イーター電機工業株式会社様

工場の潜在力を発揮する!現場マネジメント改革

 本ページでは、イーター電機工業株式会社 ETA-PADTRON(M)SDN.BHD.様に対するコンサルティング実績をご紹介しています。
(※ASAP 2018年 No.1より抜粋)

活動開始の経緯

依存体質からの脱却!

 ETA-PADTRON(M)SDN.BHD.(以後、PADTRON)は、スイッチング電源の製造を行うイーター電機工業株式会社(以後、イーター電機)の海外生産拠点である。もともとは古くからの協力工場であった経緯を持ち1997年よりイーター電機の子会社となる。
 PADTRONで働くスーパーバイザー(監督者)のなかには協力工場の頃からのメンバーも多く、忠誠心や前向きな意欲を持った人材が多い。ただ協力会社の頃から、イーター電機からの受注が100%であったため、自ら利益を出そうとする発想や原価意識がない。
 大手顧客の認定工場でもあるPADTRONでは、品質・納期・コスト面などの改善対応に迫られる。イーター電機の強みは顧客対応で多品種少量のものづくりを行うことだが、セミカスタム、カスタム品を加え4,000種を超えるというラインアップ、それを高い品質と精度を維持しながら生産することは容易ではない。そのためにも本社に頼る依存体質から脱却し、自主・自律の意識改革を進めることが求められていた。
 先進の小型化技術とラインナップで多様化する顧客要望に応え、社会貢献を続けること、これがイーター電機の企業ドメインである。マレーシアでも従業員の賃金上昇が顕著だが、その対策として社内の改善活動が以前より続けられてきた。しかし現地マネジメント力の不足もあり、思うような成果がでない状況が続いていた。
 多民族国家であるマレーシアの特色はPADTRONの人員構成にも反映されている。マレーシア・中国・インド・ベトナムなど、文化や宗教が異なる地域の人々が一同に働く職場が工場の日常風景である。異なる価値観を持ったオペレータたちをどうマネジメントするか。そのためにはスーパーバイザーが中心となって、リーダーシップを発揮する必要がある。本社からの指示ではなく、自主・自律の精神でPADTRONが持つ工場のポテンシャルを発揮させるため、VPM活動を始めることにした。

イーター電機工業社内ミーティング風景

活動目標とキックオフ

活動目標は、意識改革と品質リテラシー向上

 PADTRONの課題は、自主・自律の工場運営をはかること。製品の発注は本社に依存していても、生産計画の精度や工数把握をはかることで利益創出に貢献していくことはできる。
 イーター電機は「品質優先主義」を標榜してきた。安全を除けばまず品質、つぎに納期がくる。生産性やコスト最優先ではなく、品質の厳守がPADTRONを含め、イーター電機および山陽電子工業グループにおいて最も優先されるべき基準なのである。そのポリシーは「生産の6要素」として表されている。その考え方を全従業員に浸透させることが求められた。これらを背景にして、活動目標は、定量的には工場の黒字化を達成すること、定性的にはスーパーバイザーのマネジメント力強化、従業員のリテラシー向上におかれた。

イーター電機工業生産の6要素

全員参加で活動開始

 活動対象は約135名の製造部員。職場単位で8チームを編成し、チームリーダーは各職場のスーパーバイザーが担当することになった。改善活動の目標は、スーパーバイザーの育成。そしてワーカー層に対する的確な指導を行うことで、品質管理に関するリテラシーを全社に浸透させると同時に改善意識の定着をはかることである。
 2015年1月にキックオフを迎えたPADTRONの改善活動は、まず「3S(整理・整頓・清掃)」をテーマにした日常改善(C改善)をチーム単位で実施。またプロジェクト改善(D改善)は「ムダ取りによる効率化」を中心に展開した。

