンテナンス費用などのコストがかかるため、資金面が厳しい企業にとってはハードルが高いという問題もある。そのため、政府や地方自治体などは再生可能エネルギーの導入を支援する制度や補助金等を用意し、様々な支援策を講じている。

持続可能な社会の実現に不可欠な再生可能エネルギー

 2015年の国連サミットで「持続可能な開発目標」を意味するSDGs(Sustainable Development Goals)が国連サミットで採択され、サスティナビリティという概念が世界中に広まった。日本国内においても、SDGsやサステナブルといった言葉が見聞きされるようになり、様々な企業でその取り組みを公表している。SDGsのうち、7番目の目標である「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」を実現するための手段として再生可能エネルギーは位置づけられており、サステナブル(持続可能)な社会を実現するために、再生可能エネルギーの導入や進化は欠かすことのできない要素となる。特にエネルギー資源の乏しい日本において、その役割は非常に大きいものとなるだろう。誰もが安心して安価にエネルギーを享受できる、そんな持続可能な社会の実現に期待したい。

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