若手リーダーをどう育てるか

ものづくり現場の変化

私が企業で働いていた頃、職場には団塊の世代の上司も多く、決めた事を守らせる強いリーダーの存在がありました。そして、それが日本企業の強さの源泉でもあったと思います。
 しかし造れば売れる時代は去り、日本経済はバブル崩壊後の低迷期を迎えました。
 そこで一番に削られたのが各企業の教育費です。社員教育がおろそかになった結果、引き起こされたのがチームワークやマネジメント能力の弱体化、いわゆる現場力の低下です。
 その後も円高で頭打ちの内需に対し、ものづくり企業の海外展開が加速しました。途上国の追い上げと厳しさを増す国際競争、顧客からの品質やコストダウンの要求が高まるなか、現場では技能伝承や人材育成の重要性が改めて認識されるようになってきました。
 いま長い混迷の時代を経て、今度は戦後2番目という長い好景気が続いています。昨年(2017年)の大卒就職内定率は過去最高を記録しました。しかし個人の生活においては今一つ景気回復の実感が伝わってこないようにも感じます。
 少子高齢化社会を迎え、「働き方改革」が大きな課題となっています。職場では非正規社員や外国人労働者など、多様な働き方が許容されるようになりました。今後は性別や国籍、世代を超えた働き手が企業社会を構成するようになるでしょう。そうした状況を踏まえ、いま考えなければならない喫緊の課題が企業の未来を支える若手社員の活性化です。

社会人基礎力について

 こうした状況を受けて、経済産業省が数年前から提唱しているのが「社会人基礎力」という考え方です。環境変化に柔軟に対応し、主体性を持って仕事を進めるためのスキルとして紹介されています。その考え方は、①前に踏み出す力、②考え抜く力、③チームで働く力の3分類。さらに各々の力は具体的な特質で表されています。ただ、ここでその詳細に触れる余裕がなく、詳しくは経済産業省のホームページをご参照いただければと思います。

コンサルタントコラム

 「現場力とは自分たちの問題を自主的に解決できる能力」だと私は考えています。主体性と問題意識を持ちチームワークで仕事をする力の弱体化、社会人基礎力が強く求められる背景には現場力の低下があるのではないでしょうか。

コミュニケーションについて

 「ちかごろの若者は自発性がなく言われたことしかしない」これはいつの時代でも聞かれるような表現です。いにしえの昔から若者に対する上からの評価は厳しいものです。私自身もそうですが歳をとるほど、その傾向が強まるようです。
 ファーストインスピレーションといわれますが、第一印象は0.5秒程度で決まるといわれます。そしてその印象はなかなか消えない。相手に良い印象を与えるには相手の立場に立って自分を見つめることが大切です。
 ところが最近はメールで連絡することが多く、なかなか面と向かって対話する機会がありません。たとえば会話では「ありがとう」という言葉も、その口調によって様々なニュアンスが伝わります。本心から感謝しているのか、相手に対する皮肉が込められているのか。しかしメールの文章ではその感触を伝えることは難しい。だから微妙なニュアンスを表現するため絵文字などを使う方もよくおられます。
 これは先ほどの社会人基礎力のねらいでもあるのですが、若手社員の育成でもっとも重視したいことは、チームで成果を出す素質をつくることです。そのためには自主性と同時に、相手に配慮した職場ルールやコミュニケーション力をつける必要があります。
 失敗を恐れないチャレンジ精神は重要ですが、失敗した場合も他責ではなく自責で受け止める当事者意識を持たせることが大切です。そして、そのために小集団で改善活動に取り組むことは非常に有効な若手育成の手段といえます。

気づきと感性が重要

 現場の人は基本的に工場の外には出ません。だからお客様のことも知らないわけです。ところが工場の価値を決めるのは実はお客様です。与えられた生産計画に従って作業していても、自分たちの造る製品をより良くする発想を持つことでお客様の要望に対応できる。たとえば機械は停まらない方が、品質は高い方が良く、コストや納期などの市場要求を満たす現場改善が常に求められているわけです。会社の利益が出なければ自分たちの給料も上がらない事実、これをリアルに認識させることが問題意識を醸成します。
 リーダーは問題発見の感性が高くなければなりません。問題とは「あるべき姿と現状とのギャップ」とよく言われます。問題発見の感性を養うために「気づき活動」などに取り組まれる企業も多くなっています。要は身近な異常や変化にいちはやく気づく注意力を養うことです。

問題発見の進め方

 ここでは問題発見のヒントを得るための一手法を紹介したいと思います。これは作業分析の初歩でもありますが、身近な作業工程を分解して改善対象の発見に役立てるものです。
 たとえば黒板に「A」という文字を書くとします。その作業プロセスを考えると、①黒板に近づく⇒②マーカーを取る⇒③マーカーのキャップを取る⇒④文字を書く⇒⑤キャップを閉める⇒⑥マーカーを置く、という要素作業に分解できます。
 これを加工・運搬・検査などの項目に分け分析してみます。この中で利益につながる価値作業は、たった1秒の「文字を書く」作業にすぎません。つまり残りの4秒(全作業時間の80%)は減らせば減らすほど利益につながる付帯作業であり、多くのムダが含まれた改善領域であることが分ります。この部分を対象に改善を考えれば、たとえば「黒板を近くに移動する」「ワンタッチでキャップが取れるようにする」「マーカーに紐をつける」などの改善アイデアも生まれやすくなります。
 仕事をムダ削減の視点で見直すことが、職場全体の問題をチームワークで解決しようとする動きにつながります。それが現場力を強化する第一歩だと思います。

コンサルタントコラム

執筆者のプロフィール


コンサルタントコラム一覧へ

アーカイブ