3S活動の展開

チーム単位で提案を集める

 活動はモノづくりの基本である3S(整理・整頓・清掃)から開始された。ホワイトボードに各チームのメンバーリストを貼り、各メンバーが3S提案のアイデアをポストイットに書いて貼っていくことにした。提案は毎週木曜が締切りである。
 3S活動のポイントは、まず多くの改善アイデアを出すこと。どんなことでもよいから発見したことを書く。それを通じて日常業務に潜む問題点を発見する意識づけにすることが狙いである。
 メンバーからの提案は各チームで検討後、実施を進めることにしたが、実際に3S活動を進めていくと、工場内の場所を占有していたモノの多さに気づかされることになる。工場の3S活動により要らないものを処分する。この行動がムダ削除や作業性向上、配置替えなどの一歩進んだ改善につながっていくことが実感できたという。
 工場内の不要品の多さに気づき、それを大胆に捨てることで有効なスペースが確保できた。その余剰空間の確保が、別の改善を進める土台になってゆく。

イーター電機工業

イーター電機工業3S活動の気づきボード

代品評価チームの立ち上げ

 イーター電機が製造するスイッチング電源のライフサイクルは20~30年と長いのが特色であるため、途中で部品の供給が途切れるケースが多かった。そこで、今回の3S活動により、工場内に生まれた空きスペースを活用して、代品評価チームを立ち上げることができた。これも3S活動の成果である。

予実管理の実施

 生産計画を滞りなく進めるには、定量的な日々の目標数字の把握が重要である。日常改善では目標値と実績を見える化し、日々の業務と成果の関係を把握できるようにした。
 それらの情報の共有化により、予定工数と実際の差をロスとして認識する意識が生まれてきた。

活動の取り組みを評価する

 3S活動の日常改善では、改善提案を多く出してくれた人や、すばらしいアイデアで効果のあった提案を表彰したりした。やはり活動の成果を発表させ、その成果を承認することはモチベーション向上につながる重要な要素である。
 また社内で実施されている全社的な夕食会などのイベントも従業員の親睦に役立っている。

イーター電機工業社内イベント・アニュアルディナー

工数管理による生産計画の改善

実工数のデータベース化

 PADTRONでは、以前は時間当たりの出来高で生産計画が組まれていた。そのため実際の工数や作業バランスが正確に把握されていない問題があった。そこで日常活動での予実管理を発展させ、工数実績のデータベース化をはかることにした。
 工数を精密に測定するためには、ラインに投入される作業者の実工数を把握する仕組みが必要である。そこで各チームで「Weekly Schedule Format」をエクセルで作成し、作業者ごとの稼動を記録することにした。

イーター電機工業Weekly Schedule Format

 実工数の測定により、予定をオーバーしたロス工数の割合が正確に把握できるようになった。
 スーパーバイザーによる早朝ミーティングでは、今週の予実、昨日の実績を確認する活動が行われるようになった。各部門のデータを実測して、それをもとに計画を立てることができるようになった成果は大きい。

イーター電機工業

 現在進められているのは、実工数をもとに本社とPADTRONを結んだ生産計画を組み上げる仕組みづくりである。工数管理の状況を本社でもリアルタイムで把握でき、本社側の生産計画とうまく連動して動くような活用度の高いWebシステムの構築が課題だという。
 

外注化による効率アップ

 工数管理の精度向上により、生産計画の遅れやロス工数が定量的に日々計測され、品質・納期・生産性の改善につなげる活動が社内で続けられている。その一つが、工数管理による外注化の検討である。
 PADTRONでは、表面実装などの工程では一部外注を使ってきたが、それ以外の設備メンテナンスを要する工程など、自前で持つメリットに疑問のある業務がある。また設備の老朽化などで対策が求められている工程もある。
 エレクトロニクス業界では自動化によるモノづくりが進んでいるが、PADTRONでは、人海戦術的な製造方法が主流である。人海戦術の利点はラインの組み換えが自在であることだが、データベース化でボトルネック工程が可視化されたことにより、その強みを活かして自前と外注化のメリットとデメリットを判断できるようになった。

イーター電機工業

ラインバランスの改善

 工数管理はラインバランスの改善にもつながった。たとえば昼食の休憩時間が終了しているにもかかわらず、自分自身のラインについていないワーカーがいる。しかし、わずか2~3分のことでもすべての席にワーカーがいないと、作業開始時からラインバランスが崩れてしまう。そこでビデオでラインの状況を撮影し、各スーパーバイザーが対策を検討することにした。そこで、全員が揃ってスタートできるために、休憩終了の1分前に合図のサイレンを流し、作業開始時にもサイレンを流すことにした。これにより定刻にワーカーが揃わない状況は改善されている。

