海外レポート

2021.08.18

フィリピンでKAIZEN活動を行う場合の急所

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執筆者:

板屋 博行

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フィリピンも2020年1月に発生した新型コロナウイルス(COVID-19)により、現在(2021年8月)も度重なるロックダウンで経済活動に影響が出ている。
その中、日系工場は世界的な自動車や家電の好調を受け、忙しい状況であるが、各社、隔日出勤などの対策を講じて、操業し生産に影響がないようにしている。
 フィリピンの工場をコンサルティングして、素直な国民性であり、知識、手法の吸収は積極的であると実感している。
 きちんとポイントを押さえておけば、正確なアウトプットを出力し、改善活動は進み、経営成果は出ると考える。
そのポイントを以下に列挙する。

1. 問題点の「見える化」を図り、活動メンバーと「共有化」する。

KAIZEN活動は、活動メンバー(フィリピン人)と面談、生産性やロスなど、問題点を「見える化(現状と目標を数値化)」し、自分自身の問題として「共有化」することが大切である。
ここを外すと、活動が進まないことになる。
課題は曖昧にせず、具体的に何を(この工程のこの作業を)、どのように(レイアウトをこのように変更して、この手待ちを無くす)、誰が、何時迄にやるか(次回、確認する)を随時行い、最後はフィリピン人トップ含むラップアップ・ミーテイングで確認する。
日本国内のように「言えば分かるだろう」という考えは、排除する。

2. KAIZENチームはデザインチームとタスクチームに分ける。

デザインチーム(スキルが必要)は手法を駆使し、改善構想、試行、効果確認を行い、タスクチームは改善案を試行、効果確認、実行をし、経営成果創出に専念する。
生産性向上なら、タスクチームは投入人員の抑制を行う。
設備改善、工程変更をともなう案件は、エンジニア、品質管理を含め全社活動として行う。

3. 多能工化は必須。そのために、事前準備をしておく。

日本以外は、ジョブ型雇用であり、職務に応じて適切な人材を雇用するという形態であるため、多能工化に対する準備を事前にしておく必要がある。
小職の担当した企業は、フィリピン人トップが多能工化に理解があり、タスクチームのスーパーバイザー、リーダーを中心にスムースに進んでいる。
これは重要なことで、0.5人分の仕事を1人分として行うのが当たり前の文化であり、フィリピン人トップの理解とリーダーシップが必要である。

4. フィリピン人トップを押さえておく。

仕事の進め方はトップダウンであり、フィリピン人トップを押さえておく必要がある。そのためには、活動の目的、目標を十二分に理解してもらい、活動目標をKPIにするのも一つの手段である。
フィリピン人は日本国内以上に上を見て仕事をする傾向が強く、メンバーが行動しない時は、トップのリーダーシップが必要である。

 
 
フィリピンの人口は1億903万人(2020年現在)で、若年層の比率が高く、労働者を採用する側から見ると魅力はあるが、電力、港湾、交通事情、製造業の層の薄さなどまだまだ発展する余地が大きい。人材の基礎教育はこれからであり、優れた人材がいることも事実で、製造業の基本、基礎知識を正しく、正確に伝えて行くことが大切であると考える。

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