海外レポート

2021.09.07

タイの状況について 現地コンサルレポート

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執筆者:

藤井 秀文

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Techno Management Consulting(Thailand)Co.,Ltd.
藤井 秀文

 
 当初はコロナ感染者の抑え込みに成功してきたタイだが、6月以降はデルタ変異株を中心に感染拡大が止まらず、毎日2万人前後の新規感染者が続出する状況だ。
 これに対しタイ政府は、感染者数の多い都県をダークレッドゾーンに指定。在宅勤務要請と共に夜間外出禁止や移動制限を含む都市封鎖、事実上のロックダウン状態が続いている。
 バンコク首都圏では、政府の政策に不満を訴えるデモが頻発。一ヶ月以上に渡るロックダウンに疲弊した市民と警官隊の衝突で負傷者が出ている。
 昨年のGDP(実質国内総生産)が-6.1%まで落ち込んだタイ経済。自動車産業と観光業が受けた影響は特に深刻だった。昨年来の渡航規制による外国人観光客の著しい減少で事業縮小や廃業に追い込まれる企業が相次いだ。
 製造業においては、日系企業の進出が多いアユタヤ県・サムットプラカーン県、チョンブリ県、ラヨーン県等の各地域で7月以降の感染者が連日1,000名を超え、日本人駐在員も数名が亡くなった。従業員に感染者が発生した企業では、14日間の隔離措置や工場の消毒による操業停止を当局より指示される企業が出てきている。
 こうした状況を受けて、タイ政府は工場や建設現場での新型コロナウイルスの感染拡大を防止するバブルアンドシール対策の導入を閣議承認した。定期的な抗原検査キットやPCR検査による感染者の発見を各事業所に義務付け、感染拡大を防止することが目的だ。
 タイ国内でのワクチン接種は、最も人口の多いバンコク都では少なくとも1回以上のワクチン接種者が7月末の時点で人口の60%を超えており、重症化・死亡者数は減少に転じる傾向にある。
 また7月中旬ごろからは、企業向けのワクチン接種が本格化。アマタシティ・チョンブリ工業団地では、毎日数十社の従業員がワクチン接種を受け、各工業団地でも職域接種が始まった。
 現在のロックダウンは8月31日まで継続されたが、9月1日より一部制限が解除された。ワクチン接種証明書やATK陰性証明書を条件に、店内飲食が可能になるなど、明るい兆しも出てきた。相変わらず店内飲酒の禁止や、夜間外出禁止は継続されている。
 日系企業の中には、駐在員の家族を日本に帰国させる企業、あるいはワクチン接種の為に、一時帰国を指示する企業も出てきており、まだまだ予断を許さない状況が続くことが予想される。
 7月にはサムットプラカーン県のスワンナプーム空港に近い化学工場で爆発事故が発生し、周辺5Kmで一週間近く立入り禁止となった。この影響で化学工場の周辺にある自動車部品メーカーが操業できなくなり、トヨタをはじめとした自動車メーカーも数日の間、生産を停止せざるを得ない状況に陥った。8月には、コロナの感染拡大で工場従業員の感染者が多く出た工場が多発して、またもや工場の操業停止となった。
 数々の課題を抱える状況ではあるが、タイでは輸出が好調で1~7月は前年同期比の16.2%増の1549.9億ドル。自動車産業などでは、企業の受注は130%を超える売上高を示している。
 世界経済の再開による需要急増、最近のバーツ安などが輸出好調の牽引力となっているようだ。7月に入って急落したタイバーツの対ドルレートは8月9日に33.40バーツという最安値を記録した。
 輸出は好調だが、先行きの不透明感が払拭できないため、増産に対しても、極力、作業者の増員は行わずに済ませたいという思いが現地経営者の中にはあるようだ。
 その為には、生産性を上げ、少ない人数で生産するか、納期遅延を出さない管理方法の確立など、課題は山積だ。今まさに、各企業の実力が試される時に来ている。日本人駐在員の減少を受けて、タイ人管理者の育成に力を入れる必要性を経営者も認識してきている。
まだコロナは褶曲したわけではない。今後も、政府や各都県行政から出る規制に対応しながら、この難局を乗り越えることが必要である。

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