海外レポート

2021.02.26

コロナ禍のタイ・ASEANにおける各国経済の最新状況

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2020年3月中旬から始まったASEAN各国のコロナ禍によるロックダウンは、国による若干の違いはあるものの、基本的には人の動きを止める事を目的とするものだった。
その後タイでは2020年7月から本格的に規制が緩和され、タイ国内の人の動きも活発化してきた。こうした流れの中で、産業別に企業の状況が変わってきた。

タイの主要産業である自動車産業では、海外輸出が増加した関係で、2020年3月前半までの状況と同じ受注量程度まで増加してきた。その後2020年8月以降は、企業の受注は110%→120%→130%と増加してきたが、2021年に入っても企業の受注は120%を超える状況が続いている。6月までの生産量も昨年1月~2月比で120%程度を維持しており、このままの状態がキープされる可能性が高いと思われる。

また昨年は、コロナ禍の中で企業存続の為に人員整理を進めた企業が多く、急激な受注増の中で人員不足が露呈してきた。タイの日系企業としては【企業存続の危機】から脱し、【生産増加への体制】へ舵を切ったと言える。

現在のタイの日系企業の課題としては、
1) 生産量増加に対しての人員不足対策
※先が見えず増員し辛い(短期の派遣社員の定着と人の確保)
2) 生産性向上(少ない人員で生産できる、または人を増やさずに増産対応)
3) 生産管理の強化
4) タイ人管理者の育成
5) 日本人駐在員の削減

実際に多くの部品メーカーでは生産が間に合わず納期遅れや、品質不良による品質クレームが増加している。現場のマネージャー達はこれらの変化に対して対応できていない事が多く、コロナ禍の前のままの考え方や行動のため、変化できていないことから、企業経営者の声として、タイ人管理者の育成が急務となってきている。
ASEAN各国でも、この状況は変わっておらず、自動車産業を中心に、人員不足状態が露呈している。生産性向上、品質不良対策など各社これらの改善に手を取られているのが実情である。

一方で、タイでは2020年11月中旬からチェンマイ県でミャンマーからの不法帰国者による感染拡大、2020年12月中旬からの外国人コミュニティーからの感染拡大が他県へも飛び火して、一部の県でロックダウンが発生した。2月中旬より順次規制が緩和されてきたが、現在でも、規制が解除されていない場所もある。
2020年12月下旬頃に第二波のコロナ感染拡大で、前回とは違い県間移動の規制が入り、実際にチョンブリ県では検問を行うなど、前回のロックダウンよりも厳しいものとなった。
部品配送や人の移動に規制が入り一部混乱したが、2月末現在ではそれも緩和され、元の状態に戻りつつある。この2回目のロックダウンでは、物流の混乱で部品の入荷タイミングが遅くなり、生産遅れが生じる会社も出るなど、企業経営者からは「もうロックダウンはやめて欲しい」という切実な声も聞かれる。

さらに2020年3月から続く、コロナ禍の影響で、仕事の仕方にも変化が出てきている。
入国制限は現在も続いており、コロナ禍の前までは、日本からの出張で本社経営陣が来タイする事も多かったが、入国制限が解除されない為に、日本本社との会議や、決算報告会などがリモートでの開催となった。当初タイ日系企業の経営者からは、これまでの方式と変わってきたことに戸惑いもあったが、現在では当たり前にリモート会議を実施しており、今回のロックダウンでも、客先との打ち合わせをリモートで行う様になって、ニューノーマルな状態となりつつある。
こうしたリモート会議や打ち合わせが普通になってきた影響もあり、日本人駐在員を削減する企業も出てきたのは新しい動きである。日本人がタイに駐在すると、1人当たり約1000万円~1500万円といわれる費用が掛かることから、企業経営者から見ると、必要最低限の日本人駐在員で会社を廻す為にも、タイ人の管理者の教育が必要であるとの認識が強くなってきているのは今回のコロナ禍の影響であろう。

もう一方で、タイの主要産業として観光産業があるが、タイでは入国後15日間の強制隔離(ASQ)による入国制限の影響で、外国人観光客の入国は非常に少ない状態が続いている。2月17日に新型コロナウィルス状況管理センターからの発表で、外国人観光客が70人ほど、プーケット島の高級リゾートホテルで別荘検疫に入るとの発表があった。
プーケット、サムイ、パタヤなど国際的なリゾート観光施設が多いタイでは、コロナによる入国制限で、多くのホテルが閉鎖状態であり、タイ国内のホテルでも廃業したホテルが続出している。また、開業しているホテルでも、コロナ禍前の宿泊料金の50%~70%のディスカウントをしているホテルも出てきており、タイの観光業は相当な打撃を受けている状態である。タイの外国人旅行者によるインバウンドはGDPの12~14%を占める。ちなみに日本は1%以下であると聞く。両国を比し、また日本の状況を振り返った時、タイにおいてのその影響は筆舌に尽きぬ破壊的なダメージであることは想像に難くないであろう。

観光業に携わる人々の生活の困窮度合いもひどく、ますます厳しい状態になってきている。
我々、タイに駐在している日本人の多くが一年近く帰国出来ていない。家族と会えない状況は精神的にも影響を与えており、一日も早く、ワクチンの接種による人の移動制限が解除されることを望みたい。

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