コラム/海外レポート

2021.06.29

ジャスト・イン・タイムと生態系

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トヨタ生産方式の二本柱とは、自働化とJIT(ジャスト・イン・タイム)である。自動化とは「人の作業」を単純に機械に置き換えること。これに対して、ニンベンのついた自働化では機械が異常を発見して設備を停める。つまりトラブル発生時の「人の働き」が機械に置き換えられているわけだ。だから一人作業での多台持ちも可能になる。
自働化は工場内で完結する話だが、もう一つの支柱であるJITは「必要なモノを、必要な時に、必要なだけ供給する」という発想であり、外部のサプライヤーとの協力関係で成り立っている。
市場の変化に対応したコスト削減の手段として、JITは自動車産業の枠を超えて、幅広い業種・業界でも取り入れられるようになった。たとえば限られたスペースに売れ筋の新商品を迅速に供給する流通業をはじめ、Uber eatsで働くことも、コンビニの棚割りにもJITの考え方が取り入れられている。ムダな在庫を持たないJITが実現可能になった背景にはデジタル技術や物流システムの進展がある。
このようにムダを省いて利益を追求するJITの考え方は理想的である。ところが今回のコロナ禍ではその弱点が見つかった。パンデミックによる混乱で、部品を供給する工場の稼働が停止すると、物流が滞りモノがつくれない。自動車産業ではアメリカやアジアなどの海外工場を含め生産ラインが停止を余儀なくされ、医療現場ではマスクや保護具などが供給不足に陥った。世界的な半導体不足の影響で自動車だけでなく、家電品などの流通の現場でも品不足が続いている。
JITを維持するには、それを下支えする協力工場やサプライヤーとの連携が極めて重要である。その意味で、産業界を取り巻くモノや情報の流れは、実は地球を取り巻く生態系(エコシステム)とも強く関係しているのではないか、熱帯雨林の伐採、湿地や緑地の減少、地球温暖化、食物連鎖の崩壊など、過度の開発によって引き起こされた自然破壊が生態系のアンバランスを引き起こす。その結果、異常気象や洪水、大気汚染など、想定外の自然災害によりサプライチェーン断絶が引き起こされた。また、近年、高い確率で発生が予想されている中南海トラフ地震なども身近に迫る脅威である。
経済産業省による『ものづくり白書』2021年版には、ニューノーマル時代のものづくりとして、「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」という3つの潮流が提言されている。レジリエンスとは打たれ強さ、つまりコロナ禍からのサプライチェーンの回復力であり、グリーンとは脱炭素社会への指向、デジタルとはDXによる革新的な生産性向上である。
一部分だけの利益を考えて生産性向上を目指すのでは結果の断片化を招く、またそれでは相互の連携が進まない。これからは不測の事態を想定して、あらかじめ対策を検討しておく。そして全体的な視点からビジネスを捉えることがますます必要になる。モノづくりも生態系と同じようにバランスが一番大切なのだ。

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