コラム/海外レポート

2014.04.01

ほめる技術は組織の最大パフォーマンスを引き出す (前編)

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執筆者:

花井 康孝

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
モチベーションアップのためのリーダーシップ
はじめに・・・

企業は存続することが最も重要であり、それが社会的責任を果たすこととなります。そして、継続して利益を生み出していくことで存続が可能になることは言うまでもありません。さらに、利益を常に生み出すためには、強い“組織”の存在が不可欠です。
そこで、改めて強い“組織”とは何かと考えると、高い経営戦略の遂行能力を持ち、かつ高い状況変化に対する適応能力を持つ組織であると定義づけられます。 つまり、目的に向かって着実に業務をやり遂げる力と、自らを変革し結果を出す力がある組織が強い“組織”であると言えます。
組織は人の集まりであり、高い遂行能力も高い適応能力もその担い手は組織に属する人に他なりません。したがって、強い“組織”をつくるには、組織に属する一人ひとりの行動様式が重要であり、その行動様式を束ね、経営トップとメンバーをつなぐリーダーの能力が大きく問われます。
今回のコラムでは、リーダーが高い遂行能力を発揮するために「いかに上手くメンバーを動かしていけばよいか」をテーマに取り上げました。 「成功に導く組織力をいかに生みだすか」これがリーダーに与えられた究極の課題であり、同時にこれは私どもコンサルタントの日頃の活動にも当てはまることです。
リーダーの皆さんと共に組織を動かし、大きな経営成果を上げていくためには、メンバー全員がよいパフォーマンスを発揮し、かつ成長できる環境や仕組みを作り上げることが必要です。いかにメンバーを動かしていくのか、改めて振り返る機会にしていただければ幸いです。

第1章 部下をほめていますか?

組織の成果を上げようとする際に、メンバーに「なぜもっと売り上げが伸びないのか」、「なぜもっとコストが下がらないのか」と感情のままに声を荒げて言うことは容易です。 しかし、日常的にそうした言葉を掛けられていると、メンバーは「そんなことを言われても自分なりに努力をしている」、「そんなことを言われても難しい」と必ず反発の気持ちを抱くようになるものです。 そして、声に出さずに殻に閉じこもるだけで、なかなか良いパフォーマンスを発揮することはないでしょう。努力しても成果が出せない理由は何か、売り上げが伸びない、コストが下がらない背景にある問題に対しては、今、少しでもできたことをほめ、 次にどうしていこうかと考えさせることで、ゴールに到達する道筋が見えてきます。
ある新人営業マンの例で考えてみましょう。目標(ゴール)は売上目標を達成することです。したがって、その営業マンの成長を見ようとすると、売上目標に到達したかどうかにどうしても重点が置かれます。そして、上司や先輩は売上目標を達成した際にほめる(結果承認)、または、目標に到達しなかった際には、「なぜ」と問い掛ける訳ですが、よい結果をほめたり、悪い結果を振り返らせたりする行為自体は、何ら難しいことではありません。ただ、それだけで新人営業マンの成長を促すことができるでしょうか。
新人営業マンが目標達成に至るまでにはさまざまなプロセスを経なければなりません。例えば、お客様に会えた、商談することができるようになった、商談をまとめて企画書を作れるようになった、お客様の前でプレゼンテーションができた、といったプロセスです。
そのプロセスの一つひとつで、できたことをほめ(事実承認)、次のステップを考えさせることが、自信をつけ、やる気を起こさせることに繋がります。そして、広い意味で“存在を認める”、“感謝する”、“仕事を任せる”と、自分自身の存在をリーダーが認めてくれていると感じ、その人の為に頑張ろうという気にもさせることができます。新人営業マンにしても、「常にあなたを見ている」という姿勢を示せば、より積極的に仕事に取り組むようになっていきます。
一方、メンバーをほめないリーダーに多く見られるのは、自分の期待まで到達していないと考えてしまう、立場上ついつい厳しく言ってしまう、なかなか一人ひとりのメンバーと話しをする時間がとれない、といった問題です。組織から結果を早期に求められる、メンバーの成長を待てない、自分でやった方がうまく行く、そもそもほめることが苦手だ、などと考えてしまうことが背景にあるように思われます。その結果、ほめられることの少ないメンバーは心を開かず、組織のパフォーマンスが一向に上がらないばかりでなく、かえって非効率な試行錯誤を要求することとなり、メンバーの成長を停滞させ、目標到達までになかなか至らない、という負のスパイラルに陥ってしまうのです。

第2章 “ほめる” と “おだてる” は違う

ほめることは大切だと分かってはいるけれども、面と向かってほめるのは難しいと感じている皆さんは少なくないでしょう。 ほめることは何か相手に媚びるかのようで好まない、普段ほめていないので今さら何か魂胆があるのではないかと誤解されるぐらいなら何も言わない方が良い、ほめ言葉は特別なものであり容易には使えない、 そもそも何を言葉にすればよいのか分からない、これらがほめることを苦手とする理由によく挙がります。
これらに共通して言えることは、いずれも“ほめる”行為そのものを自分中心に考えていることです。それらは真の“ほめる”行為ではなく、むしろ自分のために相手に影響を与えようとする“おだてる”という表現が適切です。 ほめるのが苦手な人には、この“ほめる”と“おだてる”の区別がついていないことが多く見られます。
私はコンサルティングの現場で「ありがとう」という言葉を積極的に使うことを心がけています。 また、「うれしい」という感情を表すようにも心がけています。例えば、ちょっとした改善提案をしてくれたパート社員の方に「ありがとう」と言葉をかける。 自分が抱える悩みをこのように解決しよう、と相談に来た若手社員に「前向きに考えてくれてうれしい」、と言葉を返すといった具合です。 そして、したたかな計算でおだてて何かに取り組んでもらうよりも、その場で起きたことを素直にほめ、喜びを表現することが、確実に次のステップに繋がっていくことを日々実感しています。

今回は“ほめる”ことの重要性についてお話しました。それはメンバー一人ひとりの努力を正しく評価し、個人のモチベーションをアップさせるためにも大切なことです。
しかし、メンバーの行動や考え方に問題が見られる場合には、あえて苦言を呈することもリーダーの重要な役割です。いつも“ほめる”ばかりではリーダーの任務は務まりません。 つまり、“ほめる”と“しかる”をアクセルとブレーキのように使い分ける必要があります。

次回は、このしかり方についてお話ししたいと思います。そして“ほめる”と“しかる”を上手く組み合わせて、メンバーのやる気を高める「サンドイッチ話法」についても紹介します。

以上

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