コラム/海外レポート

2010.12.15

間接業務改革のポイント(3)

関連タグ:
  • 人材育成
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  • 技能伝承
  • 働き方改革

執筆者:

丸田 幸寛

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
3.成果を生み出す間接改革
(2)マルチスキル化と技能伝承

生産革新や間接部門の改革において、マルチスキル化・多能化と言った言葉は、さまざまな企業で耳にする言葉です。現場組織ではあたりまえの課題、効率化を図っていくための共通語にもなっています。
マルチスキル化が進んだ組織は、さまざまな組織を越えた助け合いや、協働化を生んでおり、活性化された組織として賞賛されることになります。その中で人々は生き生きと仕事を行っている様子を目にします。多品種少量生産に対応するために、多くのスキルを強化し、さまざまな顧客要求に対応して行くためには、大きなメリットであり、新たな価値を生み出す財産でもあるとされます。一人屋台生産で代表されるようなマイスターを現場では数多く生み出すことが出来るようになりました。
しかし、これを否定的な見方でみると、そもそも、マルチスキル化の言葉自体、マルチスキル化されていない環境に対する課題であり、組織が大きくなるにつれ、機能がスキルごとに細分化され、その結果、スキルの向上自体が目的となってしまった結果でもあります。業務が属人化されていることの問題に対して、マルチスキル化の課題が発生するものだと考えます。業務の属人化を徹底的に進めておきながら、後になって、その弊害を対処するのがマルチスキル化では、本末転倒と言えるでしょう。
企業で働く従業員のスキルがマルチ化されていることは、さまざまな余力を別の価値業務に振り替える利点がありますが、重要なのは、業務の流れの分断がなくなり、あるいは、業務の連結の部分の流れが強化され、そこで発生するさまざまな問題を事前対処できることにあると考えます。より効率的から、効果的な業務の流れを構築することが間接部門の新しい考え方となります。
業務の流れを接点という言葉で表すことができますが、ここでは節点という言葉を用います。物理(半導体)用語で言うとコンタクトとジャンクションになります。節点は摺り合わせにより、前後の交わりがより深くなったものと考えてください。この節点が流れの中の業務の自然の協働化であり、マルチスキル化を行う上での原点と考えます。このように、業務を組織で行えば、必ず節点があり、節点を単なる接点としなければ、改善組織の中では自然に協働化が生まれることになります。企業の成長拡大による分業体制が知らず知らずの内に業務を分断し、節点を失わせ、よくて接点、悪ければ、接続も出来ない業務の流れの分断を生み出していたと考えれば、その処方箋としては、白紙状態で組織を見直してみることも必要でしょう。
さて、マルチスキル化の延長に技能伝承と言う言葉があります。2007年問題としてクローズアップされてきましたが、リーマンショック以降の世界同時不況で、吹き飛んでしまったような状況です。物量が拡大してきた現在、にわかに大きな問題となってきました。  技能伝承も世代と世代の節点の強化です。
派遣社員の正規雇用の規制の強化の可能性と合わせて、「人」の能力強化を成功させた企業が強くなって行くでしょう。今後、間接改革を行う上で、この業務の節点と世代から世代の技能伝承が大きなキーワードとなるでしょう。

(3)間接改革で生き残るには

さて、話しを少し戻します。現在の間接業務は、専門性を強化したバッチ処理になっていると述べました。さまざまな専門性を高める手法が共有化されてきました。しかしながら、この延長に解はあるのでしょうか?新興国も日本と大差ないあるいはコストで追いつけない製品を開発し先行で市場に送り出しています。スマートフォンも台湾で高性能の実装マシンを駆使してその基板が作り出されています。今や、高度な専門は外から手に入る時代です。日本企業の得意であった、液晶パネルなどは、全ての技術と生産を抱え込んで他社に差をつける垂直統合のモデルから、高度な技術や部品を外から手に入れる水平分業モデルへシフトし、いわゆる顧客ニーズ瞬時製品化対応生産が勝敗を決める時代になりました。間接改革も差をつけることが生き残りの鍵と言えるでしょう。