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2015.05.15

社員が変わる! 効率的なOJTの進め方!(後編)

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
はじめに

前回も述べましたが、正しいOJTとは計画性を持った現場教育を指します。効率的なOJT教育のためには若手社員とのコミュニケーションが極めて重要ですが、同時に押さえておくべき幾つかのポイントがあります。その具体的な内容について今回は説明したいと思います。

3.効率の良いOJT教育とは

OJT教育を効率的に行うには、3つの明確化が必要です。
  (1)目標の明確化
  (2)教育内容の明確化
  (3)評価の明確化

です。ここからは、これら3つの明確化と、前回お話した3つの問題の解決方法を関連付けながら説明していきます。

(1)目標の明確化(何を目指すのか)

OJT教育において、最も重要なのは、この“目標の明確化”です。多くの教育現場では、目標が設定されていないために、OJT教育と言いながら、なんとなく毎日の作業を繰り返すことが主となっています。 これでは、ほとんどの若手社員が思うように育たないというのは当然のことです。しかし、目標を設定することやそれに対する計画を立てて教育を行うことに、大きな抵抗感を持たれる方もおられます。 その結果、行き当たりばったりの教育を選択してしまう場合が多く見受けられます。目標を立て、計画を守ることももちろん重要ですが、それ以上に重要なのは、目標を立てることによって、以下内容が明確になることです。

  1.何を教えるべきなのか
  2.教えるべき内容を実現するには、どのような仕事が割り当てなければいけないのか
  3.割り当てた仕事を教えるのは、誰が適任なのか
  4.教育のための仕事を教えるには、どのくらいの時間が必要なのか


目標を明確にすることで、時間の問題、人の問題は対策の方向性が見えてきます。 例えば、与える仕事が明確になれば、教育実施可能である日程を決定することが出来ます。また、教育する仕事内容や難易度によって、誰が教育するのが最もふさわしいかを決定することも出来ます(簡単なものであれば、比較的経験年数の浅い方でも対応可能です)。 更に、教育に必要な時間が明らかになれば、事前に作業予定へと組み込んでおくことによって、時間を作り出すことは比較的容易になります。
なお、目標を立てる期間は、3年が望ましく、少なくとも1年は必要です。しかし、長期間の目標になるとゴールが遠く、達成感を感じることが難しくなるため、技能向上に対する意欲が薄れてしまう可能性があります。 そんな場合は、長期計画を半期、月、週、日と細分化していき、達成したかどうかを分かりやすくする工夫も必要です。

(2)教育内容の明確化(何をどう教えるのか)

教育内容の明確化とは2つの内容があります。1つ目は実際に教育を行う作業内容、2つ目は作業のやり方だけでなく、そのポイントやその理由を明らかにしていくことです。
1つ目は、前述の“(1)目標の明確化”とリンクしている内容であり、どの現場でも、ある程度は理解されています。一方で、2つ目は、ほとんどの職場で意識されていません。 実際に教育現場を確認した際に、作業方法を教えている場面は見かけますが、「その作業のポイントは何か」「何故そこがポイントなのか」ということまで説明されている教育係に出会うことは稀です。 一般的によく言われる“Know How“については教育しても、“Know Why”というところまでは、説明されていないのが実情です。
決められた作業は、作業のやり方である“Know How”を教えるだけでも、習得することが出来ます。しかしこの場合、少し作業内容が変わっただけで、全くと言っていいほど対応できなくなってしまいます。  この教育方法では、作業を単なる動作として認識するため、状況が少し変わると、若手社員はどうしていいのかが分からなくなってしまうのです。
その一方で、“Know Why”の教え方では、作業のやり方だけではなく、作業のポイントも説明します。しかし、いくらポイントを説明しても、重要性が理解されていない場合には、説明通りに実施しない可能性があります。  そこで重要となるのが、そのポイントがポイントである理由です。

  1.何故、しなければならないのか
  2.何故、したらいけないのか
  3.何故、そのような不具合が発生するのか

といった作業のポイントとなる部分の理由を説明することが大切です。理由を理解出来れば、そのポイントの重要性を認識することが出来、安全で正しく効率の良い作業の習得が望めます。
ポイントを伝える際に心掛ける重要なことは、ポイントを出来るだけ絞り込んであげることです。経験年数の浅い若手社員は多くの内容を一度に説明されても、理解することが困難です。 ポイントをひとつずつ明らかにしてあげることで、どこに着目すべきかが分かり、注意も一点となるため、確実な作業とその効果としての上達が期待出来ます。 ただし、その際には、全体の大まかなイメージを併せて伝えてあげることが重要です。
最後に、これらの教育内容は、教育係の間で共通化しておく必要があります。作業内容が教える人によって違ってしまうと、若手社員は混乱し、正しい作業を覚えることが困難になります。 よって、「作業は人それぞれの方法があるから、良いやり方を選択しなさい」というアドバイスはするべきではありません。
ポイントを明確にすることで、短時間で効率の良い教育が可能となります。つまり、時間の問題は、解消の方向へと向かいます。

(3)評価の明確化(何が出来て、何が出来ていないのか)

最も実施されていないことが、評価の明確化です。いわゆる教えっぱなしです。せっかく教育内容を決めて、計画を立てても、フィードバックをしなければ、それらの効果は薄れてしまいます。 現状計画に対して、進んでいるのか、遅れているのか、遅れている場合はどのようにして挽回するのか、を判断するためにも評価することは重要です。 その確認の場面においては、教育係だけでなく、教育されている若手社員と共に面談形式で行うことが大切です。評価のずれは本人のやる気をそいでしまうので、若手社員が納得した形での評価をお勧めします。 また、上司が面談に参画し、次のステップへのアドバイスをしてあげることも成長を促すためには有効な手段です。 これらの評価は入社1年未満であれば毎月実施することが望ましく、最低でも3か月から半年に1回は実施することが必要です。
更に重要なことは、教育係が日々の教育を実施する際に、その場で評価をしてあげることです。その一日頑張れたのか、また、何が出来ていなかったのか等をリアルタイムにフィードバックすることによって、本人のやる気を引き出すことも可能となってきます。 後で評価されても、何が良かったのか、悪かったのかが理解できません。また、評価されない場合は、若手社員は教育係が自分に関心がないと捉え、最悪の場合は、信頼関係が壊れてしまう可能性すらあります。
日々の評価と定期的な面談による評価を継続的に行うことで、作業や教育に対して若手社員がどの様にとらえているかを教育係自身が感じることが出来ます。よって、次は何を教えたらいいのか、どう教えたらわかってくれるのかを教育者自身が理解することが可能となります。
つまり、面談を通じて、その若手社員に合った教育内容や方法が共有化することが出来、決まった方法がないという問題を解消へと導いてくれます。

おわりに

企業として、継続的に成長することが必要不可欠です。その成長を支えるのは、言うまでもなく“人”であり、その将来を担うのは若手社員です。そして、若手社員を教育していくことは、上司の皆様の重要な役割です。 如何に教育に対して、本気になるかが問われているのです。

このコラムの内容が、皆様の職場の若手社員育成に活用していただければ、幸いです。

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