コラム/海外レポート

2021.03.17

自動車産業が変える未来の社会

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トヨタ自動車が未来型都市の建設を発表。先日、建設に先立って地鎮祭が執り行われた。
都市が築かれる場所は静岡県裾野市の工場跡地。東京ドームの約15倍、70万平米という巨大な空間だ。自動運転やAI技術、ロボット、パーソナルモビリティの実験都市とする構想だが、民間企業で国家級のプロジェクトに取り組めるのはトヨタならである。最先端のテクノロジーを活かしたリアルな実証の場として、今後の進展に注目していきたい。
Woven Cityと名付けられた都市には最初は360人ほどが暮らす想定。AI技術を活用した健康管理やロボットによる生活支援やインフォメーション、MaaS(Mobility as a Service)事業に役立てる移動実験などが行われるという。地上には完全自動運転の車が走る高速道路と歩行者道路や小型EV車用の道路が、地下にはモノを運ぶ物流車専門の道路やインフラ設備が整備されるという。トヨタでは、期限を決めずに都市づくりを進める方針で、ゆくゆくはトヨタの社員や実験関係者を中心に2000人程度が暮らす都市づくりを目指す。

CASE(コネクティッド・自動運転・シェアリング・電動化)と呼ばれるように、自動車産業を取り巻く環境は100年に一度と言われる変革期にある。これからは新たな価値の創出でものづくりとサービスの融合が進んでいくことが予想されるが、なかでも自動運転と電動化は自動車産業の構造を大きく変える二大要素となっている。
世界の企業がしのぎを削る完全自動運転の実現。IT企業との連携により公道での実験を続けられているイギリスやアメリカをはじめとする主要国。ドイツではレベル4(特定の条件下でドライバーを必要としない自動運転)の解禁に向けて法整備を進める。一方、百度(パイドゥ)は湖南省長沙市で一般公道での500台を走らせる無人自動運転実験を実施、北京市でも始める予定で、アメリカのカリフォルニア州での公道走行試験の許可も取得する勢いである。

一方、電動化については、ゼロ・エミッション社会の実現に向けた取り組みを決めたパリ協定後、ガソリン車を廃止し電動自動車や燃料電池車に置き換える世界的な動きが始まっている。2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策を続けるEU。イギリスやアメリカの一部では2035年を目途にガソリン車の新車販売が禁止される。そして日本政府も昨年12月、2030年代半ばまでに乗用車をすべて電気自動車にする方針を発表した。
主要部品がエンジンやトランスミッションからモータやバッテリーなどの電気系の部品に置き換えられる。従来の下請け構造の変化、新たに参入する企業も増えてくる。
電気自動車を構成する部品数は少なく、ガソリン車と比べて半減。ガソリン車で使われる部品は約3万点だが、電動化でエンジン関連の約7,000点、駆動用や電装品では数千点の部品が不要になる。同時にエンジン車特有の部品間のすり合わせも不要になり、約300万人とされる部品メーカーでは10%の人員減になると予測されている。自動車産業の構造改革を取り巻く、新たなビジネスチャンスをどうとらえるか。いま一度、将来を見据えた競争力の源泉を考えてみたい。