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2020.11.11

ハンコください!は終わり?~生産性向上への着眼点~

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今回は日本のハンコ文化についてである。会社ではハンコがないと仕事が進まず、いつ押印されるのかと気苦労が絶えない。部下から上司へと上がっていく意思決定の仕組み。それがハンコによる承認の仕組みである。コロナ感染症の流行により、テレワークなどに適合した仕組みも登場しているが、結局はデジタル押印に変わっただけでハンコ文化の呪縛から逃れられないのである。
コロナ禍で働き方の環境が一変。事務作業から会議まで、たいていのことはテレワークでできてしまう実態が明らかになる中、昔からのハンコ押印が社内の重要な仕事として取り残されている。在宅勤務なのにハンコのために出社する社員が多くいるという実態。ハンコ押印の慣習は依然として日本の企業社会に強力に根付いているのだ。

世界的にも日本はデジタル化が遅れた国だ。国際比較でも労働生産性は低いとされる。その足を引っ張るハンコ文化に対して、総務省の有識者会議では、EUに倣って電子証明である「eシール」を2022年から運用することを決めた。
「eシール」とは、法人が作成した電子文書の信頼性を証明するもの。ハンコ文化の世界でいえば会社の角印に相当する。わざわざハンコを押さなくても正しい文書であることを証明してくれる仕組みである。ハンコ押印の目的はデータの信頼性を保証すること。「eシール」があればハンコは要らないことになる。

ペーパーレス化と押印の見直しで生産性を上げる。菅総理は10月7日の規制改革推進会議で行政手続きの書面や押印を抜本的に見直すよう指示した。今後は従来のハンコ文化も電子承認に置き換わっていくのか。しかし、一方でハンコ生産地である山梨県の長﨑幸太郎知事もツイッターで苦言を呈したが、やはり日本の伝統としてのハンコ文化は完全にはなくならず存続してほしいとも思う。

ものづくり現場でも、働き方改革の視点からも、見直すべき改善点は他にもある。
たとえば日本の労働生産性は低いというが、仕事の品質レベルは諸外国に比べて格段に高い。
しかし、過労死するほど残業して働いても生産性は欧米と比べて圧倒的に低い。その背景の一つとして、顧客側が求める品質要求に対して、過剰サービスで応えようとする傾向があるようだ。
欧米ではそこまでの過剰サービスは行っていないのではないだろうか?一ヵ月の有休を消化し、バカンスも取って、それでも生産性が高い理由がそこにあるような気がする。彼らは余計と思われる業務には時間を割かないのだ。

生産性向上の着眼点として、改善の4原則(ECRS)がある。ECRSとは、排除(Eliminate) 結合(Combine) 交換(Rearrange) 簡素化(Simplify)。これらの視点で日常業務を見直してみることも意義のあることではないだろうか。

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