海外レポート

2021.06.08

北京オリンピックから13年 中国はどう変わったか

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コロナ感染症からの回復

中国国家統計局によれば、1~3月期(2021年)のGDP(国内総生産)は前年同月比18.3%増と急上昇。コロナ禍による前年の落ち込みから一転して、過去最高の成長率を記録。日経による中国エコノミスト調査は、2021年のGDPの伸び率を8.5%と予測している。
武漢が発生源ともされるコロナウイルスだが、中国では国家的な対応がずば抜けて速かった。各地でのロックダウン(都市封鎖)実施。保管が便利な不活化ワクチンをいち早く開発・製造。2020年12月には安全性と有効性の基準に達したとして、国内で利用開始。シノファーム(中国国家医療集団)が製造した不活化ワクチンは世界の45ヵ国以上で使われている。
財新/マークイットが発表した5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は52.0に上昇した。PMIは50を上回ると景況の拡大を示す。医療機器やマスクなどの衛生用品、在宅勤務向けのパソコン等の電子機器の世界的な需要拡大で、中国からの輸出は過去数カ月間で急増。これがパンデミックからのV字型回復を下支えする要因となった。
大規模会場での接種回数は延べ6億8千万回以上に達し、中国国内ではほぼコロナウイルスは収束期を迎えているという。経済活動も順調に回復し、終夜営業する飲食店なども増えてきた。
やはり中国という国家体制だからできることなのか。
お年寄り優先の日本とは反対で、中国のワクチン接種は若い年代層から始まった。社会活動の主体である18~59歳から開始し、60歳以上は最後に実施するという考え方だ。
外国籍者にも3月からワクチン接種が可能になり現地の日本人も受けているという。有料で100元(約1700円)必要だが、スマホアプリで簡単に予約。3週間後に2回目を接種するとワクチンパスポート(医療機関による証明書)が発行される。

変わりゆく北京の街

北京オリンピックから13年。北京の街は近代的な都市に変貌した。もともと北京の街には伝統的な四合院住宅が立ち並ぶ胡同(hutong)と呼ばれる路地や横丁が無数にあり、たとえば「金魚胡同」や「蘇州胡同」など、それぞれの土地の由来にちなんだ名称が付けられていた。
その起源は元代に始まり、明・清代を経て700年に近い歴史を持っている。ところが解放後の中国では一つの四合院住宅に何世帯かが一堂に同居する「大雑院」として利用されていた。界隈には商店や「小吃(xiao-chi)」と呼ばれる屋台などもあり、過密で風呂はなく共用の炊事場、共同トイレといった極めて不便な生活環境で暮らす人々が多かった。
それらの胡同の大半は再開発により取り壊され、人民の多くは近代的なアパートやマンションに移住することになった。かつて胡同に暮らした老北京たちは、いざこざも多かったが人情があった昔の暮らしを懐かしむ。しかし一方で中国社会の発展スピードは留まるところを知らない。
そして北京には新しい街が現れた。たとえば朝陽区のショッピングモール「三里屯太古里」。手がけたのは日本人の建築家・隈研吾。かつて北京オリンピックのメイン会場があった場所。近くには外国公館も多い国際感覚の漂う文化的な地域だ。欧米ブランドや日本のユニクロなども入店、もともと高い中国人民の消費意欲を刺激している。支払いは電子マネーが常識。お店ではQRコードをスマホで読み取って決済する。中国といえば屋台も多いのだが、そうした個人経営の店でも電子マネーが普通に使用可能だ。

環境改善に取り組む中国

少し前まで、中国で普段の足といえば自転車だった。ところが最近は北京でも大量の電動バイクが走っている。電動バイクは免許不要で自転車道を通行可能だから、自転車から乗り換える人が急増した。ただ電動バイクは音もなく近づいてくるので危険なので細い通りでは注意したい。またバイクの充電中にバッテリーから発火する事故も多発。急速に普及したが品質が追いついていないようだ。 
2013年に話題になったPM2.5大気汚染。日本でも越境汚染で騒がれた。確かに5年ほど前まではスモッグによる大気汚染のため「1週間で空気清浄器のフィルタが真っ黒に」ということもあったと聞く。ところが現在では格段に改善、北京でも青空が見えるようになった。工場の環境対策や石炭消費の低減が功を奏している。電気自動車の普及では、2035年までに電動化でガソリン車排除、2060年までにCO2排出量ゼロにすることを目標にしている。
伝統的な街も小奇麗に。めまぐるしい変化にすばやく適応する現代中国人の感性。そこから何を学ぶべきなのだろうか。

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