コラム/海外レポート

2012.03.01

コンサルタントの視点で見た海外工場運営(1)

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  • 海外工場

執筆者:

進藤 淳

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
1.はじめに

海外に工場を建てる目的として、円高対策、安い労務費を求めるため(製造原価削減)、顧客の海外進出に伴う、販売先の近くに工場を建てる等々、 様々な理由があると思います。しかし、最終的な目的は海外工場を含めた全社の「収益改善」であることは間違いないと断言できると思います。
そのためには、いかに早く立上げを行い、順調に生産を開始する必要があります。そのために日本人駐在員を中心として日々苦労しているというのが 実態ですが、なかなか目標通りに事が進まないケースも少なからず存在することも事実かと思われます。そのような環境の中でどのように対応していったら 良いのかについて、コンサルタントとしての指導経験や、海外赴任した過去を含めて、感じていることを少しお話ししたいと思います。

2.海外工場における日本人駐在員の役割と現実
2.1 駐在員の役割の大きさ

海外工場を立上げる際には、当初は日本人スタッフを中心に進めていきます。その後生産が増えるにつれ、現地社員を中心にマネジメントをと考えていても、 会社の方針が理解できない、マネジメントレベルが低い、日本人的な考え方が理解出来ない、日系企業との取引には日本人が必要、現地社員が育っていない などという理由から、どうしても日本人スタッフが現地に駐在し、工場経営に携わる例が多くなってきます。しかし、日本人1人の福利厚生費用を含めた 給与を考えると、出来るだけ少ない人数で運営したいと考えていても、日本人がいないと上手く会社が回らないというのも現実なので、多くの会社がその ジレンマに悩んでいるのではないでしょうか。
日本人駐在員の役割として、大きく分けて

会社の利益確保
製造品のQCD確保
本社や日系企業とのやり取り
現地社員のマネジメント、育成

などが考えられます。いずれにしても海外工場を成功に導くためには、日本人駐在員の力量に頼ることが限りなく 大きいものであるということに異論は無いと思われます。その大きな役割を担うべき駐在員の現実はどうなっているの でしょうか。

2.2 駐在員の現実

駐在員を決定する際には、再度派遣される人を除いては、その仕事に精通している人、海外でも勤務できそうな人を選んでいると思います。 しかし、必ずしも日本で仕事が出来る人が海外で活躍できるとは限らないし、英語や中国語といった現地の言葉を話せる人が仕事を十分に こなせるかといえば、そうでない例も数多くあります。その中で必要な能力といえば、マネジメント力やコミュニケーション能力、問題発見能力、 そして問題解決能力などを持っていることが重要です。現地の言葉を話せなくてもこれらの基本がしっかりと出来てさえいれば、当初は通訳の 力を借りても、本人の努力度合いもありますが、自然と言葉は話せるようになっていくものです。現地スタッフとの信頼関係が築ければ、 多少いい加減な言葉でも相手が理解してくれるということもあります。
海外に駐在するということは、駐在した人しかわからない現実があります。特に本社人事部門の人達の中には駐在経験者が殆どいないため、 国内の転勤程度に考えている例が多く、駐在する前段階の準備が比較的おろそかにされている場合が多いと思われます。
現地での駐在をスムースに立ち上げるためには、日本において駐在員の目的と役割をキチンと理解させる必要があるし、赴任前に 数週間程度出張させて適正を見極める方法も有効です。その際のチェックポイントは、自分の役割を理解しているか、目標達成に向けて 強い意志を持っているか、現地スタッフとコミュニケーションが取れるかということの他に、現地のご飯が普通に食べられるか、現地の 文化を理解して溶け込めるか、一人でも休みを過ごせるかといったことも必要かと思います。
赴任した場合、仕事の前に衣食住の問題を解決する必要があるし、それ以外にも日本人出張者対応や、現地日系企業との付き合い、 そして社内のゴタゴタの解決やら、本来の役割とは別に発生する付帯事項が多く、これらに能力を最大限発揮してしまう人が存在するのも 少ながらず見受けられるのが現状ですが、こうならないためにも事前の準備が大切になってきます。
海外での業務内容をとっても、駐在員の担当しなければいけない範囲は日本にいたときより格段に広がるのが通常なので、マネジメント 経験者でもそれに戸惑う事が多く発生します。日本では専門職的な仕事をしていた人でも、海外では担当以外のことをこなす必要性が 出てくるのが当り前になってきます。このような条件のもとでどのようにしたら、スムースに仕事を行い、成果をあげられるかについて 次回述べてみたいと思います。

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