海外レポート

2021.11.04

コロナ禍と成長著しいベトナムの今後の趨勢

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「チャイナプラスワン」としてのベトナム

海外製造拠点を中国に集中して構えるリスク(賃金上昇・反日デモやストライキ等)を回避するため中国以外の国に製造拠点を置く、いわゆる「チャイナプラスワン」としてベトナムの注目度が高まっている。すでに大手の電子機器メーカーを中心に日系企業も製造拠点をベトナムに置いており、製品輸出金額においてASEANではシンガポールに次ぐ規模となっている。
背景には人件費の安さや、ベトナム政府が自由貿易協定締結を推し進めていることなどが挙げられ、売上高から原材料費や燃料費などの経費を差し引いた付加価格額も2010年以降増加傾向、工場用地の使用率も急上昇しているという情勢である。
ただ一方で、製造業がベトナムに拠点を構える上での懸念材料がいくつか露見してきている。

コロナ禍で見直されるベトナムへの投資の形

ひとつはいまだ猛威をふるう新型コロナウイルスの影響である。
直近の情報では多少の減少傾向がみられるものの、依然ベトナム国内の感染者数は4,000人規模(2021年10月末現在)と高く、ワクチン接種の遅れも指摘されている。
コロナの影響下で閉鎖された工場の中には日系企業やその関連先もあり、ベトナムで生産している工業部品類の供給に不足が生じる等の事態が起こっている。
ベトナムに限らず海外に製造拠点を持つ企業にとって、自国・日本の感染状況を注視しながら、拠点が所在する海外地域の感染状況にも対応しなければならない状態が続いている。
そして、コロナ以外にも製造業のベトナムへの進出・投資には構造的な問題も存在する。
今まで魅力的であった人件費が、大手企業による大量雇用で上昇傾向にあり、また工場建設用の土地価格・賃貸料も軒並み上昇の動きを見せている。
くわえてベトナムには以前より原材料の現地調達率の低さが懸念材料として存在し、かつインフラ整備の脆弱さから電力供給への不安も叫ばれて久しい。
日本企業のベトナムへの投資については、以前は生産原価を低く抑えるため安価な人件費の活用が主たる目的であったが、今では多くの日本企業が現地で市場を開発し、販路を発展させることを最大の目標としている。

ウィズコロナ、アフターコロナを見据えて

そういった意味では、ベトナムが今後どのようにこのコロナ禍を乗り越え、一時的に落ち込んだ国際競争力をどう取り戻すのか。また、コロナ禍以前より存在する諸問題にベトナムのみならず、そこに投資する各国がどのように対処をしていくのか。
もともと電子機器やディスプレイ等の分野で大きな海外投資案件を持つベトナムにおいては、うまくコロナをコントロールすれば、引き続き製造拠点として拡大していくであろうとの見方も強い。
アフターコロナ、ウィズコロナの経済情勢は、一国の感染状況に一喜一憂するのではなく、まさにグローバルな目線でみていくべき状況である。

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