全数目視検査の問題解決 (前編)

はじめに

あらゆる“ものづくり現場”において品質保証を目的とした目視検査が行われています。 目視工程は決して付加価値を生むわけではありません。最小限の工数にしたいものです。 しかしながら、不適合品の混入が人命に関わるものや後工程で大きな損失が生じるものは全数検査が必要になってきます。
一方、全数目視検査での見落とし(見逃し)不良は各社の悩みの種です。人間の感覚と集中力には限界がありますし、個人差も大きいものです。 長時間の目視検査は検査担当者にとって非常に過酷な作業です。 目視検査の負担を軽減し、見逃し不良を撲滅すると同時に生産効率を高める考え方と事例を紹介させて頂きます。

1.長時間の全数目視検査は最も過酷な作業のひとつ

全数目視検査の仕事量は、要求品質×商品特性×検査量(時間・数)となります。
この仕事量を正確にこなすためには長時間の「集中力」が必要とされます。しかしながら、集中力やモチベーションを維持することは非常に難しいことです。

◆一般的に人間の集中力は90分が限界と言われています。
集中力の時間 は年齢ややる内容の他個人差も大きく影響してきます。
国際会議の同時通訳では、実際の集中力の持続時間は15分が限界だと言われています。
そのため、通訳は3人1組になっていて、15分ごとにローテーションで回しています。
小~高校は45~50分を一時限としていて、大学では90分を一時限の長さとして設定しています。

◆目視検査は五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の中の視覚のみを使う作業です。
視覚の個人差は他の感覚機能より大きいうえに繊細です。
目視検査は他の4つの感覚をシャットアウトし、視覚の感度を高めることも必要となります。

◆単純な選別作業ではモチベーションを維持向上し辛いものです。
自分の好きな事や好奇心のもてることには簡単に抜群の集中力が発揮されます。
仕事として毎日行う長時間の目視検査で“やる気ホルモン”が生まれ辛いし、モチベーションの 維持は
難しいものです。

これらの負担を軽減し、作業者にとって非常に過酷な作業を如何に楽に・正確に行うかが本稿の 目的となります

2.全数目視検査の目的

◆抜き取り目視検査ではなく全数目視検査をする目的は、検査の作業効率より検査の精度(検出感度)を重視するためです。
検査の効率  <  検査の精度

従って、常に作業効率より検査精度の維持向上を優先すべきです。検査員は検査結果(不良率や流出率)を把握し各人が自分の精度を理解することが基本となります。職場は、組織全体および検査員別の検査精度(不良率や流出率)をリアルタイムに把握すべきです。

検査精度の低下要因
(1) 検査員の習熟度・能力バラツキ ・・・個人毎のスキル管理は基本
(2) 検査効率(スピードや量)の要求・・・効率を優先すると精度は低下
(3) 過度の長時間作業       ・・・人間の集中力は90分が限度
(4) 集中力を妨げる作業環境    ・・・聴覚、触覚、嗅覚の遮断が有効
(5) モチベーションの低下     ・・・やりがいや達成感をつくる
(6) 部門内の人間関係       ・・・精神的な不安定要素を排除する
(7) その他            ・・・個人毎の事情を考慮すべき

3.全数目視検査の効率アップと見逃し率低減

一般的な目視検査は「不良探し」が基本となっています。人間の視覚と集中力を使って不適合品を探す行動です。これでは視覚のバラツキや集中力の低下で不適合品の見逃しが発生します。
これは「中心視目視検査」と呼ばれ、抜き取り検査には適していますが全数検査には適しません。
これまでとは全く異なる手法を使ってこの問題を解決します。
人間の違和感を活用した『周辺視目視検査』を活用します。

2つの目視検査法の違い
コンサルタントコラム

中心視検査と周辺視検査 「質の違い」
コンサルタントコラム
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周辺視目視検査の効果
(1)検査速度が飛躍的にUP、(2)見逃しが激減、(3)疲れない

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以上、2種類の検査方法の違いをご説明しました。中心視目視検査は短時間での精度は高いが長時間では作業者の負担が大きく精度が低下します。 一方、周辺視目視検査はスピードが速くて作業者の負担が少ない特色を持っています。
全数検査では条件によって周辺視目視検査が有効ですが、ただ、この方法は作業者の熟練度による差が大きいのが欠点です。 そこをどう改善し検査精度を高めるにはどうするか。それは後編でお話したいと思います。

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