コラム/海外レポート

2021.04.02

『日本のものづくりを未来へ繋げるために』(共同カイテック株式会社 様)

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ギリシャの詩人ホメロスが書いたとされる叙情詩『オデュッセイア』に登場する老賢人「Mentor(メントール)」は、オデュッセウスがトロイに遠征する際に、勝利へ導く助言をする存在であり、オデュッセウスにとって信頼できる支援者であった。そこから「メンター」という言葉は「助言者」「教育者」「恩師」などの意味で使われるようになったという。近年はメンター制度を導入する企業などが増えていることから、メンターのことを新人や若手社員の相談相手のように捉えがちな側面があるが、実際にはメンターの活躍する分野はもっと多岐に渡る。メンターは目の前の業務課題のみならず、仕事や人生という、非常に大きなテーマを扱う支援者であり、自身が仕事やビジネスで成果を出した実務経験が求められる。

「清水先生が折に触れて言われることとして『現場で何が起きているか?行かなきゃわからない』という言葉があるのですが、今実際に現場の改善を進める中、その重要性を本当に実感しています」

そう語るのは共同カイテック株式会社・企画開発課 課長 鈴木康之氏。2020年7月から稼動開始した同社の新拠点「綾瀬プラント」建設プロジェクトをリーダーとして推進する中、テクノ経営ウェブソリューションズのコンサルタントである清水英男との出会いがあった。清水はこれまでに50棟以上の工場建設プロジェクトの実務やコンサルティングに関与した実績を保有しており、その豊富な経験とノウハウを惜しむことなく顧客企業に提供している。鈴木氏と共に新工場建設プロジェクトのサブリーダーを務める製造技術課 課長 島田裕士氏は

「新工場建設は製造技術力が試される場だと思うのですが、私自身これまで製造技術としてのノウハウを人に教えてもらったわけではなく、未熟な部分があることを自覚していました。そのため自分にとっての製造技術の師匠のような存在が欲しいと以前から思っていました。清水先生の印象は製造に対する熱意がすごく感じられる方で、やはりそういう熱意を持っている人の力は強く、自分達の背中を押してくれるような気がしました」

清水が講師を担当した「工場レイアウトセミナー」に島田氏が参加したことがきっかけとなり、鈴木氏と島田氏は清水と共に新工場建設、既存工場の改善という大きな経営課題に取組み、社員を巻き込みながらプロジェクトを推進している。社内、社外という垣根を越えて「ものづくり」という共通テーマで結ばれた絆は、師弟関係のようにも感じられ、コンサルタントの役割にメンター的な要素が加わることで、より充実した活動へとつながっているように思う。
高度経済成長期以降の日本経済を支えてきた製造業は今大きな変革期にある。労働人口の減少、第四次産業革命、コロナ禍以降の不確実性の時代など、予測される様々な変化に柔軟に対応し、常に変革し続けることが、今後の製造業には求められる。このような状況において企業の生産技術者は何を指針にして、成長へのロードマップを描けば良いのだろうか?その答えの一つがこれまでの日本のものづくりを支えてきた個人の技術やノウハウ、そしてその「魂」の継承にあるのではないかと思う。ものづくりに関わる各企業には、これまでの歴史の中で積み重ねてきた、これらの言わば無形資産のようなものが存在するはずだ。しかしそれらの大半は個人の暗黙知として留まり、貴重な情報の社内共有はあまり進んでいないように思われる。今後の製造業における競争力の源泉として、デジタル化は避けて通れない道だが、これまでに蓄積された知識や経験を「形式知」として可視化し、生産技術者が自由に活用できるようにすることも重要な視点であり、そういう意味から豊富な経験を持つ外部コンサルタントの知見やノウハウの活用も、社内だけでは困難な生産技術の継承に有用な方法の一つとなり得るのではないだろうか。
清水はかつて1970年代に繰り広げられたビデオ規格の覇権争いにおいて、絶対的不利な状況から大逆転劇を成し遂げたメーカーの生産技術部門の責任者として関与していた。その伝説は映像などを通じて今も語り継がれ、動画紹介サイトでそのエピソードを視聴した鈴木氏もその内容に大変感動したという。そこからさらに長い年月をかけて磨き上げた製造技術の知識と経験は、今コンサルティングという形で多くの企業の生産部門に伝えられている。

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