コラム/海外レポート

2020.10.21

現状維持バイアスと環境の「小さな」変化
~ゆでガエル理論~

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 私たちは普段何気なく目にしている日常の風景に気を配ることがあまりにも少ない。特に都会に住んでいると四季の移ろいも感じにくく、クールビズが過ぎても、相変わらず半袖のままで会社に通勤していたりする。それで秋が深まってから重い腰を上げるように冬支度をはじめる結果となる。
 「人間は変化を嫌う生き物」だといわれるが、これは原始時代の生き残りを賭けた生存本能に由来する。人類のような弱い生き物にとって未知の土地を求めて放浪することは大きなリスクを伴う行為だ。どんな外敵が潜んでいるか判らず、また食料や住居が確保できるという絶対的な保証もない。
 だから余計な冒険をするよりも現状に安住する方が安心・安全。できるだけ今までの環境や習慣を変えずに過ごしたいという固定観念に囚われてしまう。これを心理学的には「現状維持バイアス」というらしい。
 しかし一方で「生物は変化により進化してきた」という事実がある。自分は現状に甘んじたくとも、周りの環境は無関係にどんどん変化を続けていく。
 「カエルを鍋に入れて火にかけると茹で上がるまで気づかない」という思考実験があるが、実際にはカエルも馬鹿ではないからそんなことは起こらない。むしろ怠惰な人間なら茹で上がる人が出てくる危険性があるかもしれない。
 「安全第一」という標語を掲げて、これで安全が確保されたと考える人はいない。しかし人は往々にしてスローガンや計画を立てれば、これで実現できたという思い込みに囚われてしまうものだ。しかし、いちばん大切なことは実行することで新しい環境を創造していくことなのである。リーダーには他者の言動に左右されない強い主観性も必要で、それが独自の座標軸をつくりあげるのだと思う。
 変化する新しい環境に適応できなければ生き残ることは難しい。これはコロナ後の環境変化をどう生きるかに通じる課題でもある。
 それでは現状維持についての固定観念を捨て、変化を読み解く力を養うためにどうするか。
そのために私が心がけていること、それは「キョロキョロ見る」ことである。
 大脳生理学でいう「アハ体験」とは、瞬間的に閃く「あっ」という気づきのことらしい。あまり一点を凝視すると変人と思われるからキョロキョロ見ることがコツである。
 一時流行した路上観察というのがあるが、電車の中でも道端でも視覚をはじめ五感に入ってくる情報量の大きさは実は膨大なものである。ところが実際には無意識にやり過ごしていることが多く、ふとした小さな変化に気づかない。それが季節の変わり目が読めない冒頭の話につながってくる。
 いつも何気なく見過ごしているものを違った視点でとらえてみる。普段見慣れたものでも、見方を変えれば全く別のものにみえてくる。身近な空間にも新しい発見は無数にある。それにより目にしていても気づかなかったものが時空を超えて姿をあらわす。
 これは改善のネタ発見にも通じることである。

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