コラム/海外レポート

2016.01.05

改革を成功させるカギ!

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執筆者:

小林 健二

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この記事は5年以上前に掲載されたものです。掲載当時の内容となりますのでご了承下さい。
はじめに

2012年から中国工場での指導をスタートしました。当初は、海外と国内で環境の違いによる指導方法で悩んだ時期もありましたが、海外工場(中国)での活動を進めて行く中で、ある共通点に気づかされました。それは国内・海外を問わず、改革成功のカギを握るのは「人と組織の成長」であること。すなわち組織のパワーアップや成長の基礎である「人づくり」にフォーカスし、「組織間の連携」を強化することの大切さです。
今回は、私自身がコンサルティングの現場で発見した改革成功の秘訣についてお話しいたします。

気づきによる人づくり

企業トップからのご意見として、「いままで改善・改革をやってきたが、いつも効果が出ないうちに尻すぼみになってしまう」という声をよくお伺いします。せっかく始まった改善活動も途中で頓挫したのでは現場のモチベーションは下がる一方です。また、それが原因で改善・改革活動に対するボトムからの拒否反応が見られることもあります。
トップダウンによる強引な改革を進めたり、他部署を巻込めないで自部門のみの改善に留まっていては、早晩、活動は停滞し長続きしない結末にいたります。ではなぜ、改善が定着しないのでしょうか。その原因の多くはアイデア先行型による行き詰まり感が発生しているためです。ここでいうアイデア先行型とは、前提として理想的なテーマを設定する方法です。「あるべき姿」を目指すというアプローチそのものは悪くないのですが、ただ、問題発見にいたる肝腎なプロセスが抜け落ちています。まず問題ありきで活動を進めるのが自然で本来的なのですが、アイデア先行型では現状把握の目線が省略されてしまっています。そうした視点で活動を捉えると、漠然とした抽象的スローガンや現実とかけ離れた目標設定をする錯誤に陥ってしまいがちです。そこで私は、改善・改革活動の始まりに際して、気づきの視点を養うことで、問題先行型へシフトチェンジする事をお勧めしています。
たとえば、よく言及される問題意識の欠如もそこに原因があると感じています。例えば、トップからの経営課題がブレークダウンされても、アイデア先行型の人は、どんな問題があり、何を解決すればよいのかと悩み、思うような結果が出せない事になります。そこで組織の中で問題先行型の人材を育成する手段、気づきによる問題解決の訓練が重要となってきます。
もう一つのポイントは、「気づき活動」が改善と楽に取り組めるツールであることです。一口に「職場の問題を探し、改善しなさい」といっても、良い意見はなかなか出てこないものです。また、いきなり改善に取り組もうとするとメンバーの意識が硬直し、過度に難しく考えがちになってしまいます。だから、「気づき活動」では、問題と対策は切り離して気楽に進めるようにしています。改善・改革活動への負担感を減らし、誰もが気軽に参加できるよう最初はハードルを下げることがポイントです。「気づき活動」の目的は問題発見の視点を効果的に植付けながら、成功体験を積上げていくことで、個人の意識変革や成長に繋げて行くことです。私はこれが人づくりの基盤となると思っています。

職場内の連携とリーダー育成

どんな職場にも、顕在化・潜在化を問わず、多くの問題が存在しています。しかし、リーダー自身の余力不足や単独で解決する手段がないため、せっかく伝えられた課題や問題に対しても、その不備を指摘するだけで終わってしまう場合が多々あります。その結果、メンバーたちの中に、問題を提起しても解決されないという不満や倦怠感が生まれ、リーダーへの信頼感が薄らぐことになります。
気づき活動は、メンバー全員から気づきを抽出し、リーダーを中心に建設的な議論を積み重ねて問題解決するコミュニケーションの機会づくりです。リーダーの役割は、メンバーからの問題提起に対して、きちんと話を聞いて適切な判断や処置を行うことです。それにより、メンバーとの信頼関係を構築することを目指していきます。
職場および他部署とのコミュニケーションや情報共有化不足。ここに改善・改革活動が遅れる大きな原因があると思います。また、職場間の連携づくりのため、集団で意思決定することは、リーダー自身が自らの役割を再認識し成長する機会となります。

組織横断の活動と推進者づくり

組織を超えた意思疎通が捗らず、共同で事を進めることに時間がかかり合意形成が難航する。属する組織や自分の都合が重視され、顧客視点や会社組織の目的が見失われてしまう。こうした事態を避ける為にも、各組織を縦断した推進体制をつくり、問題の共有化を図りながら組織を束ねた運営を行い、且つ、調整能力を養う人づくりを進める事が必要になります。
活動推進チームには、現場で起きている職場内で解決できない問題、チーム権限を超えた問題、チーム間の調整を要する問題など、さまざまな情報共有化の能力、自ら現場を調査し問題抽出をはかりながら組織間の統制能力を身に付けてもらいます。
もう一つの役割は、全社的な問題を組織横断的に把握し、最適な問題提起、組織間の連携により問題解決をはかって行くことです。このような、立場で考え行動することで、組織の問題がいち早く解決でき、人の成長に繋がって行きます。立場が人の意識や行動を変えるのです。

ま と め

企業改革を取り巻く環境は多種多様であり、一つのやり方だけを知っていれば実践できるものではありません。カギになるのは、各々の立場に応じた「人づくり」です。そして、これはテクノ経営が進めるVPMの基軸でもあります。企業組織の環境やモノづくり状況に違いがあっても、「人づくり」というベースでは同じであると確信しています。
まずは、改善・改革活動を通じて、それぞれの人に機会を与え、「人づくり」を行うことが、組織における人の連携・協働を生み出し、企業の成長の近道になると考えています。