改善活動の成果

スーパーバイザーの成長

 古い従業員では20年以上、若手でも10年以上が多く、PADTRONのスーパーバイザーたちの多くは、協力工場の時代にワーカーやスタッフとして働いていた経験を持っている。それだけにイーター電機の社風を理解し、会社に対する忠誠心や意欲も非常に高い。今回の活動でも日常改善やプロジェクト改善を通じて、驚くような成果を生み出してきた。

「生産の6要素」の社内浸透

 活動開始前、工場内の表示物や作業手順書は英語版のみだったため、作業者であるワーカーには理解できない状況だった。現在は作業手順書から3S活動の表示まで、すべてマレー語・英語・日本語の3か国語で表記するようになった。
 そうした改善の積み重ねにより、外部から監査にこられる工場認定をいただているお客様からも、工場が綺麗になったと高い評価を得られるように
なってきた。今回の活動を通じて、「生産の6要素(6Elements)」の考え方が従業員に浸透してきた結果である。それが彼らの自信と喜びにつながっている。

多民族が働く職場

 イスラム国家のマレーシアでは、男性が毎週参加しなければならない金曜礼拝があり、会社はその時間を無給にしてはならないという法律がある。また、マレーシアでは人口の約半数がイスラム教徒なので、ラマダン(断食月)になれば工場の食堂も当然閉まる。
 他宗教の従業員も多いのだが、マレーシアほど多民族がバランス良くやっている国はない。
 たとえばインド人はヒンズー教で中国人は仏教や道教である。しかし彼らはお互いを受け入れている。ラマダンの時期にはムスリムは断食しており、休憩時にも水も飲めないので他宗教の者からはムスリムは大変だと感じられる。その時期には、生産性が落ちたムスリムの作業をインド系やベトナム系の従業員が補うといった配慮が見られるのである。最近では外国人労働者も何人かいるが従業員の仲は良く、社内のいざこざは少ない。

イーター電機工業マレーシアでは多民族の働く職場が一般的

今後の活動に向けて

エンジニアの人材育成

 マレーシアでも人材不足が続いており、技術者の採用は難しい状況にある。マレーシアにはエレクトロニクス系の工場は数多くあるが、単なるアッセンブリ作業者が多く、電子・電気回路がわかるエンジニア人材の採用は狭き門になっている。また、マレーシアでも若年層の製造業離れが見られ、エレクトロニクスを学んでもIT業界への就職を希望する学生が増える傾向にあるようである。
 採用が難しければ、社内で人材育成する仕組みが必要である。そのためには会社のなかにきちんとした仕組み(制度)が必要だが、たとえば前述し
た代品評価チームが製品リペアのチームなどと兼務してやっていくことは若い技術者の育成にとって有効だという。

Buy-off (バイオフ)による不具合防止

 イーター電機では不良が出たから改善するのではなく、最初から工程内不良を出さない対策を行ってきた。そのためPADTRONで力を入れているのが、不具合を出さないためのバイオフという品質向上活動である。その進め方は、まず作業の開始前に作業手順と注意点を資料と共に作業者に説明し、その後、作業が正しく行われていることをしばらく観察するというものである。
 たとえば最初の10台が確実に作業できていればOKである。これをバイオフと呼んで、各ラインにおいて導入を図っている。仕組み構築およびフォーマット作成は本社が行い、それを現地のスーパーバイザークラスに説明し、そこからリーダークラスから末端の活動まで浸透させることを目指している。
 

本社とPADTRONの連携

 約2年半の改善活動を通じて、現在ではマレーシアと日本の連携を含め高い改善成果が生まれている。マレーシアで展開した改善が本社の活動にフィードバックされ、システム改善や計画立案時の優先度判定など、マレーシアで実施した改善を日本の工場でも展開することが増えてきた。本社でもマレーシアに学ぶという意識で新しい改善の導入をはかっている。PADTRONの改善は本社にも波及しているのである。

イーター電機工業

コンサルタントからの一言

 Weekly Schedule Format による正確な工数把握で、生産計画の精度が格段に向上されました。スーパーバイザーの皆さんも強い意欲を持って改善活動に取り組まれたと感じています。今後も更なる業務改革と、より魅力ある製品づくりを続けていかれることを期待しております。

イーター電機工業

担当コンサルタント