コラム/海外レポート

2014.04.15

ほめる技術は組織の最大パフォーマンスを引き出す (後編)

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執筆者:

花井 康孝

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
モチベーションアップのためのリーダーシップ
はじめに・・・

前回は、“ほめる”ことの重要性についてお話ししました。“ほめる”ことは部下やメンバーの立場を尊重し、コミュニケーションを強化することに役立ちます。 「ありがとう」といった言葉をかける習慣づくりもそうですが、互いの対話をきっかけにモチベーションの高い職場風土が形成されていきます。
そして“ほめる”と同時に上手なしかり方ができることも優れたリーダーの条件です。“しかる”というとネガティブに感じられるかもしれませんが、モチベーションの高い職場ではポジティブに捉えられるものです。 なぜならば、“しかる”のは、部下やメンバーに自らの誤りを気づかせるためであり、感情的な威圧感で服従させるためではありません。そういった意味で“しかる”ことは“ほめる”よりも難しい行為であると言えるでしょう。
今回は“しかる”というコミュニケーションの一側面を取り上げながら、個から組織に向かう効果的な動機づけのポイントについてお話します。

第3章 “しかる”ことの難しさ

ある小学生のサッカー大会でこんなシーンを目の当たりにしました。 キックオフから一方的な試合展開。明らかに力の差が見られるチーム同士の対戦でした。そして、試合時間半ば過ぎだったでしょうか、一方的に押されていたチームが初めてのシュートチャンスを迎えました。しかし、惜しくもシュートは枠の外。すると、それまで大声で怒鳴っていたコーチが、試合中にもかかわらず、シュートを外した選手をピッチの外に出してこう叫んだのです。「もう出る必要はない!帰れ!!」と。
一人少なくなってしまったチームはさらにガタガタになり、コーチの声のボリュームはさらに上がり、ピッチ内の選手は委縮し、ミスを連発。結果、数えきれないほどの失点をし、敗れました。
そのコーチがその場面で何を指導したかったのかは定かではありません。ただ、委縮した子ども達にコーチの真意が届くことはないことだけは確信が持てました。さらに付け加えるのであれば、シュートを外して怒鳴られた子どもは、対戦相手のチームの子どもと比べて遜色のないレベルに見えたということです。果たして子供たちの能力を引き出す手段として大声を上げることが適切だったのでしょうか。
感情に任せて“怒る”ことは容易なことです。しかし、相手のプライドは大きく傷つき、怒られた記憶しか残らないでしょう。一方、“しかる”とは「しかるべき道を諭す」の略です。今回のケースを通して何を相手の記憶に留めたいのかを明確にし、一貫した姿勢を持って、相手の立場に立って傷つけることのないように伝えることが“しかる”ということです。
“ほめる”ばかりで上手く行くのであればそれに越したことはありませんが、時には“しかる”ことも求められます。個人の感情を脇に置き、“しかる”ことで組織的な信頼感を醸成することがリーダーには求められます。私自身も、先程の小学生サッカーチームの事例を他山の石として、今日は上手く“しかる”ことができただろうかと自らの発言を振り返ることを忘れないようにしています。

第4章 効果的な動機づけで強い“組織”へ

リーダーがメンバーを動かして組織のパフォーマンスを高めていくためには、相手の心を開いて自らの考えをしっかりと伝えねばならず、そのために効果的に“ほめる”、または“しかる”ことが重要であることを述べてきました。
下図のように、アブラハム・マズローは、欲求の構造をピラミッド型の5段階のモデルでとらえました。「衣食足りて礼節を知る」と言いますが、人は生理的欲求(生きていくための基本的・本能的欲求)や安全欲求(安全・安心な暮らしを送りたいという欲求)、 社会的欲求(集団に属したい、仲間が欲しいという欲求)といった低次の欲求が満たされると、職場や地域社会のコミュニティの中で他者から認められたいという、より高次の“尊厳欲求”を感じ始めます。

ところが、この“尊厳欲求”が満たされないと、人は劣等感や無力感などを感じることになります。つまり、誤ったほめ方やしかり方は、メンバーに劣等感や無力感を植え付けるだけでなく、より高次の自己実現欲求も持たなくなり、 潜在的な資質や成長の芽が出ないように抑えつけてしまう危険性をはらんでいます。
これまで述べてきたように、正しく“ほめる”、または“しかる”ことで「あなたに常に関心を持っているよ」と言葉と態度で示すことが人をやる気にさせ、強い“組織”をつくるベースになります。

最後に・・・

“ほめる”と“しかる”を上手く組み合わせた話法について紹介します。その話法とは、相手の心を開いてから本題を伝え、感謝と期待で締めくくる「サンドイッチ話法」です。以下にそのステップを記します。

(1)明るく感謝の言葉やほめ言葉を交えたプラスの話から始め、相手の心を開く
(2)本題(改善、要求、依頼)を話す
(3)最後に再び感謝や期待などを含めたプラスの言葉で締めくくる

例えば、生産現場の生産性向上のために設備改善を提案してきたメンバーに対して、まずは作業改善から行っていくべきだと伝える場合を考えてみましょう。 単に「お金がかかる提案ばかりではダメではないか!」としかるのではなく、「今回はよく検討をしてきてくれたね、ありがとう。 ただ、残念ながら、今回は予算が取られていないし、設備改善だと時間もかかってしまう。 まず作業改善から考えてみたらどうだろうか。 君ならきっとよい改善案を見つけてくれると期待しているよ。」というように、 否定的な表現(改善、要求、依頼)を肯定的な表現(感謝、期待)で挟み込むことで、相手を否定するような内容を奮起させる「ほめ言葉」にガラリと変えることができます。
このように強い組織をつくる上では、リーダーのメンバーに対する効果的な動機づけが不可欠です。 そして、テクノ経営のコンサルティングではコンサルタント自らがそうした技術を現場で実践し、リーダーの育成に努めています。組織の最大パフォーマンスを引き出すテクノ経営の取り組みに、是非ご関心をお持ちいただければ幸いです。

以上

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