コラム/海外レポート

2015.01.09

人材育成は工場改革活動で進める!

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執筆者:

井原 昌志

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。

人材育成の大切さはわかっているが、それをどう進めればよいかがわからないというご質問をよく受けます。確かに人を育てるということは簡単ではありません。地道な活動があって初めて実を結ぶテーマだと思います。今回は工場改革活動を通じた人材育成についてお話したいと思います。

工場改革活動を通じて人を育てる

「人の成長なくして企業の前進や発展はない」と言われます。問題意識を持って働く人をどれだけ多く育てるか、そうした人材が増えるほど企業や工場は活性化します。また、反対に人材育成を怠れば企業活動は必ず衰退し、競争から淘汰される危険性にさらされます。それでは、どうすれば有効な人材育成の仕組みが構築できるのでしょうか。それを模索する企業は多いのですが、決定的な解決策を見いだせていないのが現状のようです。
そのことに関して、テクノ経営では全員参加の改善活動が有効な人材育成の方法であると考えています。一般に人材育成といえば、研修制度や能力開発プログラムが想起されます。しかし、それだけでは自主・自律の精神を持った人材を育てることはできません。また、この仕組みであればすべてうまくいくという学校の教科書のようなものはありません。
座学だけで人は育ちません。体験することが真の教育となり、強制的に考える場面を与えます。改善を実践する経験が人や企業の成長に繋がります。自主・自律を基本に、全員参加で改善活動を進める。それが人の成長による強い工場の構築に繋がります。それが工場改革活動による人材育成プログラムです。

人を育てる改善活動の条件

改善活動を人材育成に繋げるには、やる気を持った活動の継続を考える必要があります。上からの命令などによる、やらされ感のある活動では単に疲弊あるのみです。
人を育てる改善活動にはいくつかの条件があります。
それは、1)明確なビジョンや目標を示すこと、2)チーム意識を持たせること、3)結果だけでなくプロセスを正しく評価することです。
まず、いかなる活動もビジョンや目標が曖昧では人を束ねていくことはできません。例えば、自部門のメンバーを動かそうと思えば、会社方針に基づいた部門方針をしっかりと自分の声でわかりやすく伝えていく努力が必要です。対話力の高い組織体であることは、成長・発展する企業にとっての必須条件です。
次に、メンバーのチーム意識を高めることが必要です。一般に日本人はチームワーク意識が高い傾向にありますが、特に海外では個人プレーが強く、ローカル従業員を束ねていくことが難しい状況があります。
そして、活動に対するプロセスの正しい評価が人の成長を促します。これが実は非常に重要な項目です。極端な話ですが、たとえ目標が未達成でも、プロセスが素晴らしければ間違いなくメンバーは育っています。そのプロセスを偏りなく評価することで、今後の取り組みが変わってくるものです。

改善・改革を進めるのは人である

現場改善には数多くの手法があります。例えば、JITは材料、TPMは設備、TQCやVEは品質・製品に関する改善手法として用いられます。しかし、材料を設備により付加価値ある製品に変えるのは人の働きによります。モノづくりの基本は人の生産性にあり、ここに焦点を当てた改善手法がテクノ経営のVPM(Value Producing Management)です。人にはモノにはない心・気持ちがあります。いかに個人の気持ちを大切にするか。しっかりとマネジメントができているか。これが非常に重要なポイントです。

いくら最新の設備投資を行っても、良い材料を仕入れても質の高いモノづくりができるとは限りません。最新設備を入れたが不良が増えたという海外工場がありました。メンテナンス教育の不足が原因です。使いこなす知識がなければ高価な設備も宝の持ち腐れになってしまいます。また、最近では新たなシステム導入をはかる企業も増えていますが、そのスケジュラー情報は参考程度にしかならないという話もよく聴きます。システムはインプットデータが正確であってこそ正しい結果が出力されます。作業日報や帳票類の基本的な入力ルールが順守されていなければ意味を成さないのです。ベースはまず人を育てること、それにより設備やシステムが生きてくるのです。

メンバーの自主性を引き出す

活動を始めた以上、やる気に溢れた活動にどう導いていくか。これがトップをはじめ部長、課長などの務めです。どうすれば部下の心を束ねることができるか。VPMではここを重視します。

人が行動を起こす動機には、外発的動機と内発的動機があります。外発的動機とは、馬の前に人参をぶら下げるようなもので、賃金やモノで人を動かすというものです。これに対して、内発的動機とは「よしやろう!」という気落ちを抱かせること。命じられて仕方なくやるのと、腹の底から納得して取り組むのとは必然的に結果に大きな差が出ます。まず動機があってやる気が生まれ、行動を起こして結果が生まれます。
内発的動機を引き出すにはどうすればよいのでしょうか。例えば、昼休みやコーヒーブレークなどに、気軽なやりとりをすることで緊密な信頼感を築けます。その際に仕事に関する話題をさりげなくできるようになればしめたものです。対話を面倒がって疎かにしてはいけません。対話力の質をどのように高めるか、気楽にまじめな話をすることが大切です。
自分の要求を相手に伝えるにはコメントの質が重要です。例えば、部下に企画書の作成を頼んだが、予想と違っていた場合、「これではだめだ」と否定するのではなく、「こことここはよくまとまっているな」とまず良い部分を評価してから意見を言う。まず評価すべき点を認めた上で、足らないところを指導・アドバイスする。この順番を間違えると上手く行きません。
人を動かす立場にある役職者が、消極的な素振りや態度を見せるなら、部下はそれを敏感に感じ取るものです。情報の共有化がメンバーの自主性を育みます。組織やチームの進む方向が曖昧では努力のしようがありません。自分の立ち位置や役割が理解できてこそ改善に対する意欲が湧くものです。
私はいつも「ほめて育てる人づくり」と申し上げています。日本でも海外でも、ほめられて嫌な思いをする人はいません。これが世界に共通する人材育成の基本スタンスではないでしょうか。

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