コラム/海外レポート

2011.12.05

海外工場の設備保全(2)

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執筆者:

藤井 秀文

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
◆ なぜ海外で設備保全組織を持つ必要があるのか

日本国内では、装置メーカーやサービスが身近に居ますので、電話をすれば修理に駆けつけてくれ、交換も行ってもらえます。また専門の業者に頼むなど比較的簡単に 修理することができます。これらのメリットで日本国内には、専門の設備保全組織を有する企業は少ないのが現実です。しかし、海外ではこれらのサービスを簡単に 受ける事は難しく、部品の調達でも、日本国内からの取り寄せには、一週間以上掛かることもあります。
こうした問題を解決するためには、海外工場に設備保全の専門組織を持つ事も検討しなければなりません。修理に時間が掛かっても良いという企業には必要はありませんが。

◆ 設備保全組織の運営

設備保全組織では、機械保全と電気保全がペア作業で動く必要が有ります。設備保全への連絡は非常に曖昧なものが多く、例えば、「コンベアが急に止まったので修理してくれ」 など、機械系の故障なのか、電気系の故障なのか判断がつかないことが多いのです。この為、機械保全と電気保全がペアで行動して、現象と現物を確認して、原因を特定して 修理に当たるといった対応が必要になってきます。またペア作業には別の意味もあり、修理作業中に不意の事故が発生した時の対応も重要な役割があります。例えば、一人が 落下して怪我をした、機械に手を挟まれたなど災害発生時に上司に連絡する役目をもう一人が担う事もあります。
では、どれぐらいの人数の組織にする必要があるのかというところですが、保全組織の人数は、設備台数や故障発生度合等から設定します。例えば、最新鋭の設備が 100台保有していても、故障の少ない設備の場合、保全人員は少なくてすみます。機械保全1名、電気保全1名でOKという場合もあります。これが、導入後10年を経過し、 故障発生が頻繁になってくると、2名ではとても対応できず、停止している設備が多くなる。こうなると4名、6名と設備保全人員を増やしていかざるを得ません。
保全組織の運営は、思っているよりも難しい面もありますが考え方をしっかりと決めて運営することで、生産性を阻害する要因を排除することができる組織であることも 知っておかなければなりません。

◆ 設備保全員の育成

海外で設備保全員を育成することは非常に難しいと感じます。特にアジア諸国では手に技術をつけると、キャリアアップのために転職するという方が多いのも事実です。 日本人は育ててくれた会社に対する忠誠心や帰属意識から手に技術をつけても、キャリアアップのために転職するというのは少ないのです。しかしアジア諸国では、 手に技術を持っていても「給料」が見合わなければ、簡単に辞めていきます。
せっかく育てても辞めてしまう。結果として設備保全組織を維持できないというのが理由になって設備保全組織を持つ事を断念しているケースもあると聞いています。 では、辞めさせない為にどうするのかということですが、現場のワーカーよりも技術手当てとして給料を高めに設定するか、または組織の中で、技術力に合せて役職を 設定して行くというのも一つの手です。
実際の設備保全員の育成ですが、やはりしっかりとした育成計画を立てて進めて行く必要が有ります。先ずは機械保全とするのか、電気保全として育てるのかの判断 ですが、1~2年間は両方を学ばせながら適性を見極める必要が有ります。簡単な機械図面の読み込みや電気回路の確認から入り、徐々に専門的な内容に移っていく 必要が有ります。
ここは、日本人が先ず育て方を海外の現地担当者に指導していき、現地の設備保全担当者が、保全員を育成するプログラムを廻せるようにしていかなければなりません。