コラム/海外レポート

2022.03.14

経営課題の「行き詰まり」の扉を開く時間の錬金術

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執筆者:

相澤 淳一

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日々の業務を3つに分類することで見えてくる経営課題へのアプローチ

錬金術とはガラスなどの卑金属から金・銀などの貴金属を生み出す術である。
ここで私の言う「時間の錬金術」とは、日ごろの業務・作業時間から、価値ある余力時間を生み出すことである。
余力時間を生み出し、その時間を、より価値を生む業務・作業に充てるという考え方が、行き詰ってしまった経営課題の扉を開き、その解決へと導く。

この考え方による経営課題へのアプローチは、現場で働いているスタッフの方、管理者、経営者の方、誰もが理解しやすく、そして誰もが取り組めるものだ。

経営課題解決のため、日々の業務を振り返って、とにかくやみくもに改善点や課題を出そうというアプローチをしても多くの会社でうまくいかないことが多い。

それをブレークスルーする具体的な方法として、日ごろ行っている業務・作業をまず3つに分類することから始める。そうすれば改善すべき対象に気づくことができる。

その3つとは、空歩行やモノ探し・場所探しなど、いくら時間をかけも価値を生まない「無価値な時間」、運搬や段取り、準備などモノを生産するのには必要な行為だが、直接は生産性向上には繋がらない「付帯時間」、そして条件設定や材料の投入、設備操作など実際にモノを生産する作業に必要な時間「価値時間」である。

このように分類して考えると、生産性向上のため、どの作業に積極的に時間を充て、どの作業に関わる時間を削減していくべきか、改善のポイントが明確になるのである。
私の経験でいえば、価値時間が全体の20%、付帯時間が50%、無価値な時間が30%ぐらいが一般的なモノづくり企業の平均だという感覚がある。
これをベースに考えれば、実に80%の領域において価値を生まない時間を削減する余地があるということになる。

少ない人員体制で経営課題の重い扉を押し開く「価値時間」創出の考え方

そうして業務改善を行い、価値を生まない作業時間を削減することで、余力の時間が生まれるわけだが、その余力は誰にもたらされるのか?
それは価値を生まない作業を行っていた作業者自身に余力が生まれるのである。それを作業者、現場のスタッフ自らが実感することが大切だ。
いわば改善活動の成果を体感するのだ。

そしてムダの削減から生み出されたその余力をどのようなことに使おうかと思考することで、前向きで正しい方向の経営課題解決のサイクルが動き出すのである。

そしてその余力はいずれ「各個人の時間の余力」というレベルから、徐々に「ヒトの余力」という考えかたに拡張することができるようになる。たとえば二人体制で行っていた作業の「ムダ時間」を削減し、一人体制でも業務が回せるようになれば、一人分、人数的な余力が生まれる。
この人材的な余力を、何か新しく価値を生むことに活用し、余力となった人材に他部門で活躍してもらえれば、企業全体としての生産性は上がり、それが経営課題解決の糸口にもなり得る。

これをテクノ経営がご指導する業務改善活動では「活人化」と呼んでいる。

この「活人」ができれば、少ない人員でも安定増産、品質力強化などが充分可能な組織づくりができるのである。

日々の作業を見直し、「なくしたい作業」、「減らしたい作業」、「価値を生む増やしたい作業」の3つを再認識し、それを骨格として改善活動に取り組み、人的余力を創出すれば、社内でより戦略的な人材の配置が可能になる。

この価値ある時間の創出と、その先にある「活人化」というアプローチが、行き詰った経営課題解決の扉をひらく一つのキーとなるのである。

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