コラム/海外レポート

2012.09.15

国内製造業の課題(3)

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執筆者:

安田 俊道

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
第3回 技術・技能伝承

3回目となる今回はもうひとつの課題である“技術・技能の伝承ができていない”に対する方策を説明致します。

3.課題に対する方策
(3)技術・技能の伝承ができていない

最近のコンサルティングのテーマとして、技術・技能の伝承が多くなってきました。団塊の世代の方々が退職されていく中で、自社の強みである技術・技能が伝承されずに失われていく2007年問題が契機となっています。 目まぐるしく変化する外部環境。その市場スピードについて行くには、短時間で習得できる技術・技能伝承の仕組みが必要です。 特に、派遣社員の作業習得の早期化、海外での生産ラインの垂直立ち上げ等、技術・技能の伝承に従来のような時間をかける余裕がなくなってきました。 さらに、間接部門の技能伝承も生産性向上の見地から増えてきました。このような背景から、このテーマがここ最近多く取り上げられるようになりました。
テクノ経営では、以下のように技術・技能を4つに分類して扱います。属人的な暗黙知である技能と、形式知である情報、知識、治工具の4つです。

『 技能 』・・・暗黙知。文書化できない高度な作業や判断。
『 情報 』・・・形式知。作業手順書、製造条件表、限度見本等。
『 知識 』・・・形式知。教科書を基に習得する内容等。
『 治工具(ツール) 』・・形式知。専用工具、治具、ITツール等。

技術・技能伝承の取り組みの中では、まず暗黙知の技能をリストアップし、それらをできるだけ情報、知識、治工具に形式知化していくことを行います。 次に知識化せず情報で済む内容を明確にして、情報に置き換えていきます。そのためには、現場ですぐ必要な情報が見られるような工夫(iPad等の活用)が必要です。 これらの技能や知識の習得には時間を要しますので、技能と知識の部分が如何に情報、治工具に落とし込めるかで伝承までの時間が決まってきます。

<図4>効率的な技術・技能伝承の習得

さらに、技能や知識習得のスピードを上げるため、実際の作業をビデオ等に撮り、それらを繰り返し見てまねることにより、習得までの時間を短縮するようにします。 今までOJT(On the Job Training)によって行っていた教育を、教育資料を整備し、極力自己学習にて予習・復習できるようにし、重要な部分のみをOJTで行うようにすれば、教育のスピードが上がると共に、指導者の負担も軽減されます。
教育後は、スキルマップを用いて技能の評価を行い、次のレベルの習得をいつまで行うかの計画を立て、それらが予定通り実施できたかを確認して進めていきます。 また、教育等を行っている際に、手順書、教育資料の不備や追加等が出てきますので、それらの内容を次回の教育では見直しし、常に改良のフィードバックを行っていくことも重要です。

4.最後に

コンサルティングを行っていると、「長い期間改善活動を行ってきたので、なかなか問題が出てこなくなりました。」という声を聞きます。 問題をあるべき状態に対する現状のギャップと考えると、内部的な問題が解決し、あるべき状態になったと言うことになります。しかしながら、外部の環境はどうでしょうか。 市場の要求する品質、価格、納期の水準は、ますます厳しくなっていきます。あるべき状態も時間が経てば変わっていきます。 厳しい市場環境の中で一歩でも先に行くには、このあるべき状態を常に上方に設定し、問題として捉える目線を上げていかなければなりません。 そうすれば問題は必然的に出てきます。いかなる改善にも終わりはないからです。