実践重視のKPI ~3つのチェックポイント~

製造業とKPI

製造業においてKPI( Key Performance Indicator:業績評価指標)という言葉を耳にするようになってから10年以上が経っています。工場内の日常会話の中でもこのKPIという言葉が登場する場面も珍しくなくなり、何らかの形で業務の巧拙を測る指標を設けて運用されているケースが殆どです。しかしながら充分に活用され、企業・工場の業績アップや体質強化につながるしくみになっているか?との問い掛けには残念ながらNoと言わざるを得ないケースが少なくありません。
そこで、今回は、より実践的な観点からポイントを絞って簡単なチェック方法を紹介します。

実践重視の考え方

KPIや指標管理全般について、「どうすれば上手く運用できますか?」といった質問をよく受けます。その際に私は、次の3つですと答えています。
①概念・考え方の理解に時間を割かない(やってみる事を優先)
②関係者が分り易いものにする(“ピン”とくるもの)
③一人でまず1つだけをしっかり見る(手を広げすぎない)
そもそも3文字略語はわかり辛い面があることは否めませんが、概念自体は昔からあり、言葉を変えて実践されてきた企業も多く存在します。そこで、難しく考え過ぎずにやってみる事、議論・試行を重ねながら完成度を上げる事、一度にあれもこれもやろうとせず、対象を絞り込んで実例を積み重ねることが肝要です。
教科書的な考え方は、知っておいて損は無いことは確かですが、『実践を重視した場合、知らなくても問題無いことのほうが多い』のです。
(図1参照) また実施した実例から「実はこれは…」と言うように後から理論を深く学んだほうが身に付き易く、応用展開も容易になります。

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すぐできる3つのチェックポイント!

前述のような考え方を踏まえて、簡単に実践レベルを確認できる3つのチェックポイントを紹介します。明日から、いや今からでもすぐ出来ることですので、是非実施してみてください。
(1)「あなたの部署・職場で一番重視している指標(評価するモノサシ)は何ですか?」との問いかけに即答できるか?
方針がきっちりと落とし込まれ、ベクトルが合っていれば、誰に聞いても同じ答えがすぐ返ってきます。
これは、考え方や理論を実践で修得していることを現しています。この質問1つで方針の浸透度合いや理解度合い、目標管理レベルを知ることが出来ます。特に、実務リーダークラス、管理・監督者クラスへ問いかけてみられる事をお勧めします。
即答できなかった場合は、今一度、方針・目標の理解を促す必要があります。

(2)「前置きや解説無く会話できているか?」
例えば、プロ野球のホームラン記録ですが、これは本数で評価され、シーズンで一番多くホームランを打った人がホームラン王です。球場の広さや対戦相手とのめぐり合わせを除いたとしても、打席数や打数に対して何本だったか?を見るほうがより公平さは増します。しかし本数という皆がわかりやすく“ピン”とくる値を用いることで、余計な説明は要らなくなります。 1時間あたりの処理数量が○.○○個/h、というよりも、今日1日で□□個つくった、と言ったほうがわかりやすいのは言うまでもありません。まず皆が分かること、この入口でつまずくと興味も沸かないし、なぜこの値なのか、どうやって上げていくか、などの次のステップへは行きません。そこで、「前置きや解説が無くとも関係者同士が会話できているか?」これを確認してください。
できていない場合は、対象となる業務に直接携わる人たちで討議して再定義したほうが良いでしょう。

(3)「最重視している指標の管理主担当者は誰か?」「その目標達成のための方策の実施主担当者は誰か?」
(このチェックは、前記(1)(2)の結果が両方とも比較的良好であった場合のみで結構です。)
これには、
①評価指標と監視項目が混同されずに明確になっているか?
②一人でいくつもの指標を見ていないか?
との2つの確認の意味があります。
例えば、図2のように、生産性向上と言った課の目標があり、その目標達成のための方策として、切替時間削減、設備小停止時間削減が掲げられていたとします。この場合、A課長は評価指標である「生産性」の目標管理(PDCA)を行い、切替時間と設備小停止時間を監視します。
B係長は切替時間の目標管理(PDCA)を行い、切替回数、1回当り切替時間を監視します。
即ち、
・評価指標とは、目標値を設定してPDCAのサイクルを確実にまわすもの
・監視項目とは、上位目標達成に向けて、その値を常に見ておくもの
であり、評価指標と監視項目が切り分けられている事、一人でいくつもの指標を見ない事、これらが効果的に運用するための大きなポイントです。

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全員参画のためのツール

改革・改善の大小レベルを問わず、企業・工場を強くするための活動は“全員参画”が基本です。そのための有効なツールの1つがKPIであると言えます。例えば日次・週次・月次で指標値を集計して関係者に配信するだけでなく、グラフ化・掲示の工夫を施し、いつでも誰でも見えるようにしておくこと、即ち、当事者意識を高め、また改善に繋がる様々な気付きを生み出すいろんな仕掛けが不可欠である事も忘れないで戴きたい。

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