コラム/海外レポート

2022.02.07

現場と経営の一体化、共感と気づきが生み出すコスト削減への業務改善

関連タグ:
  • コスト削減

執筆者:

手島 静雄

SNSで記事をシェアする:

  • LINE
「ありたい姿の共感」からはじまるコスト削減への業務改善

新型コロナウイルス感染症拡大をはじめ、昨今の製造業を取り巻く環境には先行きが不透明な要素が多い。ただ、逆の考え方をすれば現場を改善する大きなきっかけでもある。
業務を改善しコスト削減をしたいという思いは、経営者や工場幹部なら誰もが持つ考えである。しかし、そのコスト削減という意識が、実際に現場で働くスタッフにどう受け取られているだろうか?
コストを削減して利益率を上げ、会社が発展すれば自分たちに還元されるというイメージは、日々の業務を単純にこなしているだけではなかなか持ちにくいものである。
業務改善を確実に推進していくためには、まずは現場のスタッフと経営者・工場幹部との間で「どういう職場(工場)でありたいか」という目指す姿を共有し、それに向かって会社全体で進んでいく必要がある。

ものづくりのコスト削減においては、製品を量産し始めてから製造部門だけで工数を下げても、その効果には限界がある。
ものを作り出す前の上流工程、すなわち製品設計や生産設計、生産技術の工程において原単位を小さくし、コスト削減施策をしっかりと実施したうえで、製造現場でもさらにムダを省き工数を引き下げていく。コスト削減において大きな成果を出すためには、このような部門ごとの役割分担も必要だ。

増収が見込めないからこそ、効果的なコスト削減で増益を目指す

増収増益は当たり前の話であるが、この先行きが見えにくい昨今の製造業においては「減収であっても増益を実現する」という考え方のもとに業務の改善に取り組み、コスト削減においてそれを実現していきたいところだ。
ただ、改善活動自体が目的化してしまったり、現場スタッフの納得感がないままトップダウンで数値目標だけ示されても、業務改善によるコストダウンはうまくいかない。しっかりとした考えのもと、全員が改善活動の意味を理解したうえで取り組まなければコストダウンにはつながらない。まずは基礎的な改善活動に徹底して取り組むことで改善体質を作っていき、それを土壌にして自分たちの「めざす姿」を実現していくのだ。

「気づき」が生む、企業が一体となった業務改善

改善体質の作り方へのアプローチとして「気づき改善」がある。
現場で働くスタッフ、作業者自身が感じているムダ・ムリ・ムダを「気づき」として自ら発信し、ムダに関する感度を高めながら、それを改善していく「しくみ」を作ることだ。
たとえば気づきがあるとメモに書いて貼り、問題をひとつずつ改善していく。そうして多くの問題を解決することで、実際に作業が楽になったり、正確になったりといった実感を得ることができる。
それが業務改善への意義づけとなり、改善体質を醸成させていくのだ。

間接部門においてのコストダウン、生産性向上に向けてのアプローチも、製造部門と考え方は同じである。
目的遂行に直結した価値を生む業務と、付随業務、そしてその他のムダ業務との区分を行い、潜在化するムダ・ロスを発掘し、それを改善するというプロセスだ。
例えば自分たちの業務をフロー図にして書き出してみて、そこから皆で「気づき」を出し合い、ひとつずつ問題の洗い出しと解決をしていく方法がある。
ただ、間接部門が製造部門と違うところが、業務が複数の部署や部門をまたいでいる場合がある。そういう場合は、どの部署と協業で業務の改善を進めていくかを部署間でお互いに明確化し、連携して改善活動に取り組むことが大切だ。

事象への対処に終わらない具体的な業務改善へ

テクノ経営では、このようなコスト削減体質への業務改善など、企業の改革をご支援する出発点として「1日工場診断」を実施している。まずは経営層・工場幹部のビジョンをお聞きし、それに対して第三者として客観的な視点で現場の業務の実態がどうなのかを診断していく。
そこで出てくるのは両者間のギャップであったり問題点だが、それに対応するだけなら「事象への対処」に終始してしまう。
テクノ経営の「1日工場診断」では、その問題点の起こっている背景や要因をプロの目線で推察し、それに基づいた業務改善のシナリオをご提示するようにしている。

冒頭でも述べたとおり、コロナ禍など製造業にとって先行きの見えにくい状況が続いている。
しかし、この特異な状況は、長らく「当たり前」となっていた事象を見直す大きなきっかけともなる。

そういった時勢だからこそ、今一度、自分たちの「ありたい姿」を社内で共有し、業務の改善に乗り出してコスト削減に取り組む好機ではないだろうか。

ホームコラム/海外レポートコンサルタントコラム現場と経営の一体化、共感と気づきが生み出すコスト削減への業務改善