海外レポート

2021.03.09

コロナ禍から驚異的な回復を示す「世界の工場」中国製造業の今

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米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると日本時間3月8日午後10時時点で、世界の新型コロナウイルス感染者数は1億1691.1万人で世界最大の感染国である米国が2900万人で全体の約25%を占める。2位のインドが1122.9万人、ブラジルが1101.9万人。1月中旬頃は世界全体の新規感染者が1日当たり70~80万人程度だったが、直近では1日当たり30~40万人台程度に落ち着いている。そうした中で、ブラジルは変異株の拡大などで1日当たり6~7万人ペースで感染が拡大している。変異株は日本国内でも3月5日時点で20都府県において感染者が確認されており、神戸市では検体の15%から検出され、地方ではクラスター(感染者集団)も発生している。現在の『第3波』の収束前に、変異株が本格的に広がれば感染の『第4波』が発生する可能性があるため、依然予断を許さない状況が続いている。
一方で2月に日本国内での接種が開始され、ウイルス押さえ込みの強力な武器として期待が高まるワクチンについては、世界保健機構(WHO)などが主導し、新型コロナウイルスのワクチンを共同調達して公平に分配する枠組み「COVAXファシリティー」が5月までに142の国と地域に、英アストラゼネカ製のワクチン2億3700万回分を分配することを発表するなどグローバルな取組みも進みつつある。

これらの新たな動きを背景として、世界的な景況感が上向きつつある中、現在の世界経済を牽引するのは製造業だ。コロナ禍以前、米中貿易摩擦の不透明感が世界経済を覆っていた頃は、製造業の低迷が目立つ一方で、サービス業が底堅く推移し景気回復を支えたが、今は当時と製造業・サービス業の立場がそっくり入れ替わったようだ。日本国内の製造業でも2021年3月期の業績予想を情報修正する企業が相次いだ。自動車生産の回復が追い風となり、幅広い業種で業況が改善している。他方世界に眼を向けると、コロナ禍からの驚異的な回復力を示している「世界の工場」中国の動向に注目が集まる。
中国製造業回復の原動力は、主に海外からの需要によるものだ。中国では武漢市で12月下旬から世界で最初に新型コロナウイルスの流行が始まったが、国家主導の強力なロックダウン措置により、新型コロナの流行封じ込めにほぼ成功したとされており、経済活動を早期に再開することができた。対照的にコロナの感染拡大に歯止めが掛からなかった他の多くの主要国では、工場の生産体制が正常化するまでに時間を要することとなり、中国に対する海外からの受注が増えた。6月以降、中国における輸出の前年同月比増加率は徐々に拡大し、2020年12月は18%だった。そのような状況下で2020年の輸出をけん引したのは新型コロナ関連の製品で、マスクを含む織物が前年比29%増の1538億ドルに達した。
地域別では全体の2割近くを占める米国向けが7.9%伸びたほか、欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)向けもともに前年を6.7%上回った。調査によると、世界の輸出に占める中国のシェアは、2020年の第2・四半期と第3・四半期は13%を突破、2019年の11%から上昇した。

さてPMI(購買担当者景気指数)は企業の購買担当者に新規受注や生産、雇用の状況などを聞き取り、景況感についてアンケート調査した結果を指数化したものであり、50を判断の分かれ目としてこの水準を上回る状態が続くと景気拡大、逆に50を下回る状態が継続すると景気減速を示す。新型コロナウイルスの拡大押さえ込みに向けて武漢市のロックダウンが開始された1月23日の翌月、中国国家統計局が発表した2020年2月の製造業の購買担当者景気指数(PMI)は前月より14.3ポイント低い35.7で、リーマン・ショック直後の2008年11月(38.8)を下回り、過去最低を記録した。しかしそれから1年が経過した2021年2月28日に中国国家統計局が発表したPMIは50.6と前年同月比で14.9ポイント上回り、景気の拡大・縮小を判断する節目の50も12カ月連続で上回った。統計局の専門家は、春節(旧正月)の大型連休が昨年の1月下旬から今年は2月中旬にずれ、製造業の活動が低下する時期に当たったため1月から小幅に低下したが、企業の先行き見通しは堅調と指摘している。このように中国の製造業PMIは、中国景気の回復と海外景気の持ち直しを背景に、全体的に安定した回復を続けている。これら製造業の好調を主要因として、中国経済は2020年に主要国で唯一プラス成長を確保し、2021年はさらに力強く成長する見通しだ。

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