コラム/海外レポート

2021.08.10

企業業績コロナ前まで回復

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コロナ感染症が再燃するなか、国内企業の業績が急速に回復している。第一四半期の決算を発表した企業は502社のなかで、4~6月の損益がコロナ前の2019年同期を上回った企業は340社(日本経済新聞7月30日)。製造業では72%、非製造業も63%の割合でコロナ前を超える好業績となっている。
特に伸長したのは電気・電子機器と化学業界、自動車産業も急速に業績を回復した。トヨタ自動車は決算で過去最高益、また日産自動車も黒字転換が見込める状況に。5GやHPC(高性能コンピューター)需要を背景に業績を伸ばした半導体検査装置のアドバンテストでは2年前の160%という純利益を打ち出した。
米国ではコロナ禍のなか新築・増改築需要が急増。いわゆるウッドショック(木材の供給不足による価格高騰)が住宅業界で顕在化しているが、米国での住宅需要の拡大により、建築塗料や住宅設備などに関わる化学メーカーが大きく利益を伸ばしている。また非製造業でも巣ごもり需要を捉えたゲームソフトや物流事業、業務のデジタルシフトやテレワークを支える通信、システム会社が増益を続けている。コロナ禍がもたらしたニューノーマルな日常。モノとコトの融合が業界を超えたビジネスの可能性を巻き起こしている。
ただ先行きの不透明感もある。たとえば東南アジアでの変異株の拡大と半導体不足の行く末がモノづくりでは不安要素となっている。当初、コロナ封じ込めに成功していたタイやベトナムでは4月に入って変異株が流行。3.8%とワクチン接種率が低いこともありベトナムでは8月8日の感染者が過去最多の1307人を記録。タイでも9日の新規感染者が9000人を超えた。工場での集団感染が発生したベトナムでは操業停止が避けられず、主要都市のバンコクやホーチミンでも事実上のロックダウン体制に入った。6月にロックダウンが導入されたインドネシアでは自動車産業の生産停止が続いているという。一方、世界的な品不足が続く半導体は、米中による囲い込みもあり、海外調達が安定期を迎えるには相当の時間が必要だと思われる。
今後の業績見込みについて大手に対して中小企業ではどうか。かつては株式で広範囲から資金調達できる大企業に比べ、金融機関からの借入依存度が高い中小企業では自己資本比率も低い傾向があった。しかし今年の『中小企業白書』によれば、最近の中堅企業(資本金1000万~1億円未満)では自己資本比率が大企業並みの水準になってきたという。そして、これはリーマンショック後の2010年頃から利益剰余金の割合を高めてきた結果なのだという。
ただ同書は損益構造における大手と中小の格差についても言及している。たとえば損益分岐点比率という指標がある。損益分岐点比率とは、売上高の減少に対する耐性を表すもの、売上高が現在の何パーセント以下になると赤字に転落するかを示す。それはコロナ前(2019年)時点で、大企業60%、中規模企業85.1%、小規模企業では92.1%という数値だった。やはり中小企業経営には労務費や材料費アップなどの影響が深刻に響く。
業績回復にある今こそ、企業経営のネックとなるコスト構造の見直しを計り、経営環境の変化に迅速に対応できる社内体制を構築することが必要ではないだろうか。